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24/39

その涙がたったひとつの真実


ねぇ…、覚えてる…?







あの日の約束…。








あの日も雪だったね。







でもその約束は決して果たされない。






それは叶わぬ夢…。







奇跡がおきないかぎり…。









*****************









やっぱり私には付けられなかった。あの十字架のピアスは…。











「なぜあのピアスを天音に返した?」


男は怪訝な顔でかずさを見た。


「…だってあれは大事な印。」

「…。」

「大切な印でしょ?」


かずさは同意を求めるように、もう一度そう言って、少しだけ微笑んだ。



************



「あーつまんない!!」


華子が大声を上げて床に寝転んだ。


「突然、天師教様と会うのが延期になったし!」


京司はいなくなった。


「天音もどっか行っちゃったし!」


天音もいなくなった。


「…だって天師教はもういないんだから…。」


星羅がボソッとつぶやいた。

星羅には分かっていた。

彼にこの城は似合わない。自由に外を駆け回る彼の姿を知っていたから。


「ん?」


華子が寝転がったまま、星羅を見上げた。




************



「よかったわね。死ななくて。」


かずさは、山奥の彼の隠れ家まで、足を運んでいた。


「こんな所まで追いかけくんのか?お前、ひまだな。」


月斗がそう言うのも無理はない。城の中ならまだしも、こんな所までわざわざ自分を追って来るなんて、やっぱりそんなかずさの意図が気になる。

そう考えていた月斗は、かずさをいつものように睨んだが、追い返すような言葉を吐く事はなかった。

少しずつ、月斗の中の何かも、変化しつつあるようだ。


「天師教に助けられたんでしょ?」


かずさはまるで見ていたかのように、そう彼に尋ねた。

やっぱりいつだって、彼女には何でもお見通しなのだ。


「あ?なんで俺がアイツに助けられなきゃ、なんねーんだよ。」


それでもまだ、月斗は憎まれ口をたたく。

彼は天使教に助けられたなんて、そんな事実は認めたくないのだ。


「フッ。」


かずさが、口元にうっすら笑みを浮かべた。

そんな風に強がっていても無駄。と言わんばかりに。







――― 月斗が死刑になる前の夜


カツカツカツ

カツ

その足音が、月斗の牢屋の前で立ち止まった。


「オイ。起きろ。」

「…。」


月斗は背を向け、寝ころんだまま。その声に反応はみせず、微動だにしない。

本当に眠ってしまっているのか。牢屋の前に立つ彼には定かではない。


「…お前を死なせるわけにはいかない。」

「…。」


しかし、彼の声が聞こえているのか、いないのか、月斗はうんともすんとも言わない。


「いいか。お前はあのバルコニーで打ち首にされる。バルコニーの左手に森がある。そこに大きな松の木があるから、自殺で落ちたふりをして、その木に飛び乗れ。」

「…。」

「俺もこの城を抜け出す時、その木を使ってた…。」


月斗は未だ動かないまま。


「いいか。死ぬなよ。」


そして、彼の足音がまた遠退いて行った。






「素直に、彼に助けてもらったって認めればいいのに。」


月斗もわかっているはずだ。

彼のいる牢屋までその事を伝えに来たのが、京司だという事は…。


「俺はどこの誰かわからねー奴を、利用しただけだよ。」


しかし、それでも月斗は認めようとはしない。

それは彼がまだ、天師教の事を認められていない証。


「まだ死ぬわけにはいかなかった?」


全てを見透かしている、かずさが彼に問う。


「俺はまだ何もしてねーからな。」


そう言って、月斗は天を仰いだ。


「あの城をぶっつぶすんでしょ?」


するとかずさは、不敵な笑みをまた浮かべた。


「お前…過去もみんのか?」

「…さあ。」




************





「どこまで行くんだ?」


京司が天音に聞いた。

2人は、もう2日も馬車に揺られていた。

京司は行きたい所があると言う天音に、黙ってついて来ていた。


「…ナイショ。」


天音はただ一言そう答えるだけで、それ以上は何も話そうとはせず、馬車の外の流れる景色を眺めるだけ。

京司もまた、それ以上は何も聞こうとはしなかった。




************



「反乱軍は、着実に城下町へと向かっています。」

「なぜだ!!」


イライラが日に日に増していく老中が、その報告に声を荒げた。


「…彼らは巧みな戦略で、我々を欺いております…。」


