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163 精霊花

 精霊花


 魔法の森にはこの森でしか咲くことのない花である『精霊花』と呼ばれる花がいたるところに咲き乱れている。その花は魔法使いたちが古き森から新しき森に持ち込んだものだった。

 精霊花は魔法学校の庭や森の小道の脇、湖の畔り、メテオラの住んでいる長老の木のある東の丘の上など、森のほとんどの場所でその姿を見ることができた。

 精霊花はもともとは真っ白な花なのだけど、その土地や気候によって様々な影響を受けてその色を変化させるという特徴があった。しかもその変化はすべての花が同じ色に変化をするわけではなくて『個別に色を変える』のだ。しかもほとんど同じ場所に咲いている花同士でも色が違うことがあった。その理由はどうやら精霊花は土地や気候だけでなく、森に住む魔法使いの魔法力の影響を受けるからだということが魔法使いの研究で判明している。森に訪れる四つの季節の中でも特にその個体差が激しいのが春の季節で、数え切れないくらいたくさんの精霊花が色とりどりに咲き乱れる春の光景はまるで春の訪れを喜んで森がお化粧をしているみたいでとても華やかで美しかった。

 春の千年祭に精霊花のお花見がおこなわれるのはこの美しさが理由だと思われる。

 そうやって周囲のいろんな影響を受けて色を変える精霊花だけど特に季節によってその変化が著しいのだ。春の彩りはその一例にすぎない。

 春の訪れを受け色づいた精霊花は夏の季節にもう一度その色を変化させる。そのとき色を変える花もあるけれど色をかけない花もある。それ以外にも花弁があまり散らなくなる、春よりもやや濃い色の花を咲かせるようになるなどの変化はあるのだけど、基本的には春と夏の精霊花の生態はとてもよく似通っていた。

 目に見えて変化が大きくなるのは次の秋の季節からだ。

 秋を迎えると精霊花はその色を黄金色に変化させる個体が目立つようになる。すべての花がそうなるわけではないのだけれど半分以上は黄金色に輝く花を咲かせるようになるのだ。そして冬の季節にすべての精霊花は本来の色である真っ白な色の花を咲かせるようになるのだ。

 真っ白になった精霊花は春の訪れに伴って再び色づくようになる。

 魔法の森に咲く精霊花の色の変化は気候や季節の変化を知るためのもっとも大きな手掛かりの一つとなっている。

 精霊花は魔法の森にしか咲かない花で、魔法使いと縁の深い花でもあった。

 メテオラも精霊花は大好きだ。

 精霊花は明るい時間帯にはその彩りで目を楽しませてくれて、夜には月や星の光を受けて淡い光を放ち、美しさだけでなく今、自分のいる場所を知るための目印にもなってくれた。その光景は空から見るとまるで地上にもう一つの星空が出現したようにも見えた。

 星空が大好きなメテオラはそんな地上に隠された星空も大好きだった。

 魔法の森に咲く精霊花とは、つまりそんな花なのだ。

 星組の教室の窓から見えた中庭にはたくさんの精霊花が咲いていた。それは中庭の中を歩いてきたときにも思ったことだけど、魔法学校の六階の窓からその全景を見て、本当に美しい光景だと改めてメテオラは思った。

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