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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
魔者と決戦編

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硬派な軟派野郎

 村の中に入ると所々から火を消せだの、誰がやりやがっただの怒鳴り声が聞こえてきた。

 おっかなびっくりしちゃうぜ。


「手早く探さないと奴らが来ちゃうからな……」


 村の人々が捕まっているとしたら、どこか一箇所にまとめられている可能性が高い。

 そうしたほうが見張りやすいからな。

 とりあえず近場の家から開けて中を確認していこう。


 一番直近の家のドアを開けて中を見たが、人の気配は皆無だった。

 人の気配は、だ。


「何で家に魔人がいんだよ!」


 青色の筋肉バカが何故かそこにおり、俺と目が合うや否や最速で殴りかかってきた。

 ギリギリ俺が『雷鳥』を抜くスピードの方が早く初撃を何とか受け止めたが、パワーだけで言えば下級魔人の方が上であり、俺は外まで吹っ飛ばされた。


「ミナト!」


 吹っ飛ばされた俺を見て、直ぐに入り口に向かって炎魔法をぶち込んだシーラは流石だ。

 玄関全てを焼き尽くすかの如く、大量の炎を下級魔人に浴びせ続けている。


「シーラストップだ! 消滅させないでくれ!」


 俺の声に反応して炎魔法が消えていった。

 家の入り口には黒ずんだ物体がピクピクと体を震わせながら立っていた。

 まさしく虫の息である。


「これいけるかな……魂弾ソウルバレット!」


 黒い物体に光があたると、例によって青色のビー玉に変化した。


「いけるじゃん! でもこの家の燃え方やべぇ……」


 シーラの炎魔法によって家が完全にただの薪と化してる。

 こいつぁでけぇキャンプファイヤーだぜ!


「とりあえず玉は回収して……あつっ! あちあち! さっさとこの場所を離れるぞ、絶対敵がここ来るから」

「うん」


 俺達はその場から離れて、物陰に隠れつつさらに村の中心へと向かっていった。

 そして、中心に向かうにつれて徐々に血生臭さが強みを増して鼻を刺激してきた。

 間違いなく、近くに死体があるのだろう。

 奴らのゲームのオモチャにされた人達のだろうか。


 人の話し声が聞こえてきたため、俺達は近くの民家に侵入し、中に誰もいないのを確認したあと、2階に登って中から外を視察した。


 そこから見えたのは地獄絵図。


 女子供関係なく、無数の死体が転がっていた。

 それとは別に、討伐隊のように見える格好の死体がいくつも転がっているのも見えた。

 この村にも既にシャンドラ王国から派遣されてきた討伐隊がいたことになるが、逆に討伐されてしまった形になるのだろう。


「ずいぶんなことするな……。これは確かに戦争中って言っても過言はないレベルだよ」

「ミナト……あそこにリーダーっぽいのがいる」


 シーラが指差した先には黒の短髪に、狩猟民族みたいな服にジャラジャラと装飾品をつけ、椅子に座りながら膝に肘を置いて、眠そうにくぁ…と欠伸をしている男がいた。


 その横には側近と思われる男と女が1人ずつ。

 そしてリーダー格っぽい男の前には、後ろ手で縛られ、正座させられているボロボロの男が1人いた。

 服装から見るに、この村に派遣されてきた討伐隊の1人だと思う。


「あれがリーダー格か……。まだ生きてる人がいたっていうのは朗報だな。ただこのままじゃその内殺されるのは間違いなさそうだ……。敵が少ないのはシーラの炎魔法で釣られてるからか?」