兵士の一人が恐る恐る答えた。

なぜなら、その言葉が火に油を注ぐ事は明らか。


「一体どうなっているんだ!あのぼっちゃんは家出するわ!この国は!」


反乱だけではなく、京司が居なくなった事によって、老中の怒りは頂点に達していた。

今やこの城に、彼のその怒りを収める事ができる者は、誰もいない。


「お、落ち着いて下さい。老中様。」


士官が仕方なく、老中をなだめた。

やはりこの役目は彼しかいない。


「預言者殿。一体我々はどうすれば…。」


この張り詰めた空気に耐えかねた士官が、その様子を黙って見ていたかずさに、助け舟を求めた。


「…反乱軍はこの町には入れません。天師教がいる限り。」


老中とは対照的に、かずさが落ち着いた声で答えた。


「しかし天師教様は…。」

「代わりがいればそれでいい。」


無表情でかずさがそう言った。


「…確かに。」


冷静さを少し取り戻した老中も、その意見に同意を示した。

例え代わりでもいい。

天使教がここにいると民衆に思わせておけば、それでいいのだ。


「しかし…。さっさと石を見つければよいのでしょう?預言者殿。石は!」


しかし、老中のご機嫌取りにうんざりな士官は、かずさに簡単に同意を示そうとしない。

なぜなら、石さえあれば全て丸く収まる。

この世も安定し、天使教の問題に頭を悩ませる事もない。

そして何より、老中をなだめる事もしなくていいのだ。


「天音を連れ戻せばいいのだろう?」


その士官の言葉に、老中の鋭い視線がかずさへと向けられた。


「その必要はありません。」


しかし、かずさは未だ冷静に口を開くだけ。


「何?」





「…天音はこの町に戻って来ます。必ず。」






************



「着いた!!」


天音が叫びながら、走り出した。


「ここ…。」


馬車を降りて、しばらく2人は黙って歩いていた。

一体どのくらい歩いたのだろう…。

足は棒になり、思うように動かなくなってきたその時だった。

天音がたどり着いたその先にあったのは…


「ここは私の村があった場所だよ…。」


天音が遠くの丘を見つめた。


「…。」

「今は何もないけど、昔はあったんだよ…。私の家はあの丘の向こう!」


そう言って天音は笑ってみせた。


「じいちゃんの畑で、たくさん野菜育ててたんだよ!あっちには、牛飼いのヤンおばさんが住んでて、あっちは村長さんの家があった!」

「天音…。」

「なのに、どうして…。」


…今はもう何もない。


ヒュー

風がただ虚しく吹いているだけ。


「…。」

「もしかしたら、全部夢だったのかも…って思った。」


天音は下を向きながら、震える唇を動かした。


「うん。」


京司は天音の言葉に、ただ頷いた。


「今日ここに来たら村は元通りで、じいちゃんがおかえりって言ってくれって…。」

「うん。」

「どうして、みんないなくなっちゃったの…。」

「それから?」

「私がこの村を出たのがいけなかったの?私は妃になりたかったわけじゃない!!ただおじいちゃんと、村のみんなに喜んでもらえる方法だと思ったの!!」

「ああ。」

「全部夢だと思いたかった…。でも…どっちが夢で…何が現実か分からなくなって…。」

「…。」


京司は黙って、前に立つ天音の背中を見つめた。


「教えてよ!じいちゃん!!」


ヒュー

しかし、誰も何も答えない。

風の声だけが虚しく聞こえるだけ。


「もう帰る場所もない…。夢もなくなった…。」

「…天音の夢は?」


京司が優しく尋ねた。


「…この村とじいちゃんのためにできる事をする。恩返しをする事。」


ヒュー


風が土埃を巻き上げた。


「でももう、生きる意味もなくなった…。」


天音が肩を落として、つぶやいた。


「…天音。帰る場所がなくなっても、生きてる奴はいるよ。」


京司がそっと天音の肩を抱いた。


「食べる物がなくなっても、たとえ家族がいなくなって1人になっても、生きてる奴はたくさんいる。」

「何のために…?」




―――なんのために人は生きるの?





「思いは消えない。」




「え…。」




天音がゆっくりと顔を上げて、後ろを振り返って彼を見た。

そんな彼女の目には、今にもこぼれ落ちそうな涙が溜まっている。


「全部なくなっても、思いは消えたりしない。思いが力になる。」


ポタ


天音の目から溢れた涙が、地面にたくさんのシミを作っていく


「それに、お前は俺にさんざん言ってきただろ。1人じゃないって。」

「うわーん!!」


天音は我慢出来ず大声を上げ、京司の胸に飛び込んだ。

大声を上げて泣いたのは、あの時以来。



  

