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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
魔王グロスクロウ編

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79/217

現着

【数十分前】



 討伐者IDに書かれた『カンバツ王国 魔王現る』という短文を読み、すぐさま向かうは3代目勇者一行。

 運が良いことに、彼らは魔王シルバースター討伐の準備を行うためにカンバツ王国へと向かう途中であり、ベイカ砂漠にて野宿をしていた。


「急ごう! 唐突に発令されたクエストということは、魔王はグロスクロウの可能性が高い!」

「あの少数でゲリラ活動行ってる? 逆にチャンスじゃないか? この状況」


 そう話すのは、グリムの3つ歳上の幼馴染である剣士、ナイルゼン・ベール。


「あなたが女遊びをやめれば、もっと早く見つかったかもしれないけどね」

「おい! 関係ないだろそれは!」


 ナイルゼンに嫌味を言うのは、同じく幼馴染でグリムと同い年の天才魔術師フェリス・グリゼル。


「こ〜ら2人とも。喧嘩しないの〜」


 仲裁に入ったのは、世界で最もダンジョンを踏破したS級討伐者シャイナ・モールテン。


「これは習い生といって、死ぬまで治らない癖みたいなものじゃから治らんじゃろ。それに、女遊びをとったらナイルゼンに何が残るのやら」

「おい!」


 火に油を注いだのが、盗賊のような見た目の大男なのに、治癒魔法のスペシャリストである魔術師のアース。


 この5人こそが人類の希望であり、世界最強のS級討伐隊『グリモワール』である。


「間も無くカンバツ王国に到着する。俺達のやることはいつもと変わらない。いち早く魔族を討伐し、国の人々を救出することだ!」


 誰よりも正義感が強く、誰よりも勇者としての責務を自覚しているグリムに、自然と人は惹かれていく。

 ここにいる4人もそんな勇者に惹かれて集まったメンバーだ。

 例えグリムが勇者で無くなったとしても、彼らはグリムについていくだろう。

 それほど堅い絆で結ばれている。


「……爆発音が聞こえてきよるな。既に戦闘も佳境に入っておるかもしれん」

「状況を見て判断しよう。優先すべきが何なのか」

「狙うなら魔王じゃね? ここで逃せば、次に見つけるのはいつか分からないぜ」

「国の中に侵入されているなら、一番被害が大きい所に行くべきだと思う」

「そうね〜。人命救助が大事だと思うし〜」

「とりあえず…………この辺りから既に索敵を始めるとしよう」


 グリムの左目がギラギラと光り始める。

 勇者のみが使うことができる『勇者の証』の固有スキル。

 3代目勇者グリムが使うことができるのは、『魔族の索敵』。

 魔者、魔人、使徒、魔王。

 これらの魔族を自身を中心として半径100m以内であればどの辺りにいるのか把握することができる。

 魔王が持っている固有スキルと同じようなものだが、唯一違う所があるとするならば、勇者の固有スキルは魔力を消費するところだろう。


「まだこの辺りでは魔族の反応は無いな」

「ならガンガン行こうぜ! 魔王をぶっ倒してやる!」

「油断してヘマだけはしないでね。私達がケアしないといけないんだから」

「へっ」

「へって何よへって!」

「胸の小せー奴はこれだから……」

「なっ……なっ…………胸の話は今関係ないでしょー!」

「シャイナぐらいデカくなりゃ、お前にも大人の余裕って奴が出てくるのかもな」

「ナイルーーー!!」

「私を巻き込まないで下さいな〜」

「2人共…………ジャレるにしても時と場所を考えてくれ」


 グリムが溜め息をつきながら言った。


「違うよグリム! 私まだ成長期だから!」

「18歳で成長期もクソもないだろ」

「ナイルは黙ってて!」

「2人は毎度よく喧嘩するな……」

「まぁ2人なりの緊張のほぐし方なんじゃろ。何だかんだ言っても、誰よりも付き合いが長いのがあの2人じゃからな」

「………………! 全員戦闘準備! 目視でも確認できてると思うが、魔族の反応だ!」


 正面、夜中だというのに赤く火の手があがりはっきりと見えてきた街並みがあった。


 カンバツ王国である。


 その直近において、魔者と討伐隊、国の兵士が戦闘を行っていた。

 魔者1人に対して7、8人で対応していることから、魔者がかなりの実力者であることを察したグリムは迅速かつ無駄の無い動きにより、魔者のみならず誰にも気付かれないうちに敵の首を切り落とした。


