英雄と呼ばれた少年4
私は大陸を渡り、ソウグラス大陸からサンクリッド大陸へと移動した。
この大陸は世界でも最も魔族との戦争が勃発していた地域でもあり、15年経った今でもその傷跡は多く残っている。
私が調べている【ヤシロミナト】という少年は、大陸を渡ったのち、一番近くの国であるカンバツ王国へと移動していることが記されている。
カンバツ王国は『魔王グロスクロウ』に侵攻されるも返り討ちにし、討伐することができた歴史的な場所である。
現代の教科書においても『魔王グロスクロウ』のことについては記載されている。
『魔王グロスクロウ』襲撃の緊急クエストを聞いた3代目勇者一行が迅速にカンバツ王国へと駆けつけ、その剣技と魔法により、『魔王グロスクロウ』を見事に討伐したとされている。
3代目勇者が初めて討伐した魔王である。
話は元に戻るが、このカンバツ王国で【ヤシロミナト】が会ったとされるのは2組。
1組目は3代目勇者。
恐らくは勇者達とのファーストコンタクトはこの国であったのだろう。
3代目勇者に話が聞ければ何か分かるかもしれないが、3代目勇者は現在アクエリア大陸のミラージュ王国におり、人類の救世主である彼とアポを取るなんてことは、一介の学者になど無理な話だ。
そのため私はもう1組の討伐隊へと話を聞くことにした。
その討伐隊とは既に一線を退いた元A級討伐隊『ベルの音色』のミリ・ガンナ氏とギャレルバ・ボルザノク氏だ。
【ミリ・ガンナ】
「ヤシロミナト………………? ああ、確かにいたよ。何でちょっと忘れてたんだろ…………。聞きたい人ってヤシロミナトの事? そう…………」
「この国で初めて会ったよ、ヤシロっちとは。しかもいつ会ったと思う? ちょうど魔王グロスクロウが攻め込んで来た時だったんだから! 私達も魔王と戦ったんだよ? 凄くない? 今思えば、その頃が一番私達が討伐隊として輝いてた時だったなぁ……」
「他にも2人いたよ。真っ赤な髪の女の子と、ゼロさん。ゼロさんてばカッコよかったんだから。私達は魔王シルバースターの討伐にも一緒に参加したんだけど、ゼロさんが私のこと守ってくれたりもしたんだから。だけど何でかな……。ヤシロっちのことがイマイチ思い出せないんだよね。結構長いこと一緒にいたと思うんだけど……。やっぱりベイルが死んじゃったせいなのかな………………ううっ」
【ギャレルバ・ボルザノク】
「ヤシロ………………あーあーあー! ヤシロっちね! はいはいはい! めちゃくちゃ強かったっすよあの人!」
「あまり知られてないことなんすけど、勇者が来る前に魔王と戦ってたのはヤシロっち達なんすよ。そこに俺らが加勢して。そっかぁー、あれから18年経ってんすかぁー」
「他にも二人いたっすね。シーラちゃんと銀色の髪をした男。てかシーラちゃんマジかわだったんすよ! それに火魔法もパない威力でしたし! シルバースターの討伐にも参加したんすけど、何でっすかねー、ヤシロっちの顔が思い出せないんすよねー。おっちゃんに言われるまでヤシロっちの事忘れてましたし…………。やっぱりベイルのことの方が衝撃が強かったからかなぁ…………」
2人の証言により【ヤシロミナト】が勇者と接触しただけでなく、魔王グロスクロウ討伐に一枚噛んでいたことが判明した。
これは重要な情報ではないか?
魔王グロスクロウを倒したのは3代目勇者で間違いないようだが、少なくとも魔王と戦い生き残った者達がいた。
そしてこれこそ彼が英雄と呼ばれる所以の一端が見つかったのかもしれない。
さらにシーラとゼロという人物。
この2人は書物の一番後ろに書かれているシーラ・ライトナー、ゼロ・レパルトでほぼ間違いないだろう。
やはり2人は彼と共に行動していたのだ。
残る2名についてはなおも不明な状況だが、それも調べていけばいずれは分かるだろう。
だが一つ気になった部分があった。
2人の彼に対する印象が同じであったことだ。
2人共他の2名については鮮明に覚えていたようだが、【ヤシロミナト】のことになると、記憶に靄がかかったように曖昧になる。
今まで話を聞いてきた誰よりも長くいたはずだというのに、これは一体どういうことだろうか。
あるいは、彼らの友人の死が【ヤシロミナト】という存在を小さくしてしまっただけなのだろうか。
私はなおも調査を続ける。