――― そう、あの時も京司がそこに居た…。





************



「ん?」

「どうした?りん?」


りんが、何かに反応したかのように、後ろを振り返った。

それは、シド達反乱軍が馬で移動中の事。


「今何か聞こえた気がしたんや。」


それは城下町への道のりの途中。

りんの耳には確かに何かが聞こえていた。


「鳥の声じゃないのか?」


しかし、それはシド達には聞こえてはなかったらしく、シドが辺りを見回しながらそう言った。

この辺りは今の所町や建物はなく、見通しがいい。

もちろん敵の姿も見当たらない。


「…そーかもな。」


りんは少し腑に落ちなかったが、気にしない事にし、また馬の手綱を握った。


パカパカ


今日は久しぶりに暖かく、穏やかな日だった。

国の軍にも見つからず、何の障害もなくここまでやって来た。

そしてしばらく馬を走らせたその時。


「ん?」


りんがまた何かに反応し、小さく声を漏らした。


「また何か聞こえたか?」


シドが、りんからかうように笑いながら、そんな風に言ってみせた。


「シド!悪い!わいちょっと寄り道してくるわ!」


ヒヒーン

りんは、突然そう言って、手綱を強く引いて、馬の方向を変えた。


「な!何言ってんだよ!」


りんの突拍子のない言動と行動に、さすがのシドも慌てふためいた声を出した。

また、いつ国の軍が攻めてくるかもわからないのに、単独行動とるなんて、ありえない!と…。


「わい、神様に会いに行かんと!」


しかし、そんなシドの思惑とは裏腹に、りんはいつもの笑顔を浮かべ、1人だけ違う方向に馬を走らせた。


「りん!?」


シドは唖然とその様子を見つめる。

そして、りんは振り向く事なく、その背中はどんどん小さくなっていった。


「たく。何言ってんだよ…。ここに神なんていないよ…。」


シドはそう言って、りんの背中を見送った。



************



「これでいいんですか?」


かずさが静かに口を開いた。


「さあ?それはあなたがよく知ってるんでしょ。預言者さん。」


皇后はかずさの方には目もくれずに、窓の外を眺めていた。


「…私の予言はあなたの前では何の意味もない…。」

「え…?」


しかし、その言葉に皇后がやっと、かずさの方へと振り返った。


「あなたの思いには勝てません。」




************



「ふー。」

「めずしいね?緊張?」


星羅は大きく息を吐いた。そんな星羅の隣で、華子が笑った。


「どういう意味?」


星羅は、いつものように真顔で、華子を見つめた。

緊張は隠せないのは事実だが、やはり星羅は星羅らしく背筋をピンと張った。


「にしても、天師教様が体調不良で会うのができなくなったからって、今度はなんで皇后様なんだろう?」


そう、天師教とは会う事はできなくなった。

しかし、妃を選ぶ事を取りやめにする事は今更できない。

そのため、天師教の代わりに、皇后が妃候補に会って選ぶ事になった。

そして、それはまた星羅からやり直しとなった。


「天師教の母親だから。」


星羅が噛みしめるように、そうつぶやいた。



************



その日は、とても暖かかった。

それから京司と天音は、あの町を目指した。

天音はあれから一言もしゃべらなかった。


「見えた!あれだろ?」


沈黙を破ったのは、やはり京司だった。


「…。」


しかし、目が真っ赤に腫れた天音は、未だ堅く口を閉じたまま。

泣き疲れた彼女は、声を出す事も億劫になっていた。




************



「失礼します。」


