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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
魔王グロスクロウ編

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勇者決戦

「魔法の使用は無し、単純な剣術のみの仕合。これで構わないかい?」

「ええ、大丈夫です」


 俺は『雷鳥』を引き抜き、両手で把持はじして構える。


 グリムも同じく構えるが、その立ち振る舞いは剣道に近い。

 右足を前におき、自然体に構えているようで剣先はこちらの目線の高さにある。


神剣流しんけんりゅうの極意…………味わってみるといい」

「神剣流っつーのはなんだ?」


 ゼロがフェリスに聞いた。


「アクエリア大陸で最も主流となってる流派のことね。〝無駄を無くして効率良く敵を斬る〟これを真髄とした『剣聖ツォルク』が考案した1〜10の剣技だよ」


 じゃあしっかりとした型にハマった攻撃があるってことか。

 俺が1ヶ月で教えてもらったのは、逆に決まった型が無い自由な形の剣術だ。


 俺は勝手にガルム流だとか読んでるけど、もしかしたら正しい名前があるのかもしれない。


「10個全ての剣技を修得できる人はあまりいないけど、グリムは全て極めてるし、新しく11番目の剣技も自分で編み出してるからヤシロ君も気合い入れた方がいいよ」

「警告ありがとうございます」


 まぁ気を抜くなんてことは出来ないけどな。

 相対するだけで物凄い重圧に押しつぶされそうになる。


 エセ勇者共とはえらい違いだ。


「それじゃあ始めるぜ。お互いに構え…………始め!」

「一の剣技『神速しんそく』!」


 ゼロの掛け声とともに、グリムの剣が俺の右腕を切り落とさんと目の前まで来ていた。

 体を左に倒しかわしつつ、その勢いで『雷鳥』でグリムの剣を弾く。


 危うく一撃でゲームオーバーになるところだ。


「二の剣技『神打しんうち』」

「うおっ!」


 弾いたはずの剣がブレて消えたかと思えば、腹を水平に斬りつけられていた。

 危なく皮一枚であったが、その剣速は目で追えなかった。


 すぐさま距離を取る。


「グリムの攻撃を凌いでる! ヤシロ君凄いじゃん!」

「二撃目でとったと思ったんだけどね」

「危なかったぁ……。今のが剣技って奴ですか?」

「そうだよ。『神速』は敵に接近して斬るためのもの、『神打』は近距離から最短で斬るためのものだ」


 決まった型があるのは案外いいかもしれないな。

 その状況に応じて、型を繰り出せば良いから考える必要性がない。


 俺も教えてもらおうかな。


「防戦一方じゃあ俺には勝てないよ」

「カウンター狙いなんですよ! …………ってまぁ嘘ですけどね」


 今度は俺から攻撃を仕掛けた。

 剣を下手に構え、姿勢を低くしたままグリムに突撃する。


 だが愚直に真っ直ぐではなく、僅かに左右へとステップを踏むことで意識をバラけさせる。

 普通の人がやれば滑稽な姿に映るが、秒の世界のスピードであれば体がブレて見えるだろう。

 お互いの間合いへと入った瞬間に、俺は下から上と思いきり剣を振り上げた。


 もちろんそれは防がれる。

 が、俺はあえてグリムに剣が届かない位置で振り上げたため、防ごうとしたグリムの剣には触れることなく、空を切る。

 空を切った瞬間、剣圧がグリムを襲った。

 最初から狙いは剣圧によるバランス崩しだ。


「ぐっ!」

「もらった!」


 俺は振り上げた剣をそのまま振り下ろす。


「『無神むしん』!」


 振り落とした剣を上手くいなされた。

 鮮やかすぎる流し方だ。

 それでも俺は、振り落とした事が最後の連撃ではなく、むしろ防がれるのは想定済みであり、上下左右へと攻撃を加え相手の剣を弾き落とす、ガルム流剣術を使用。


 2手3手と繋げて、ぶっちゃけ決まったと思った。


 だが、グリムはその全てをいなしてみせた。

 防ぐのではなくいなされたために、俺の攻撃は届かなかった。


「全部防いだぜおい。今のも剣技の一つなのか?」

「九の剣技『無神むしん』だね。条件反射だけで相手の攻撃を無力化する防御寄りの剣技だったはずよ」

「とんでもねーな。剣術に関しては魔族よりも人間の方が優れてると思うぜ」


 全くだ。

 こんな剣術編み出した『剣聖』とやらだったら魔王の1人や2人倒せるんじゃねーの?

