救出
「13人の魔王の1人を倒すことができた……。これは人類史に残る快挙だ! 少年、君の援護のおかげだ! 感謝する!」
驚いて地面に尻をついている俺に、勇者が満面の笑みを浮かべながら手を差し伸べてくる。
「あ、どーも」
バチッ!
勇者の手が俺に吸い寄せられるようにくっ付いた。
何だこれ。
「おお……? これは……手が離れないな。魔王の弾くスキルを無効化していたのはこの魔法のおかげか……」
「ちょっと男同士で何くっ付いてんの!? グリムから離れなさいよ!」
「あらあら〜」
好きでくっ付いてるわけじゃないやい!
俺の魔法って磁石のように相手を吸い寄せることができる魔法なのか?
とりあえず魔法を解いて……。
「お、解けたね。中々面白いオリジナル魔法だ」
「そんなことより、俺の仲間や知り合いが瓦礫の下に埋もれてるかもしれないんです! 助ける手伝いをしてもらえないですか!?」
魔王がいなくなった今、次に大事なのは他の奴らの安否だ。
誰か1人でも欠けている、なんてことは嫌だ。
「もちろんだ。俺達は魔王討伐が目的だが、その理由は人類を守るためだからね。本旨をないがしろにするわけがないよ。俺達でこの瓦礫をーーーー」
ドォン!!
国の反対方向で爆発音が鳴った。
反対側には使徒がいるのだ。
まだ、国の中では戦いが続いている。
「ーーー! まだ敵がいるのか! すまない、俺達は一度向こうへと行く。フェリスとアースは彼の手伝いをしてやってくれ」
「何で!? 私も行くよ!」
「魔王討伐に力を貸してくれた彼の仲間を救出することも大事だ。向こうは俺とナイルゼン、シャイナで何とかする」
「でも相手が使徒だったら……!」
その使徒だと思うんだよな。
それなのに俺のためにも貴重な戦力を残していってくれるとは。
申し訳ないな。
でもだからといって、この大量の瓦礫の中からみんなを探す出すなんて俺1人で出来るようなことじゃないし…………。
「仕方なかろうフェリス。目の前の助かるかもしれん命も大事じゃ。優劣はつけられん」
「私が無理させませんから大丈夫ですよ〜」
「…………分かった」
「えっと…………なんかゴメン」
「君が謝ることではないさ少年。さぁ行こう、索敵スキル『見えざる者以外』発動!」
勇者の左目がギラギラと光る。
これがいわゆる勇者の固有スキルって奴か。
索敵スキルってことは、誰がどの位置にいるのか分かったりするってことかな。
便利なセルフGPSだなおい。
だけど俺だったらガルムの召喚術のほうが欲しいかな。
かっこいいし。
「それじゃあワシらも瓦礫をどかすとするか。無事であるといいな」
「…………魔王の話だと、俺がさっきの引き寄せる魔法で魔導級を防いだせいで、魔法の威力が低くなったってことらしいんだけど、どう思います?」
瓦礫を少しづつ片付けながら俺が聞いた。
「そういうことはフェリスの方が詳しいの……っと少年、そんなチマチマやっておったら日が暮れてしまうわ」
「じゃあどうやって……」
「私が今やってるからちょっと静かにしててね………………見つけた。40人ぐらい埋もれてる。誰が、っていうのは分からないけど」
女の子の周りに金色の文字がいくつもフワフワと浮いている。
何だ?
何かの魔法か?
雷魔法しか使えない俺にとって、このレベルの話になるとサッパリ分からん。
「フェリスのオリジナル魔法、『人動探知』じゃな。グリムの索敵と似ておるものじゃ。この暗さだと探しにくいからな、便利じゃろう」
「私のはもっとショボいけどね。さ、場所は教えるから助け出していきましょう」
てことは非生産魔法の1つってことか?
生産魔法は火とか水とかだから分かるけど、非生産魔法は原理が全然分かんね。
ゼロなら分かるんかな。
っと、そんなことより急いで掘り起こさないと!
フェリスと呼ばれる女の子が指定した所の瓦礫をどかしていくと、女性が倒れていた。
兵でも討伐者でもない、俺の知らないこの国の人だろう。
隠れるようにいたのだろうが、巻き込まれてしまったということだ。
救いは息があったことだろう。
「まだ息があるな。ワシに任せろ」
このオッサンが近付くと、どうしてもトドメを刺しに行ってるようにしか見えなくて困る。
絶対に適正魔法間違ってるだろ。
でも一瞬で治してるからスゲェんだよなぁ……。
「あ……あれ……? ここは……?」
「もう大丈夫じゃよ」
「キャアアアアアアアア!!」
そらそうなるわな。
完全に山賊に襲われる直前だもんなコレ。
スマホあったら証拠の写真を思わず撮りたくなるもん。
「もしかしてアース様ですか!? 勇者様一行の!」
「如何にも」
「キャー! ファンなんです!」
うそん。
そういう意味のキャーかい。
予想外すぎて五臓六腑が口から飛び出る所だったよ。
「アース、他にも人はいっぱいいるんだからほどほどにしなさいね」
「ワシをナイルゼンと一緒にするでない。すまんなお嬢さん、ワシはちと用事があるでな。安全なところに避難しなさい」
「ありがとうございました!」
「…………おっちゃん、随分とモテるんですね」
「ん? ガッハッハ! ワシのような大男を好いてくれる女子など、グリムに比べれば極僅かよ!」
女子て。
山賊っつーか田舎のじいちゃんみたいな人だな。
「2人とも、この下にもう1人いるよ」
「任せい!」
「了解です!」
俺達は1人、また1人と救出していった。