その扉を開け、星羅が部屋へと足を踏み入れた。

やはりここも、だだっ広い部屋。そこには会議室のような円形に並んだ机と椅子があるだけ。


「こちらまで来て、座ってちょうだい。」


奥の方に居る、きらびやかな衣装をまとった皇后が、こちらへ来るように促した。


カツカツ

その足音と共に、星羅の鼓動も早くなる。

カツ

そして彼女の前で、足を止めた。


「星羅です。」


そう言って星羅は、ゆっくり頭を下げた。


「え…。」


皇后がその名を聞いたとたん、目を大きく見開いた。


「覚えていますか?」


そう言って星羅は、真っ直ぐ皇后を見つめた。

幸い、もう先程のような緊張はない。


「星羅…ちゃん…?」


皇后は驚きで表情は固まったまま。

しかし、彼女の口は自然とその名を呼んだ。

昔と同じ声で、同じ呼び名で。


「そうです。」


星羅は、その瞳を真っすぐに皇后へと向け、落ち着いた声で答えた。


「あなた…生きて…。」


皇后の表情は、まるで泣き出しそうな表情へと、変化した。

なぜなら、彼女は全て知っていた。

あの町があの後どうなったのかも…。


「はい。」

「よ、よかった。」


皇后は潤ませた目で、星羅を見つめた。

今、目の前に立つ星羅は、どことなくあの頃の少女の面影はある。

綺麗な長い髪と、その澄んだ声。


「私は彼と、京司と全部話しました。だからもう何も話すことはありません。」

「…そう。」


皇后は、落ち着きを取り戻すかのように、ふぅと息を吐いた。


「あなたが妃を決めるんですか?どうして?もう、京司はいないのに…。」

「…。」


その言葉を何の躊躇もなく、星羅は口にした。

彼は天使教はもういない…。

星羅はそれを知っていたからこそ、妃を選ぶ事に何の意味があるのかと皇后に問う。

しかし、その言葉を聞いた皇后は、取り乱すことも問いただすこともせず、やはり落ち着いて口を開いた。


「私の手で、この国を終わらせることはできないわ。」


そして、皇后がいつもの凛とした態度で、冷静にそう答えた。


…この国を簡単に終わらせるわけにはいかない。あの人が守ってきたこの国を…。


「…もし、京司が帰ってこなかったら?」

「…それでも、私はあきらめきれない。」


ガタ

星羅は急に立ち上がった。

もう話す事はないと言わんばかりに。


「…さようなら…おばさん。」


そう言って、星羅は自ら皇后に背を向けた。


「星羅ちゃん。歌、歌ってる?」


皇后が星羅の背中に問いかけた。


「…華子って子に余計な事、言わない方がいいですよ。」



パタン

星羅はそれだけ言い残して、扉を閉めた。




************




「とりあえず宿探さなきゃな。」


京司と天音は、村があったその場所から一番近いその町へと足を踏み入れた。

もう体は疲れきっているはずの2人は、とりあえず今日休める場所を確保しなければならなかった。


「…。」


すると突然、天音が足を止めた。


「天音?どうした?」


ダー

そして天音は、京司の言葉を振り切り、突然走り出した。

そんな体力など、残ってなどいないはずなのに。


「オイ!天音!」


京司も天音の後を、慌てて追いかけた。

一体彼女は何を見つけたというのか?それは分からなかったが、彼女を放っておけるわけはない。

京司もまた、体にムチを打って足を動かした。


「はぁはぁ、、」


息を切らした天音が、その建物の前で足を止めた。


「教会?」


京司が天音の目の前に立つその教会を見上げた。

そう、この町には、立派な教会が立っていた。

ここに一体何があるというのだろう…?

