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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
マリン王国編

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人に恋した魔者

「世界の道理……? 何かの隠語のつもりなのか分かりませんが伝わりませんよ」


 人の渾身の例えを一蹴しおった。

 許すまじ。


「常識に当てはめるなら、俺はアンタともこの魔者とも別物なんだよ。勇者と似てるっていうのはいい線いってると思うけどね」


 分類的には召喚獣と同じポジションなのかもしれない。


「ただあなたは勇者ではない……。左目に『勇者の証』が無いのがその証拠です」

「誰も勇者だ、なんて言ってないだろ」

「それに勇者は…………油断したりしませんからね!」


 キィン!


 俺の足元に突如として魔法陣が出現した。

 が、特に何かが起きるわけでもなく、魔法陣はそのままうっすらと光を失い消えていった。


「…………??」

「な……なぜ火魔法が発動しないのですか……?」

「火魔法は無詠唱で使うことができるみたいだな。でも残念。遠隔に魔法を発動するには魔法陣を発動してからでないと発動はしない。だから俺が後から別の魔法を遠隔で発動して相殺した。無詠唱でも魔法の遠隔発動スピードで負けはしないからな」


 どうやらシジミがマスター級の火魔法を使おうとしたが、それをゼロが魔法で発動前に打ち消したみたいだ。

 もしかしたらゼロは俺達(主にシーラ)にとって必要だった、魔法の先生になり得るかもしれない。


「魔者め……!」


 ドン!


 俺は再度『獅子脅し』を撃ち、シジミの下腹部を撃ち抜き、鮮血が舞った。


「ぐあっ!」

「やる気満々みたいだな。それならこっちも容赦はしない」

「くっ……こうなれば奥の手です……」


 俺が一歩踏み出すと、突然シジミが反転して走り出した。


「…………………………奥の手って逃げの手かよ!」


 あまりに逃走の仕方が正攻法すぎてツッコミが遅れた!

 あんなに突っかかってきてたくせに逃げる時はただ走って逃げるんかい!

 もっと魔法とか使って上手く逃げるのかと思ったわ!


「待て!」


 追おうとしたが、頭がクラリとして倒れそうになってしまった。

 傷は塞がっても血がないのが原因かもしれない。


「ちょっ……あんたは追わなくていいのか?」

「別にいいんじゃね? 俺は特に恨みないし」

「いきなり殺されそうとしてたのに?」

「あ、俺殺されそうとしてたの? 狙われてんのはお前かと思ってたぜ。でも確かに話の流れからしたらそうだよな。気付かんかった」


 なんだこの人。

 天然か? それとも若干頭弱い人か?


「まぁ理由はどうであれアイツは逃げたからな、俺の目標は達成したわけよ。立てるか?」


 ゼロが手を差し伸べてきた。

 銀色の髪に、鋭い目つきをしている。

 魔者と言われればそう見えるけど……人間と言われればそう見える。

 村で襲ってきた魔者みたいに一目見て分かるような特徴があれば分かりやすいんだけど……。


「悪い、ありがとう」

「いいってことよ。俺はウィン族のゼロ・レパルト。知っての通り魔族だ」

「俺は八代やしろみなと。それより、なんで俺を助けてくれたんだ?」


 これめっちゃ気になってた。

 気になってたから初手からぶっちゃけて聞いてみた。


「おお、よく聞いてくれたぜ。俺は元々サンクリッド大陸出身なんだけどよ、ちょっとこの大陸に出掛ける用事があってな、この大陸のとある国に寄ったんだよ。もちろんそこは人間が治めてた国なんだけどな、そこで城下町を見て回ってる時に一人の女性を見かけたわけよ」

「ほう」

「惚れたね」

「はっ!?」

「一目惚れよ。超好きになった」

「唐突すぎるだろ!」

「恋なんてそんなもんだろ? それでなんとかして仲良くなりてーと思ったけどさ、俺は魔族で彼女は人間。人間の中での俺達の評価なんて分かってたからさ、話しかけるに話しかけられなくてな。気付いたら彼女はその国から居なくなってた。なんでも他国の王女様で、元の国に帰ったんだと」

「なるほど……」

「それで彼女を探す傍ら、魔族と人間が仲良くする方法なんかを考えながら、この国を訪れてたわけよ」

「それで俺が魔者と一緒にいるという話を聞いて、俺の味方をしてくれたわけか」

「ああ! 人間と魔者が一緒にいられるという生き証人だからな!」

「生き証人て言い方やめろ」


 つまりゼロは、人に恋した魔者だってことか。

 なんと安直な理由……!

 だけど生き物の行動原理なんて結局はそういう所に落ち着くから、変な理由よりかずっとマシなのかな。


「ちなみにシジミはゼロのことを魔者だと識別できたみたいだけど、そういう見分け方とかってあんの?」

「たぶん俺のツノが見えたんじゃないか?」

「ツノ? なくない?」

「ほれ」


 ゼロの頭に10センチくらいのツノが二本、ボンヤリとから徐々に色づいてハッキリクッキリ見えるようになった。

 紛れもなくツノだ。


「おお! なんだこれ!」

「普段は透過魔法で見えなくしてるからな。でも魔法に長けてる奴なんかは直ぐに見破れるぜ。さっきの奴もそれで分かったんだろーな。魔者なんて普通はどこかしら人間と違う部分があるからな。人間とほとんど同じなのは、それこそレッカ族ぐらいなんじゃねーの?」

「透過魔法……なんて夢のある魔法なんだ」


 べ……別に透明になってあんな事やこんな事しようだなんて思ってないんだからねっ!


 それはともかく、魔者はやっぱり一目見て違いが分かるということか。

 シーラの種族はどれぐらい知られているのか分からないけど、見た目は髪が真っ赤なこと以外、人と同じというのは嬉しいな。

 最悪人間で押し通せるしね。


「よし、それじゃあさっそく行こうぜ」

「どこに?」

「ヤシロと魔族の女の子が一緒にいる所を見にだよ」


 うわっ!

 なんかすげーやだな。

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