 とも思ったけど、魔導級の魔法撃たれれば一発で死ぬし、反則級のスキルがあるからダメか。


「まぁここまで完璧に極めてるのはグリムぐらいよ。本家よりも熟練度高いんじゃない?」

「勇者ってのは魔王に負けず劣らず化け物だな」


 それでも1対1じゃ勇者を圧倒する魔王はやっぱり別格だろ。

 よく倒せたわホント。


「ここまで俺と渡り合える人は久々だ……! ナイルよりもミラージュ王国の星宝三龍将せいほうさんりゅうしょうよりも上だね」


 また知らん単語出てきた。

 ミラージュ王国もセイホー何ちゃらも分からん。


「じゃあこれはどうかな? 七の剣技…………『斬神ざんしん』」


 グリムが両手で剣を振り下ろしたかと思えば、ドンッ!! という音と共に衝撃波が俺に向かって一直線に飛んできた。


 つーかこれアレだ。

 俺の『飛撃ひげき』と一緒だ。


「相殺!!!」


 俺も振り下ろし、衝撃波を繰り出した。


 バヂヂィ!!!


 お互いの衝撃波がぶつかり、大きな音を立てて相殺した。


「…………驚いた。ヤシロもそれが使えるのか」

「独学で学んだものですけどね」


 というか上級魔人とガルムからパクったものだけど。

 そのうち連発できるようにならないかと鍛えております。


「面白い……! ここからは怒涛の攻めをさせてもらう」

「お断りします」

「八の剣技……『攻神火撃こうじんかげき』」


 お断りしたのに!


 先程までの繊細な攻撃とはうって変わり、まるで獣のような攻撃が俺を襲った。

 だが、その中に無駄な動きは何一つなく、防御が薄くなった部分に確実に斬撃を加えてこようとする。


 確かに怒涛の攻めだ。

 俺は防御一辺倒で反撃する暇がない。

 それならここからは持久戦と行くか?

 どっちが先に疲れるかのね!


「『心神流々(しんしんりゅうりゅう)』」


 その戦いは唐突にあっけなく終わった。

 気付けば俺の心臓の手前で剣が止められていた。


 何がどうなってその状況になったのか分からない。

 ただ、グリムが手を止めなければ俺は即死していた。


「………………終わりですね」

「素晴らしい仕合だったよ、ありがとう。俺もレベルアップできたと思う」

「最後のは?」

「十の剣技さ。仕組みは…………少し説明しずらいんだ」


 理屈じゃないってことなのかな。


 とにかく、身体能力的にはそれほど差は無かった。

 勝負を決したのは剣術の差だ。

 ガルムの剣術よりも型がある方が強いってことが分かってしまったな。


 単純な剣術では、の話だけど。


『獅子脅し』と混ぜた戦い方をする俺には、型がある神剣流よりもガルム流の方がやりやすいのは間違いないからね。


「勝者はグリムだな。面白かったぜ」

「ホント。ヤシロ君はS級討伐者並みの実力があると思うよ!」

「照れますね。照れすぎてテルテル坊主になっちゃいますよ」

「じゃあ部屋に戻ろうか。約束通り俺の左目について話してあげるよ」


 おっと、ボケはスルーで生き地獄。


 仕合はグリムの勝ちであったが、貴重な体験が出来たと思う。

 人類の最高峰とこれだけ渡り合えれば充分だろ!

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