京司には全く見当もつかない。


ギー

天音はその古びた扉を、なんの躊躇もなく開けた。

カツカツ

そして迷わず、教会の中へと進んでいく。


「天音…?」


京司は、その様子をただ見守る事しかできない。

一体何が、彼女を動かしているのか…。

その教会の中は、そんなには大きくない。

天音は身廊を一歩一歩、祭壇に向かい進んで行く。


ガク

すると、天音が膝から崩れ、床に座り込んだ。

そして、自然と涙が彼女の頬をつたう。


「おかあ…さ…ん…。」


天音の目の前には、十字架そして…。



「ちがうで。」

「え…。」



まだ扉の前に立つ京司が、その声の方へと振り返った。



「これはキリストの母マリア様や。」



泣き崩れた天音を、マリア像が優しく見下ろしていた。





************





「…あなたは」

「うん!華子でーす。」


華子が皇后と対面する順番がやってきた。

皇后は天使教とは違い、1日に出来るだけ多くの妃と、こうやって対面する事になっていた。

それは一刻も早く妃を決めたいという、国の意向から。

皇后は、いつも通り、物怖じしない華子を目の前にして、訝しげ《いぶかしげ》な表情を浮かべた。


「あなたは、どうして妃に?」


皇后が、華子に妃になるその理由について、他の候補と同様の質問を投げかけた。


「何かピーン!きたんだよね。」

「え?」


皇后は、何とも華子らしい回答に、眉をしかめた。


「それに、三食昼寝付きだって聞いたし!!」

「…。」


皇后は、表情を強張らせたまま、返す言葉も見つからず、ただ黙って華子を見た。


「あ、そうだ!1つ聞きたい事があるんです。」


華子は目の前に毅然きぜんと座る皇后に、やっぱりいつものひょうひょうとした態度で、思い出したように尋ねた。

それは、華子がどうしても聞いておきたい事。


「なんです?」

「天師教様の顔!かっこいい??」



やっぱりここでも華子は、空気を凍らせる一言を言い放った。





************




『ねえ辰!お母さんは!!』


幼い天音は、辰に手を引かれていた。


『…お母さんは?』


そして、その潤んだ瞳で、辰を見つめた。


『辰、どこに行くの?みんなに言いに行こうよ!お母さんは、魔女なんかじゃないって!!』


天音の真っすぐな瞳からは、今にも涙がこぼれ落ちそうだ。


グイ

辰はその小さな手を握る、自分手に力を入れた。


『痛いよ!』


天音が思わず叫んだ。


『天音、悪い。もう戻れないんだ。』

『なんで!!』


天音は唇を噛みしめ、必死に泣くのをこらえている。

まだ泣いてはいけない…。何かが彼女をそうさせていた。


『お前は、しばらくこの町で暮らすんだ。あの町には、もう戻っちゃいけない!!』


そんな辰も天音と同じように、唇を噛みしめる事しかできない。


『や、やだ!』

『お母さんは死んだんだ。』


辰が仕方なく、その一言を低い声で絞り出した。

もちろん辰もそんな言葉を口にはしたくはない。そんな現実を認めたくなどない。

しかし、今ここで取り繕ってウソを吐いた所で、何も変わらない。


『や、やだよー!』  


もう天音の目からは、涙がこぼれ落ちていた。

受け入れなければいけない現実が、彼女の目の前に突きつけられているのは、彼女が一番よくわかっている。


『この教会に頼んである。いいか、ここで暮らすんだ。お母さんの事は、一切話してはだめだ。』

『た、たつは?たつはどこに行くの?』


その小さな瞳が揺らいだ。そして、彼を真っ直ぐ見つめている。


『俺には、やらなきゃいけない事がある。』

『やだよー!たつー!』


とうとう天音は、大声で泣きだした。

彼女が駄々をこねるのも無理もない。天音はまだ5歳。

この過酷な現実を受け入れ、1人で生きていくにはまだ幼過ぎる。


『必ず迎えに来る。だから、それまで…。』

『うわーん!』




―――天音…祈りなさい…寂しい時、悲しい時。祈りはきっとあなたを救ってくれる。




「zzzz」



その日、天音は何日かぶりに、深い眠りについた。

マリア像に見守られながら…。




************




「びっくりしたわー!」


りんがどこか楽しそうに、大きな声を上げた。


「…それはこっちのセリフ。」


りんと京司は、教会の外に座り込んで、話し始めた。

りんはあの時、以前来たこの中月町が近くにある事に気がつき、居ても立っても居られず、思い立って馬を走らせた。

すると、たまたま天音達を見つけたのだ。

やはり彼には、何かを察知する能力がどこかに隠されているのだろうか?


「なんや、かけおちかいなー?」


りんがニヤニヤしながら、京司の顔を覗き込んだ。


「…。」


しかし、京司は口を結んだまま。顔をそらした。

…余計な散策ばかりしやがって。


「ま、なんでもええけどな!」


りんはまだニヤニヤしながら、顔を元の場所に戻した。


「…お前は?こんな所で何してんだ?」


すると今度は京司が話をそらすように、りんに尋ねた。

そういえば彼がなぜ、こんな城下町から離れたこの町にいるのか。

京司はそれを知らない。


「わいか?わいは今、反乱軍の手伝いしてんのや。」

「え…。」


京司は、思いがけないりんの言葉に、絶句した。


「やっぱわいは肉体派やからなー!」


りんはそんな京司に構う事なく、あっけらかんとそう言ってみせた。


「わい。天師教の事だーーーーーい嫌いやってん!」


突然りんが空に向かって大声で叫んだ。


「…声でかい…。」


時刻はもうすっかり夜。

常識のある京司は、りんの大声が、近所迷惑にならないか気が気ではなかった。


「わいの村もつぶされた…。それに反発した親も殺された…。」

「…。」


京司は黙って、りんの言葉に耳をかたむけた。


「神様は何してもいいんか?ってな…。」

「…。」

「でも、あん時変わったんや。お前がリーダーに土下座した時。」

「え…。」


いつの間にかりんは、京司の方を真っ直ぐ見ていた。


「京司、ええんか?」


りんが、見たことないくらい真剣な顔で、こちらを見ている。


「何が?」

「人間っちゅうのは、わがままな生き物や!そう思わんか?」


そう言ってりんはまた、天を仰いだ。


「…そうかもな。」


京司が見上げた空には、見た事のない数の星が瞬いていた。





************






その日見た夢はとても悲しかった…。






    

