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 それから今度はシャルロットと交代でニコラスがやってきた。

「でも、本物の幽霊なんて本当にいるのかな? メテオラくんはどう思う?」とニコラスは言う。

「ニコラスくんは本物の幽霊のほうも、誰かのいたずらだと思っているのですか?」メテオラが聞く。

 ニコラスは遠慮がちにこくりとうなずく。

「あのマシューくんの出した結論だし、デボラくんやアビーくんの話、それにもちろんメテオラくんの話を疑っているわけではないんだけどさ……、本物の幽霊がいるという話をどうしても僕は信じることができないんだよね」とニコラスは言った。

 本物の幽霊なんているわけないというニコラスの意見はとてもまっとうな意見だった。メテオラも自分で顔の見えない背の高い魔法使いさんを見かけていなければニコラスと同じように思ったかもしれない。

 メテオラはニコラスから不意に本物の幽霊の話を振られて、あの星組の教室で見かけた顔の見えない背の高い魔法使いさんのことを久しぶりに頭の中に思い浮かべた。

「僕は本物の幽霊はいると思います」

「え!? 本当!?」とニコラスが目を丸くして驚く。

 どうやらニコラスはなんだかんだ言っても、メテオラが自分の意見に賛成してくれると思っていたようだ。

 メテオラはニコラスに星組の教室で見かけた顔の見えない背の高い黒い魔法使いさんの話をもう一度、詳しく話した。

「それに一番気になっていることは、……僕、魔法使いさんの声を聞いているんです」

「……それってどんな声なの?」とニコラスが言う。

「なにかこう、もやがかかったようなはっきりしないくぐもった感じがする不思議な声で……、でも、その声は間違いなく男性の声だったと思います。はじめは魔法使いさん自体を見間違いだと思っていたから、その声も気のせいかと思っていたんですけど、やっぱり変ですよね? だって僕、その幽霊さんが僕に語りかけてきた言葉をきちんと覚えているんですから。気のせいだったら声が聞こえたというイメージはあっても、その内容は覚えていないと思うんです」

「……その魔法使いさんはメテオラくんになんて話しかけてきたの? 内容、覚えているだよね?」とニコラスが聞く。

「はい。覚えています。その魔法使いさんは僕に『君がメテオラくんだね?』って言ったんです。あとはお話しした通り、それから非常ベルが鳴って、僕がもう一度魔法使いさんのほうをみたら、魔法使いさんはもうそこにはいなくなっていたんです」

 メテオラの言葉を聞いてニコラスは黙り込んでしまった。

 自分で話しておいてなんだけど、メテオラは自分でもなんだか急に周囲の暗闇がさっきまでよりも深くなったような気がしてきた。

「……それって、なんか本物っぽくない?」と怯えた感じでニコラスが口を開く。

「はい。本物っぽいです。というか、おそらく本物です」とメテオラは言う。

「本物ってことは、その魔法使いさんは『本物の幽霊』ってことだよね?」とニコラスは言う。

「はい。そうなりますね」とメテオラは答える。

「そんなまさか……。幽霊なんて、この世界にいるわけないよ」と震える声でニコラスは言った。

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