2度目の緊急クエスト
「つまり、シャッタード都市に行くためには戦地を潜り抜けなきゃならねーってことか」
「理解が早くて助かる」
彼らと話した内容をさらりと説明した。
この先をどうするか、2人にも検討してもらうためだ。
とはいえ、ゼロはともかくシーラは真剣な顔をしているが、話の内容を理解しているかは怪しい。
とりあえず混ざっとこうみたいな。
「俺は別に構いやしないぜ。戦う準備はいつでもできてる。それに俺は元々この大陸の出身だからな。こんなことは慣れてる」
「でもいいのか?」
俺は他の人には聞こえないようにボソッと話した。
「ゼロって魔族じゃんか。戦うとなったら同族を殺すことになるんだろ? 抵抗とかはないのかなって……」
「何を今さら。俺は麗しきあの女性に会うためには如何なる障害だろうと乗り越えてみせる。同族だろうが殺すことに躊躇いはない」
ここまで言い切るのもスゲーな。
自分の目的のためなら手段を問わず。
俺も見習うべき部分なのだろうか?
「シーラは?」
「…………ん。いいと思う」
「ホントに分かってんのか……」
「それじゃあ君達も僕達と一緒にベイカ砂漠を越えてゼルビア王国へ向かうってことで大丈夫?」
「ああ、よろしく頼むよ」
「それなら俺達の討伐隊に入ったほうがいいんじゃね? そっちの方が便利っしょ!」
「そうよね! ゼロさんも是非!」
おい個人的な感情が含まれまくってるぞ。
ゼロはともかく俺達は既にチームを組んでいる以上、他の討伐隊に入ることは出来ない。
「悪い、俺達は一応『紅影』って討伐隊を組んでるんだ」
「そうだったんだ。まぁ討伐隊なんていうのはあくまで形みたいなものだし、問題は無いよ! それじゃあいつ頃出発しようか? 僕達はいつでも大丈夫だ!」
「できれば今日は休ませてもらいたいな。今日この大陸に来たばかりなんだ」
「そしたら明日……2日後にしようか。2日後にこのギルド集合で!」
「オッケー」
約束を取り付け、俺達は『ベルの音色』と別れた。
俺達は再度3人で話合う。
「ゼロがいた時はどうだったん? この辺りって」
「魔族目線になるけどな。お互いにキリキリ切迫してた所は結構あったぜ。俺達は魔物を結構放ってたから、それだけでも有利なのは間違いなかった」
「人間側は常に不利だったわけか……」
「それでも、シャッタード都市、だったか。そこだけは魔王側も迂闊には攻め込めなかったみたいだな」
「へぇ、何で?」
「あそこは訳の分からん物を大量に作ってんだよ。印象的なのは魔族を通さないバリア的な奴だな。国全体をそれで覆っているわけだ。あれも魔法と呼べるのかは分からんが……」
シャッタード都市は話を聞く限り、イメージ的に科学都市って感じがするな。
どちらかというと俺らの世界にもしかしたら近い?
憶測に過ぎないけど。
「…………じゃあ私達も入れないんじゃない?」
「そうなるね。目的はシャッタード都市じゃないからいいけど、一番近い国がそこだとしたら休む所がない可能性が出てくるから少し厄介だな」
「魔族の国に来いよ」
「俺が殺されるわ!」
「でも俺らはこうして人間側の国に普通にいるぜ? 多少ツノは隠しているが」
「確かに……」
「堂々としてりゃ案外バレないもんよ」
「説得力が違うな」
でも俺は小心者だからな。
キョロキョロしてすぐにバレそう。
正直者は嘘つけないから困るなー。
「くぁっ……」
シーラが眠そうに欠伸をした。
船に揺られ船酔いし、ここまでロクに寝ていないシーラは流石に疲れがきたか。
飯も食べたみたいだし眠くなる頃合いではあったろう。
「とりあえず宿に泊まるか。そこまで頑張って起きてろよシーラ。流石にもう運べないからな」
「あい…………」
あかん。
もううつらうつらしてる。
「ここに来る途中に確かあったぞ」
「じゃあそこでいいか。ほら、行くよ」
「………………あい」
既に半分寝ているシーラを連れ、近くの宿屋で休憩を取ることにした。
外はまだ日が落ちていないが、徐々に夜の時間となる頃合いだろう。
一度区切りをつけるには悪くない。
このまま俺も休むとするか。
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ピーッピーッピーッ!
突如として警告音が鳴り響いた。
久しぶりに聞いたその電子音のような音に俺は飛び起き、音の出所を探った。
鳴っているのは俺とシーラの討伐者IDだ。
外を見ると既に深夜であったため真っ暗ではあるが、一部の夜空が赤く光っている。
間違いなく良くない予感だ。
「んー。うるさいー」
「シーラ! 寝てる場合じゃない!」
俺は急いで討伐者IDを確認した。
スサノ町にいた時にも一度あった。
これは、緊急クエストを知らせる時の警告音だ。
IDの裏面を見ると『緊急クエスト発令』という文字の後にうっすらと『魔王グロスクロウ襲来』という短文が浮かび上がってきた。
魔王の1人が現れた。
「何で……このタイミングで来るんだクソめ!」
魔王グロスクロウといえば、情報ではゲリラ的に人類を襲っている奴らだ。
このタイミングで現れるなんて予想もしていなかった。
「ヤシロ! 起きろ! 外で何かが起きてる!」
隣の部屋で寝ていたゼロがドアを激しく叩いた。
ゼロは討伐者ではないためIDは持っていないはずだが、不穏な気配で分かったのだろう。
「起きてる! 緊急クエストが発令されてるみたいだ! 理由は魔王の襲来!」
「ま……じかよ! 俺は先に下に降りてるぞ!」
「すぐ行く!」
俺は急いで持ち物の確認を行い、戦闘準備を行った。
シーラも寝ぼけてはいたが、流石に緊迫しているのが分かったのか、俺に続いて準備した。
魔王との直接交戦が始まる。