でも内容は覚えてない…。






「おとうさん………。」







************




朝日がまぶしい。光が目に染みる…。

それは何日ぶりに見た朝日だろうか…。


「泊めていただいて、ありがとうございます。シスター。」


相当疲れていたのか、天音はこの教会で眠ってしまった。

シスターはそんな天音を見かねて、快くこの教会に3人を泊めてくれた。


「あなた達に、神のご加護がありますように。」


そう言ってシスターは、優しく彼らを見送ってくれた。

まるでマリア様のように微笑みながら…。



「さってと!どうせ行くあてないんやろ?だったら、わいとけーへん?」


教会を出た2人に、りんが提案してきた。


「え…?」


しかし、京司の表情は一変した。

彼に着いて行くという事は…。


「ちょっと付き合って―な。天音!」


そんな京司にはお構いなしのりんは、天音の顔を覗き込んで、ニッと笑った。


「…うん。」


天音達には、もちろん行くあてなどない。

とりあえず天音は、深く考えずに静かに頷いてみせた。


「ホナ、行くでー!!」


そして、りんが元気よく、先頭をきって歩き出した。中月町の外に向けて。




************




「いやー。やっぱわいは、動いてる方が性に合ってるんやなー!」


りんは馬に乗っているにも関わらず、別の馬に乗っている2人に、大声で話かけてくる。


「だから、わかったって。」


京司が呆れながらも、とりあえずりんの話しに合わせていた。

しかし、何だかんだで、ずっとりんの話に付き合わされている京司は、とうとう相槌を打つのも、面倒になってきていた。

一方の天音は、どこかまだ虚ろな表情で、馬の手綱を握る京司の背中にしがみついているだけ。

りんの話など、全く耳に入ってはいなかった。


「いやー、この2人が揃ったなんて知ったら、シド喜ぶわ!」

「シド?」


京司は、その聞き覚えのない名前に、思わず眉をひそめた。


「お前が土下座したリーダーや。」

「ああ…。」


京司はどこか複雑な表情で、頷いてみせた。




************



「帰ったでー!!」


荒野にいくつかのテントがはられたその場所は、簡易的に作られた反乱軍の拠点だ。

城下町へと向かう途中の道のりに、彼らの拠点がある事は、りんには容易に想像でき、すぐに合流できた。

彼ら元へと帰ってきたりんは、元気よく大声で挨拶をして回る。


「まったく、勝手に!どこ行ってたんだ。りん。」


呆れ顔で、真っ先にりんを迎えたのは、シドだった。


「まー、そう言うなや。客連れて来たで!」

「…。」


そこには、バツの悪そうな顔の京司がつっ立っていた。

まさかまた彼と、こんな所で会うなんて、京司は夢にも思ってもいなかった。


「よお!ボーズ。」


シドが歓迎するように、笑顔で京司の肩を叩いた。


「ボーズじゃねえ…。」


京司は下を向いたまま、小さくつぶやいた。


「協力…してくれるのか…?」


シドは恐る恐る京司に尋ねてみた。

辰は言っていた。彼は決して反乱には、手をかさないと。

そんな彼が今、自分の目の前にいる。

それは…


「…。」


京司は下を向いて、口を結んだ。

…答えられるわけない…。


「ただの見学者や!!なあ?」


そんな京司の代わりに、りんがその問いに答えてくれた。

やはり、彼が簡単に首を縦に振るわけはない。

それは、シドも何となく感じ取っていた。


「ああ…。」


そして、京司は小さく頷いた。


「…人を…殺すの…?」

「…。」


京司の後ろに、隠れるように立つ彼女が、小さくつぶやいた。

それは、シドに向けての言葉である事に、すぐに彼は気がついた。


「いや。俺たちは、国の軍からなんとか逃げながら、ここまで来た。誰も殺させない。もちろん、城下町の人間もな。」

「…。」


その力強い声に、天音はシドから目を離せなくなった。

彼の言葉は真っ直ぐで偽りはないのは、明らかだ。


「俺たちが狙うのは、天師教1人だ。」

「…。」


シドはやっぱり、真っ直ぐにその言葉を発した。

しかし、その言葉に京司は、目を伏せずにはいられなかった。

なぜなら、その張本人が目の前にいるのだから。


「できれば、その時には辰にもいて欲しい。」

