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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
魔者と決戦編

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電光石火

 無駄な押し問答は一切不要だ。

 こいつはシーラを泣かせた。

 その事実さえあれば俺にとって、こいつを攻撃するのに遠慮はいらない。

 俺は銃を最速で引き抜き、デウロスの左足を撃ち抜いた。


「おお? さっきも不意打ちで俺の頭を狙っていたな。それは武器か? 魔法か? 俺が反応できない速さというのは面白い」

「さっきも言ったろ、企業秘密だって」

「今のも最初から頭を狙ったほうが良かったんじゃないか?」

「別に殺したいわけじゃねーから」

「甘い人間だな。すぐに後悔することに……おっと。なるほど撃ってくるのが分かってれば避けられるな」


 ペラペラうるさいからもう1発逆足を狙って撃ってみたが、こちらはかわされた。


「それでも片方の機動力はもう失った。もう俺と対等に戦えると思うなよ」

「ククク……。人間如きが俺になんたる口の聞き方。いいだろう。俺は魔王ガゼル様の第1侵攻隊隊長、デウロスだ」

「…………C級討伐隊『紅影』リーダー八代やしろ みなと

「ヤシロミナト……。シャンドラ王国に攻め込む前の準備運動といこうか」


 デウロスの周りに水の球がいくつも浮かび、その一つ一つが帯電していた。

 魔者は無詠唱で魔法を使うことができ、魔力量も人間の比ではないと本には書いてあった。

 俺が魔法を詠唱している間にも奴はその倍以上の魔法を撃ってくるだろうから、魔法で勝負を挑むのは不利だろう。

 となれば俺のとる戦法は一つ。

 短期近接決戦だ。


「シーラは魔法使える?」

「どうだろ……魔力があんまり残ってない気がする……」

「なら少し離れてろ」


 魔力がないならこれ以上戦わせるわけにはいかない。


「さぁ、この水群を避けきれるか?」

「造作もないことさ」


 デウロスが作り出す水の球は分割分割&分割されていき、細かく小さな粒となっていった。

 その全てが電流を纏っている。

 一つでも触れれば感電する仕組みだろう。

 俺が魔法で雷を身体に纏えれば問題ないんだけどな。


「飛べ」


 水が高速で俺へと飛んで来た。

 まるで横殴りのレインみたいだぜ。

 ただこんなのは、避けるまでもねぇけどな!


「るあああああああ!!」


 思いきり『雷鳥』を振り下ろし、その剣圧で飛んでくる水玉を全て弾き飛ばした。

 最近は徐々にこれもこなれてきたというか、シャンドラ王国でフロイラインと戦った時よりも威力が増してきてる気がする。

 徐々にガルムに近づいてきたんじゃないか?


 俺は力強く大地を蹴り出し、デウロスが魔法を繰り出す前に奴の懐へと潜り込もうとした。


電光石火ライズ


 バチッと音がしたと思えば一瞬にして俺の目の前からデウロスが消えた。

 俺のように身体能力を駆使して高速で移動したのとは何かが違う、瞬間的にその場から消えたイメージだ。


「な…………!」

「ミナト右!」


 シーラの声に反応し、体を捻って『雷鳥』を構えた所までは良かったが、デウロスの攻撃はやはり変わらず魔法だった。

 紫色の稲妻が俺に向かってくる。


紫電シデン

「ゔあああ!」


 全身に筋肉を引き裂くような痛みが走った。

 リリエルに食らわされた雷魔法とはえらくダメージが異なる。

 それでも膝を付かずにいたのは大したものだと自分で思う。


「今のを食らって倒れないとは……耐久力も人間とは思えねぇな」

「お前……今のはワープとかそういうものじゃないな。元の身体能力とも違う。何か魔法か」

「できるものならば解明してみろ。その前にくたばるかもしれんがな」


 再びバチッと音がしてデウロスが消えた。

 俺の目が追いついていないだけで、実際に消えているわけじゃない。

 風で弾丸を逸らしていたカインズと同じ、ネタさえ割れればなんてことはないはずだ。


紫電シデン


 今度は左から紫の稲妻が飛んできた。

 目の端で微かにデウロスの姿を捉えることができていたため、今度は避けることに成功した。

 すかさず銃で射撃するが、バチッという音と共にデウロスが消えた。

 だけどなんとなく、今ので奴がどういう仕組みで移動しているのかは分かった。

 奴が移動する際身体に電流が帯びているのが見えたため、恐らく、恐らくだが自分の身体に意図的に電流を流して無理矢理電気の反射速度で移動しているのだろう。

 それ故に、移動した時は直線的な動きしか取れず、つまりは奴は俺の真後ろ以外のどこかに移動していることになる。

 だから俺がその場から後ろに即座に移動すれば、奴は俺の視界の中に……。


「入るってことだこの野郎!」


 前方右に20m!

 銃をぶっ放し、それはデウロスの腹を貫いた。


「うっ! …………俺の速さにたった数回見ただけで合わせてきたのか……大したものだな」

「腹に風穴開けたのに何でそんな動けるんだ……」


 お互いビックリしてら。

 でもマジでこいつ足にも腹にも穴が空いてて痛がる素振りも見せないんだよ化け物か。


「ククク……ここまで俺と張り合えた奴はお前が初めてだ」

「ついでにそれが最後になるぜ」

「そうはならん」


 再びバチッと音がしてデウロスが消えたがそれに続いて俺の周りをバチバチバチバチと弾けるような音のみが響く。


「これは…………連続で自分の身体に電流を流し込んでるのか」


 姿は全く見えない。

 速さだけで言えば上級魔人よりもガルムよりも上だ。

 だけど不思議と恐怖はない。

 最初にこいつにビビってたのが噓みたいだ。

 単純に死の危険をまだ俺が感じていないからか?


「直接貴様に雷魔法をぶち込み、細胞を全て死滅させてやる」

「おーおー色んなところから声が聞こえてくる。だけど正直お前も大したことないな。強キャラ感出してた割には、中級魔人の方がよっぽど絶望感あったよ」

「何だと……」


 以前としてバチバチと弾ける音が周りを駆け巡る。

 俺は『雷鳥』を構えてどこからデウロスがかかってきても対応できるようにしつつ、左手に例の物を摘んでいた。

 煽るように『雷鳥』をちらつかせ、そして唐突に横一閃で『雷鳥』を振り抜いた。

 ゴウッという剣圧と共に、デウロスを吹き飛ばそうとしたが奴の姿はどこにもなく、剣を既に振り抜き無防備な姿の俺のみがそこにはあった。

 そしてバカは釣られる。

 デウロスが好機と思い俺に突撃してきたのと同時に、俺は左手で摘んでいたもの、青色のビー玉を握り潰した。

 実際にデウロスが突撃してくるのが見えてたわけじゃない。

 ただ一瞬でも隙を作ればこいつなら逃さないと思ったから賭けに出たのだ。

 奴は手刀を伸ばしてきており、恐らくはそれで俺の身体を貫き、直接雷魔法をぶち込む予定だったと思うが、デウロスと俺の間には下級魔人が阻むようにして現れ、デウロスの手刀は下級魔人を貫いた。


「グオオオオアアアアアアア!!」

「何だコレは!?」

「チェックメイトだ」


 俺は振り抜いた『雷鳥』をそのまま返すようにして、下級魔人もろともデウロスの右腕を切り落とした。


「ぐあああああああああ!!」

「しゃあ! やっと致命傷ぽいのを与えれたぜ」


 下級魔人は消え去り、デウロスを失くした片腕から血がドバドバと流れ出ていた。


 俺の完全勝利といっても過言じゃないだろう。

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