目指せダンジョン
「俺は討伐者にはならないぜ」
「え、なんで?」
ゼロに対して討伐者ギルドに加入することを勧めたら、あっさりと断られてしまった。
「別に俺は人間社会に溶け込みたいわけじゃないからな。憧れの女性とお近づきになれればそれでいい」
「難しいんじゃないかそれも……」
それこそ討伐ギルドのIDをゲットして、人間社会に溶け込んだほうがお近づきになれるんじゃないか?
でも無理に誘うことは出来ないし、ゼロがそれでいいと言ってるんならそれでいいんだろう。
「まぁギルドに入らないにしても、俺達についてくるなら迂闊な事は避けてくれよ。俺達の評判が下がっちゃうからさ」
「俺がそんなことするかよ」
「店で揉めてたじゃん」
「だからあれはちゃんと弁償したっつーの。シミを落とすのにあんなに金かかるとは思わなかったけどよー」
「ふっかけられてんだよそれは…………」
薄々気付いてはいたのだが、ゼロは不良みたいな態度をしているくせに天然が入ってる。
最初は常識がないだけかと思ったが、「シーラはこう見えても男なんだぜ」って冗談で言ったら本気で信じてた。
アホである。
「それで、ヤシロ達はシーラの親を探して旅してるんだったか」
「そう。レッカ族ってのがサンクリッド大陸にいるみたいだから、そっちまで行こうかなって」
「結構距離あんぞ。まさか徒歩じゃねーよな」
「最初は何かに乗ってこうかと思ったんだけど……」
「…………気分悪くなるからヤダ」
「この通りシーラが乗り物酔いするんだよ」
シャンドラ王国からスサノ町までの距離を、死にそうになって移動してたのはいい思い出だ。
「俺は一人なら風魔法でさっさと移動することも出来るが、流石に3人はなー……。転移魔法が使えれば便利なんだけどな」
「そんな誰でも使えるようなものなの?」
「使える奴は極稀だぜ? 魔王ガゼルの使徒ジャガーノグが移動魔法のスペシャリストだったか」
使徒……。
魔人よりも強いんだろうか。
「その使徒っていうのをよく聞くんだけどさ、魔族でいうとどの立ち位置になんの?」
「魔王の右腕だな。単純な戦闘力だと上級魔人のほうが上だが、強力な魔法と知恵が回る分、上級魔人よりも厄介だろーよ」
「へぇ……強そう」
「レッカ族の奴も使徒でいたと思うぜ。実際、魔王を除いた魔族で1番強いのはレッカ族だしな」
「まじか。やったなシーラ最強だってよ」
「…………ん。知ってる」
「生意気やなぁ」
真っ赤な髪の毛をわっしゃわっしゃ乱してやった。
「あ、そうだ。ゼロって魔法得意だよな」
「得意っつーか俺の全てだな」
「シーラに魔法の扱い方を教えてくれよ。俺じゃあ魔法は教えられないんだ」
「別に構いやしねーけどよ。レッカ族なのに魔法が苦手なのか?」
「む……別に苦手じゃないもん」
カチンときたのかシーラがむくれた。
「いわゆる魔力覚醒だっけ? それがあったのがつい最近でさ、まだ魔法を使い始めてから日が浅いんだよ。だから魔力のコントロールだかなんだか、コツがあれば教えてやってほしいんだ」
「随分おっせー魔力覚醒だな。いいぜ。得意魔法はやっぱり火か?」
「………………うん」
「俺も火魔法はそこそこ使えるからな、教えてやるよ」
「………………やだ」
「なんで!?」
久々に来たな反抗期!
最近なりを潜めていたと思ったら出てきおったか!
「なんだ? 俺に教わるのが嫌なのかよ」
「…………なんか凄い高圧的だから嫌」
「シーラ、それはゼロの性格上、仕方がないんだって。誰にでも強く当たっちゃう気難しい子なのよ」
「おい、どういう意味だこの野郎」
「俺も彼の戦い方を見たけど、同時にいくつもの魔法を使えるほどのスペシャリストなんだって。教わっておいて間違いはないぜ?」
「……………………ぷいっ」
ぷいって…………。
未だに見た目に精神年齢が追いついてないな……。
「なんか申し訳ない」
「気にしちゃいねーよ。でも強くなれるチャンスがあるなら、なりふり構わず飛びついた方がいいと思うけどな。死んでからじゃあ後悔もできやしねー」
言ってることは最もだけど、それでもシーラには届いてないな……。
どうしよう……。
「それなら直接実戦で学ばせるしかねーんじゃねーの? ここらへんならダンジョンがあるだろ」
ダンジョン。
俺が最初に召喚されたのもダンジョンの中だった。
あれは魔王ヴィルモールが創り出した、人工的なダンジョンだったが、その他に自然に出来たダンジョンがいくつも存在しているという。
「近いところで有名なところだと……あれか。魔王ヴィルモールが遺した『結晶獣の洞窟』とかか。べらぼうに強い魔物がいるって話だが……まぁお前達なら大丈夫だろ。俺もいるし」
「いや、ごめんゼロ。そこは既に踏破してるんだ。その戦利品がこの武器」
そう言って俺は腰から『獅子脅し』を取り出した。
銀色に輝く俺専用の武器だ。
「げ、マジかよ! 聞いた話だと上級魔人とかも配置されてるって聞いたけどよ、そいつも殺ったのか!?」
「あーまぁ俺一人じゃなかったけどな」
「あとはこの女か」
「この女じゃなくてシーラだもん」
「いや、シーラじゃなくて別の奴なんだけど……」
ガルムのことはわざわざ言わんでもいいか。
それに実際は倒しきれてないし
「なんだよヤシロ、結構な実力者だったのかよ。細目にあっさり刺されてたから大したことないかと思ってたぜ」
「あれは不意打ちだったし……。最初から疑ってれば遅れはとらなかったって!」
「お前それ戦争中でも同じこと言えんのか?」
「…………言えないよなぁ」
「え……ミナト怪我したの?」
シーラが心配そうに見てきた。
そういえば、もう傷痕はないとはいえ、襲われた話は全くしてなかった。
「もう治ったから大丈夫だって。ほれ」
俺が服をめくって刺された所を見せると、シーラがペタペタと触ってきた。
こそばい。
「ん…………本当だ」
「結晶獣がダメだと普通のダンジョンか……? だけどこの辺りはほとんど踏破されてるし、俺達だと簡単すぎるよな……。あ、この大陸ってーと確かもう一つ魔王ヴィルモールが創ったダンジョンがあったよな」
「え、マジ? 俺は分かんないけど」
「サンクリッド大陸寄りの海沿いに、確か一つあったと思うんだが、どーだかな。確証は無ー」
「丁度いいじゃん。ならそっちまで行こうぜ。無いなら無いで別に構わないし」
「私は何でもいい」
「意見がないなぁ」
とりあえず手短な目標は決まった。
目指せ二つ目の人工ダンジョン。




