表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

106/184

106

 いつもならここでアビーといつも一緒にいるデボラがなにかおしゃべりをしたり、メテオラやニコラスが、モリー先生の話題を出して、モリー先生はどこに行ったの? とかあるいはアビーは飛行術がとても上手だけど、なにかコツとかあるの? とか、あるいはどうしてアビーがモリー先生の小屋にいるの? とかそんな会話をメテオラたちはしているはずなのだけど、なぜかこのときはメテオラもニコラスも、アビーも黙ったままだった。

 メテオラたちが無言でいる間、ざーっという雨の音だけが部屋の中に聞こえていた。

 やがて、ニコラスはうとうとし始めて、そのまま窓際のところで眠ってしまった。

 眠ってしまったニコラスに、アビーは毛布を用意して、それをそっとニコラスの体にかけてくれた。

 モリー先生の小屋の中で起きているのはメテオラとアビーの二人だけになった。

 突然の大雨となった外の天気は、それほど長い時間もかからずに一旦降り止むか、もしくは止まないとしても雨の勢いはすぐに弱くなるだろう。

 今の雨はフライングのようなもので、本当の本降りになるのは、もう少し時間が経ってからだ。そのときを見計らって、メテオラたちはそれぞれの家に帰ればいいだけだ。

 だからメテオラはここでじっとして雨が止むのを待っていればいいだけのはずだった……。

 でも、本当にそれでいいのだろうか? という疑問がメテオラの頭の中に浮かんでくる。

 ずっとアビーが黙っているのは、なにか僕の言葉を待っているからじゃないのだろうか? とそんなことを根拠もなくメテオラは思ってしまうのだ。

 この時間は僕とアビーのために神様が用意してくれた時間ではないのだろうか? そんなことをメテオラは頭の中で考えていた。

 それは時間が経てば、機会を失ってしまう今しかない時間だった。時間が経てば経つほど、消えていってしまう言葉だった。だから今しかない。今しかないのだけど……、なにを話せばいいのかわからない。

 ここで僕が取るべき行動……。言うべき言葉……。それは、いったいなんだろう? 

 そんなことをメテオラが考えていると、アビーが先に言葉を紡いだ。

「……僕がモリー先生の家にいるのは、僕が銀の民の混血児だからなんだ」

 アビーの言葉を聞いて、メテオラはアビーのほうに顔を向けた。

 そこにはアビーの水色の瞳があって、そのアビーの頭にはモリー先生と同じ銀色の髪の毛があって、アビーはモリー先生と同じような目をして、自分の姿を見ているメテオラの顔をじっと静かに見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