「え…?」


天音がその名前に反応し、声をもらした。


「…なんでそんなに、辰にこだわるんや?」


その名前が出てきた事へ、疑問を投げかけたのは、りんだった。

事あるごとに辰の名前を出すシドに、ここぞとばかりにりんは聞いてみたのだ。


「…戦いの痛みを知ってるからだ。」

「…。」


天音がその言葉に目を見張る。


『俺には、やらなきゃいけない事がある。』


そして、そんな彼の言葉を思い出した。


「この国の痛みを。」


シドがもう一度噛みしめるように、つぶやいた。

そして、その言葉を聞いた京司は、顔を上げる事が出来ないでいた。


「だからきっと、あそこにいるんだよ。」


すると、今度は自分の番と言わんばかりに、天音が静かに言葉を紡いだ。


「辰は、逃げてるんじゃない!今も痛みの中にいるんだよ。」


いつの間にか、その目は真っすぐシドを見ていた。


「辰は言ってた…!この国が好きだって!」


そして、天音はシドの前に立ち、必死に訴えた。

辰の思いを天音は、痛いほど知っていたから…。


「シド!!国の軍だ!」


その時、シドに向かって、反乱軍の仲間の誰かが叫んだ。

どうやら国の軍が、この場所を嗅ぎつけたらしい。


「今行く!!」


シドは一度仲間の方へと声をかけ、そして天音の方をもう一度見た。


「ありがとう。」


その言葉が天音に向けられたものだと、そこにいる誰もがわかった。


「…。」


それに答えるように、天音は真っすぐシドを見つめる。

もう何に怯える事も、隠れる事もせず。


「あとは前を向くだけだ。」


シドの瞳は真っすぐ前を見据えている。


「うん。」


天音もまた、力強い言葉で頷いて見せた。


「そうだ。まだ聞いてなかったな。名前は?」

「私は…。天音。」

「いい名前だ。」


そう言って、シドは馬に飛び乗った。


「よっしゃ!わいらも行で!」

「え…。」

「京司。後ろに乗れ。」


馬にまたがったりんは、京司に自分の後ろに乗る事を促す。

そして、京司は戸惑いながらも、りんの馬に飛び乗った。


「いくで!!」


そう言ってりんは馬を走らせ、その姿はみるみるうちに小さくなっていく。


「…。」


天音はその様子をただ黙って、見ている事しか出来ない。


「女は辛いわね。」


すると、1人の女性が天音に声をかけてきた。

…この人も反乱軍の人なんだろうか…?


「待つ事しかできない。でも、男はもっとつらい。」

「…痛みは同じ。」


気づくと天音の口から、自然とその言葉が落ちていた。


「ええ。私達は私達の国にしたいの。」


女性は真っすぐと前を見ていた。シド達が駆けて行った方向へ。


「天師教の国じゃなくて。」


いつの間にか、天音も同じ方向を見ていた。

そして、彼女の言葉に黙って耳を傾ける。



「みんなで生きていくの。」



『私達は1人じゃないわ。1人1人みんなで支え合うの。誰か1人の肩に寄りかかるんじゃなくて。』




―――― それは、いつか聞いた母の言葉。





「分かってる。お母さんも、そんな国にしたかったんだよね…。」







************






「ウワー!!」


…これが戦い…。

京司は生まれて初めて、戦場の中にいた。


「矢よけろ!!」


りんが声を荒げた。

ビュン

容赦なく矢の雨が、彼等めがけて降って来る。

それは、敵も味方も関係なく…。


「うわ!」


京司が思わず声を上げ、目を閉じた。


「目閉じんな!!」


そして、りんがもう一度大声で叫んだ。


「…。」


その言葉に、京司は目をゆっくり開いた。


「しっかり見るんや!」


そこは砂埃が舞う戦場。

周りは敵か味方かもわからない。


「オイ!こっちだ。」

「大丈夫か!」


そんな戦場の中、反乱軍の面々は声をかけあっている。

彼らはちゃんとわかっている。

しっかり目を開け見極めている。それが敵か味方か。

そして


『国の軍からなんとか逃げながら、ここまで来た。誰も殺さない。』


それが彼らの戦い方。

誰も殺させない。誰1人欠けてはいけない。


『もっと遠くを見てくださいませ。』


…俺は何も知らなかった。


ただ城の中に閉じこもったままで、どうやってこの国を変える事が出来る?