「がっ…………!」

「な……なんだ!? 魔者の首が急に……」

「全員に伝えてくれ! 3代目勇者グリムが現着したと!」

「えっ……!? 3代目勇者!?」

「う……おおおお本物だ! 本物の勇者様が来てくれたぞおおお!!」


 グリムの姿を見た人々の士気は高まる。

 ただそこにいるという事実だけでも人々の希望となり得る存在。

 それこそが勇者である。


「勇者様! 国の中に既に魔王と使徒が侵入! ここは我らだけで事足ります故、国の方の救援を!」

「既に魔王が国内に…………!?」

「グリム! 優先すべきは魔王と使徒だ!」

「ナイルの言う通りね。奴らが既に侵入しているということは、下手をすれば即座に国を滅ぼされる可能性があるわ」


 先程まで喧嘩をしていた2人だが、状況が一変すれば即座に気持ちを切り替えることができる。

 これが戦闘のプロとしての大事な部分だろう。


「ワシは怪我している人間を治療しながら行こう。お主らは先に進むがよい」

「そうね〜。ここから見る限り、国の左側が主に被害が大きそうだわ〜。急いで向かいましょう」

「よし、俺達は魔王と使徒を討伐に向かう。被害が大きそうな所から各個…………」


 ドォォォオオオオオオン!!!!!


 突如として空が光ったと思いきや、国の右側がかなりの範囲で吹き飛んだのが見えた。

 その威力は滅多に見ることができるものではなく、魔導級の魔法と酷似していた。

 魔導級魔法は、魔力の消費量が尋常ならざるものであるため、理解ができていたとしても魔力量の問題から放てる人間はかなり限られている。

 さらに詠唱の長さから考え、その利便性から戦闘中に使う人間は滅多にいない。


「何だありゃ……。フェリスだったら今の威力の魔法、撃てるか?」

「撃てないことはないと思うけど……魔力が一度で空になると思う」

「例え使える人がいたとしても、あんな国の中心で人間側が使うとは考えにくい……。魔王か使徒があそこにいる!」


 5人はすぐさま走り出した。

 あれが魔王の固有スキルではなく、雷の魔法であると仮定するならば、魔王側は目的を達成した可能性が高い。

 そうすれば、ここから離脱する方向にシフトしていてもおかしくはない。

 そう考え、逃げられるよりも先に現場に行こうとしたのだ。


 既に意味をなしていない門をくぐり、吹き飛んだ中心へと向かう。

 近づくにつれ、グリムの索敵に1人の魔族が反応した。

 反応の大きさからグリムはすぐに直感する。

 魔王がいると。


 そしてクエスト発令からわずかな時間で甚大な被害が出てしまい、グシャグシャとなった瓦礫の上を移動し、そこで5人は視認した。


 ゲリラ活動により人類を攻撃してきた、魔王グロスクロウの姿を。


 1人の少年を手に掛けようとしている直前であった。

 少年も必死に抵抗しようとしている。


「動けえええええ!!」

「動くな! フェリス!」

「『針千本ハリセン』!!」


 幾千もの針がグロスクロウへと向かう。

 全て防がれてしまったが、少年は助けることができた。


「この短時間でまさかこんなことになっているとは…………。俺達が来たからにはもう安心してくれ」


 少年は驚いた表情をしている。

 魔王と相対していながらも生き残った少年だ。

 グリムはそんな彼を追い詰めた魔王に対して言う。


「人類を手にかける魔王グロスクロウ…………。勇者グリムがその身をもって…………お前を討伐する!」

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