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ダンジョン

 超難易度ダンジョン『結晶獣の洞窟』。

 


 ある1人の魔王が創りあげたと言われる世界5大ダンジョンの一つ。


 世界にダンジョンは数あれど、それらは全て自然にできたものであり、この5つに関しては人工的に創られた数少ないダンジョンとなる。

 その最深部にはダンジョンを創りあげた魔王がその叡智を費やし遺した、最強の武器があるらしい。

 しかし、最強故にその武器をつかえる者はかなり限られるという。


 現に、造り上げた魔王本人ですらその武器を扱うことはできなかったのだ。

 だからこそその魔王は自身が死んだ時のことを考え、誰の手にも渡らぬよう超難易度のダンジョンを創り、隠したのだ。

 特に人間の手には渡らぬように。


 だが、遂に人間の中にもそのダンジョンを踏破できる人間が現れた。

 それがガルムだそうな。


 ガルムはダンジョンを見事踏破したのだが、最下層にある扉は固く閉ざされ、いくら斬ってもいくら魔法を撃ってもビクともしなかった。

 そうして打つ手が無くなった際、自身の召喚術に武器を扱える者という条件をつけて召喚したところ、魔力の99%を消費して俺を召喚した、ということらしい。


「こんな感じかな。今までの経緯いきさつは」


 俺が異世界に召喚されてから1ヶ月。

 やっとこさガルムがこれまでの経緯を話しやがった。

 でもまぁ、俺は心の広い人間だからぁ?

 この程度ではおこりませんよ。

 それに、まだまだ聞けてない所は多いが主な流れは把握した。


「お前の言う通りにしてれば最強になれるって言ってたからここまでやってきたんだ。現にこの1ヶ月で俺は元の世界にいた頃からは考えられない動きが今ではできるぜ」

「ホント凄いことだよ。いくら伸び代があるからといってもそれは、鍛えなければ宝の持ち腐れだからね。魔法に関しては…………ちょっと残念な結果だけど」


 そう。

 魔法に関しては泣きたくなるような結果だ。

 最初に雷魔法の詠唱に成功したあと、他の属性魔法の特訓を行なったが、それ以降、雷魔法以外の魔法は放つことができなかった。

 生産魔法も、非生産魔法どちらとも俺は発動することができなかったのだ。


「僕の魔力量を持っているのに、使えるのが雷魔法だけっていうのはなんでだろうね。不器用なのかな」

「うるせ」

「唯一の救いは、雷魔法なら初級、中級、上級まで使えることかな」

「お前はほぼ全部マスター級まで使えるんだろ?」

「うん。ただ、今は簡単な魔法以外使えないんだけどね、魔力量が足らなすぎて」


 マスター級というと、最早自在に魔法を創り合わせることができるため、自分オリジナルの魔法も使えるレベルらしい。


「俺も使いたかった!」

「今後何かの拍子に使えるようになるかもしれないし、ミナトのいた世界では魔力のない世界だったんだから、雷魔法だけでも使えただけ万々歳だよ。剣術は動き方を僕が教えることができるけど、魔法に関しては正直うまく教えられた自信ないし」


 そう言って肩をすくめるガルム。


 魔法はもう仕方がないと思う。

 ぶっちゃけると魔法が使えなくとも、既に無双できんじゃねーかなと思ってる。

 実際、今の俺の身体能力はガルムの70%は再現できる域にいるらしい。

 最近は俺の攻撃がガルムの服を斬りつけることもしばしばだ。


「もうそろそろ充分なんじゃね? 剣術に関してはもうほぼお前の動きを真似できるし、あとは基礎能力の向上だけだろ? 1ヶ月も耐えたんだしさ……」


 結局の所、何が言いたいのかと言えば…………。


「ダンジョン、踏破しようぜ」


 異世界に来て1ヶ月。

 準備期間が長すぎて、充電期間が長すぎて、俺のフラストレーションは溜まりまくりだ。


 もしも俺が早漏だったらとっくに耐えきれなくなってる期間だ。


 ガルムも前に同じようなニュアンスのことを言っていた気もするが、準備がいくら大切だと言っても訓練だけでは本当の力は身につかない。

 経験するからこそ人間は体で覚えるんだ。


 多少意味合いは違うけれど、百聞は一見にしかずとも言うだろう?


「…………そうだね。もうミナトも充分な力をつけたと僕も思う。よし、じゃあ行こうか! この世界がどんなものなのか、実際に体験してもらおう!」

「よっしゃああああ! 遂に俺の異世界生活の第1歩だ!」

「いやまだじゃない? このダンジョンから出てからだと思うんだ」

「お前さ、人が喜んでる所に水差してどんな気持ちなの? どんな気持ちで水差してるの?」


 ちょっとマジで一回こいつ泣かしたい。


「探索は明日から決行することにしよう。今まで教えたことを、頭で考えずとも体が勝手に動くようにしっかりと反芻はんすうさせといてくれ」

「へーへー」


 そうして俺とガルムの最後の修行は幕を閉じた。

 俺は1人、明日のことを考えると共に今までのことで疑問に感じたことを頭の中で整理する。


 まず、ここがダンジョンの最下層であるということ。


 もちろん魔物が存在するのだろうが、この部屋に一度として魔物が現れたことがない。

 ガルムが魔物除けの呪文を使っていたのかもしれないし、飯を取って来るときに訳のわからない肉とかがあったことから、全てガルムが排除していたのかもしれない。


 だけどこれは左程どうでもいい内容だ。


 問題は次だ。


 ガルムは俺を、武器が扱えることを条件として召喚したと言っていたが、恐らくこれは嘘なんじゃないかと思っている。

 扉が開かず困っていたのに、武器を扱えることを条件にした、ってのは、もし俺が扉をあけられなかった場合はどうなるんだ?

 1番大事な部分が疎かになってる条件付けだろこれは。


 俺を異世界に呼んだ男、ガルム。


 悪い奴ではない、とは思うのだが……全てを信じきるのは危ういな。


 あいつの言うことの全部が全部を信じない方がいいのかもしれないな。


 そう自分に言い聞かせるようにして、俺は眠りについた。

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