この国の痛みも何も知らずに。

この国の本当の姿を見る事もしないで…。





************




「すごい星だねー!」

「そうやな。」


その日の夜、天音とりんは外に出て星を見ていた。

反乱軍はなんとか国の軍をまいて、戦いは一段落し、別の場所にテントを張り、そこで休息を取っていた。

そんな中、天音を外へとつれ出したのはりんだった。

そして、無数の星を見つめる天音の顔は、何かがスルッと抜け落ちたかのように、晴れやかな顔に戻っていた。


「私にも何かできるかな…?」


天音が星空を見上げたまま、つぶやいた。


「天音…。」

「私決めたよ。」


彼女の瞳は澄んでいた。そこに広がる星空のように。

少し前の濁った瞳は、もうそこにはない。


「私も生きていきたい。この国のみんなと。」


天音は星空を見上げながら、その決意を言葉にした。

彼女はもう一度、前を向いて歩いて行く事を決めたのだ。

その顔には、もう迷いなどない。


「天音。」


りんはそんな天音をじっと見つめた。


「信じる道の先には幸せがある。きっと。」


その目に映る星空がいつまでも輝くように。

りんは天音の隣でそっと祈った。





************




「どうした?」


京司は、戦いで疲れた馬を労うシドの元に、1人足を運んでいた。


「俺はもう行かなきゃならない。」


京司が真剣な眼差しで口を開いた。


「え…。」


シドは京司のその言葉に眼を見張る。

その決断はあまりにも早すぎた。

まさかこんなにすぐ、その日が来るなんて、シドも全く予想はしていなかった。

もう少しだけ、彼がここにいてくれるんじゃないか…。

そんなシドの淡い期待は打ち砕かれた。


「天音の事たのむよ。」

「…。」


シドの真っ直ぐな瞳は、京司を見つめ固まったまま。


「天音はきっとお前達と同じだ。」

「お前は…?」


シドはどこか寂しげに揺れる瞳に問う。


「お前も同じじゃないのか?」

「…わかったんだ。俺には俺にしかできない事がある。」


そう言って京司が少し寂しげに笑って見せた。

京司は気がついてしまった。


「始めから違ったんだ…。」

「…。」


そこでぷつりと会話は途切れた。

シドにはわかっていた。もう、何を言っても無駄なのだと。

彼のその決意をくつがえす事はできないと。

彼の背負うものは、一体何なのか。

それはシドには分からない。

しかし…


「何も言わなくていいのか…。」



…それは、彼女を置いて行かなければならないほど、重い荷物なのか?




「最後まで、ウソはつき通さなきゃ意味ないんだよ!」




そう言って京司は、馬に飛び乗った。


そして駆けて行く。


誰もいないその道を。





「芯の通った奴だな…。」





************



「やっと終わった。」


その掲示の前で、星羅がポツリと小さくつぶやいた。


「決まったわね。妃。」


そんな星羅の横には、いつの間にか、かずさがいた。

まるで()()を知らせに来たかのように。

もちろんかずさが、知らないわけはない。

だって彼女は…


「…予想通り…か…。」


そう、星羅にとっても、その結果は意外なものではなかった。

彼女は予感していた。こうなる事を…。


「その先は…?」


すると、かずさがどこか清々しい表情の星羅に問う。


妃は決まった。



―――それで終わり?



「…私達はまだ終わってない。この国の未来を見るまでは…。」



星羅がピンと背を伸ばし、ゆっくり歩を進めた。




************



「おめでとう。華子。」


士導長がニッコリと笑い、華子に声をかけた。


「なーんだ。もう終わりか。」


しかし、華子は口を尖らせ、全く嬉しそうには見えない。


「ん?」


士導長がそんな華子の様子に、思わず眉間にシワを寄せた。

華子ならば、その知らせを聞いて飛んで喜ぶだろう。

そう思っていた士導長の思惑はくつがえされた。



―――そう、妃に選ばれたのは、華子だった。



「今日はもう遅い。天師教様へのご挨拶は、明日になるじゃろう。」

「はーい。」


華子はまた、どこかつまらなそうに返事をした。

そんな彼女の様子に、士導長は眉間のシワをまた増やした。





************




「え…。」


天音は、シドにもお礼が言いたくて、彼の元へと足を運んだ。

ここに来なければ、彼に会わなければ、もう一度前を向く事はなかった。


しかし、そこでシドから告げられた事実に、天音は言葉を失った。


「アイツは、ここを去った。」

「ウソ…。」


…京司がいなくなるなんて…。

そんな事あるはずない!

天音は、シドのその言葉を、簡単には受け入れられなかった。


…だって…


『お前は俺にさんざん言ってきただろ。1人じゃないって。』


…あなたは、1人じゃないって言ったじゃない。これからは、ずっと2人でいられるって、そう思っていた…。


「なんで…何も。」

「アイツにはアイツのやるべき事があるんだと…。」


…どうして、何も言わないで、1人で行ってしまったの?

あなたはもう1人じゃないでしょ?


「嫌だよーーー!」


そう言って天音は走りだし、明かりも何もない荒野に1人飛び出して行った。


「天音!」


その後を、天音の横でシドの話をただ黙って聞いていたりんが追う。


「京司!!」


ザ―

天音が石につまずき、地面に突っ伏した。

しかし、そのまま彼女は、起き上がろうとはしない。


「何もまだ、伝えてないのに…。」


涙でもう前が見えない。


「天音…。」


りんが悔しそうな顔で、天音の横にしゃがみ込み、彼女を見下ろした。


「私の決意も…何も…。」

「天音。わかってやってくれへんか…?」


りんはそっと天音の頭をなでた。彼女の表情は見なくても分かる。


「それから…。」

「…アイツもつらいんや…。」


りんは奥歯を噛みしめた。

京司がどんな思いで、1人ここを去って行ったのか…。

そんな彼の気持ちを考えるだけで、悔しさが込み上げてくる。

そして、天音のその震える声を聞けば聞くほど、その思いは、大きくなっていく。





「ありがとうも…。」










************






「天音…ごめん…。」





馬で暗闇を駆ける京司は、ひとりつぶやいた。





―――― 俺を支えていたのはたった一つの言葉







『みんなが京司の敵になっても、私は京司の事信じるよ。』





















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