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「……その話がメテオラくんの嘘や思い違いならいいんですけど、……そうではないことは僕が一番よくわかっています。メテオラくんは本当のことを話しています。……モリー先生と同じ蛇の彫刻がなされた魔法の杖。それから長い黒髪に……、背が高くて、体格もいい……」
マシューはそんな言葉を小さな声でつぶやいている。
メテオラはずっと黙ってマシューの次の言葉を待っていた。
「……なるほど」とマシューは言う。
「メテオラくん。あなたが星組の教室で見たというその魔法使いの姿は、決して見間違いなんかじゃありません。それにメテオラくんが感じている森に対する危機感も本物です。その魔法使いは間違いなく本物の幽霊、あるいは今頃になってこの新しき魔法の森に迷い出た過去の亡霊です」とマシューは断言した。
「どうしてそう言い切れるんですか?」とメテオラは聞く。
「メテオラくんの話と僕とワルプルギスさんの集めた幽霊の特徴がほぼ完璧に一致するからです。メテオラくん。メテオラくんは今日、マリンさんが頭にかぶっていたおかしな帽子のような魔法具を見ましたか?」
魔法学校の正門前であったときにマリンが頭にかぶっていた、あのゴツゴツした変な形をしたレンズのついた帽子のことだ。マシュー自身はあの場にいなかったけど、きっとシャルロットから報告ついでにその話を聞いたのだろう、とメテオラは推測した。
「はい。見ました」とメテオラは答える。
「あれはですね、マリンさん自身はその造形が好きで大切にしているらしいのですけど、魔法具としても一級品の品物で、あの帽子についてるレンズを通して世界を見るとですね、夜でもまるで昼みたいに世界が見える、というすごい魔法具なんですよ」とマシューは言う。
「夜でも昼のように、……ですか?」
「そうです。あれはそういう魔法の力を持った魔法具なんです。僕も一度、貸してもらって試したことがあるんですけど、まあ多少は世界が緑色っぽくなってしまうんですけど、それでもきちんと夜でも昼のように相手の顔や姿を確認することができました」
メテオラはそこまで魔法具の知識があるわけではないので、写真機のときもそうだけど、魔法具ってそんなことまで可能なのか、……すごいな、というのがその話を聞いて思ったメテオラの正直な感想だった。