「やっつける? 私はいつでも準備オッケーだよ」

「ノリノリかよ……。俺なんて常にビビりながら臆病に戦ってるというのに」

「嘘ばっか」


 嘘じゃないし。

 半分は。


 戦いたくないのは本音だけど、救える力を持ってるのなら行使しないわけにはいかないからな。


「いわゆる魔者って呼ばれる奴らと戦うのは初めてだからな……どういう戦い方をするのか予測が立てられないんだよ」

「私と同じ魔者なんでしょ? じゃあ私みたいに魔法使うんじゃない?」

「それはそうなんだろうけどね」


 俺がボケジジイの店で買った本にも、魔者は人間よりも魔法の力がずっと優れていると書いてあった。

 シーラは特別な種族っぽいけど、その他の魔者だって人間よりも魔力が高いのが普通かもしれない。

 魔法主体で攻撃してくると予測して大丈夫だろう。


「じゃあ形的にはいつものフォーメーションでいこう。俺が前衛でシーラが後衛。魔法による援護は任せたぜ」

「任された」


 シーラがニヘラと笑った。

 なんか段々と戦闘狂みたいになってきてお父さん心配……。


 俺達は外に出て裏を通って出来るだけ男達に近づいていき、奴らの会話が聞こえる位置にまで移動した。

 場所的には男達の左後ろの位置になる。


「まだ原因は分かんねーのか」

「申し訳ありません。発火したのを見ていた者の話だと、反対側から炎が矢の如く飛んできたという話で……」

「人間であの規模の魔法を使えるってことは、それなりに優秀な奴っぽいからな、ここにいる雑魚みたいなのじゃなくて」

「ぐあっ!」


 リーダー格の魔者が正座させられている男の顎をガッと蹴り飛ばした。


「援軍に来たコイツらがこの程度の実力で俺はガッカリだよ。ちなみにお前、人間の中のランクとかでどのくらい? 確かそういうのあるよな」

「……ぐぐ……。Bランクだ……」

「Bランクってどのくらいだ? 上にあとどれくらい強いのはいる?」

「へへ……数えきれないぐらいいるよ。それこそお前なんかが足元にも及ばないようなぐらいな。せいぜい小国で王様やってろバーカ」


 とてつもない勢いで殺気が放たれたのを感じ取ったと同時に、思わず銃を引き抜き、男に向かって発砲していた。


 熱されたヤカンに触れてしまった時と同じ、反射で動いてしまった。


 弾丸は男の鋭く裂けている耳をかすめていき、血が流れ出る。


 中級魔人も躱せない攻撃。


 少し距離があるからといって、しっかり狙えば当たらない距離じゃなかった。

 それを無駄撃ちしてしまったことになる。

 相手の威圧に当てられたとでもいうのだろうか。


「何だお前ら……今俺にどうやって攻撃した……?」

「き……企業秘密……」


 リーダー格の男の意識がこちらに向いたのはいいことだ。

 目の前の彼を助けることができる。


 ただ魔人とは違う、意思を持った敵を相手にするのは初めてで、少し怖気付いてしまった。

 まるでヤクザと対峙しているような、理由もなく殴ってくるような理不尽な生き物を相手にしているみたいで、心がすくむ。


「ミナト。私は隣にいるあの2人と戦えばいい?」


 俺が勝手にブルってるのにも関係なく、シーラは覚醒した時と同じように凛として俺の横に立った。


 後衛だって言ったのに俺と並んで立っているのは、わざとか無意識か。

 いずれにしても俺が情け無いからそうしてるんだろう。


 困るねぇ。

 普段は子供っぽいのにこういうところだけ俺よりしっかりしてるとか。

 俺の言葉に説得力がなくなっちゃうよ。


 だけどまぁ、元気づけられたのは間違いないからな。

 こういう時は素直に頼っとこう。


「じゃあ任せた。俺は真ん中のあいつやるから」

「うん」

「何だその女……人間じゃねぇな? 人間に近い容姿してるが魔者だろ。何で魔者が人間の味方してんだ?」

「質問ばっかうるせー奴だな。そんなにお喋りが好きなら木にでも話してろよ1人で」


 煽り耐性低いのはさっきので分かってんだよ。

 意識を他に逸らさせるか。


「お前には聞いてねー。なぁ、赤毛の女。魔者ならこっち来いよ。見た目も悪くねぇし、俺の横に置いて何不自由ない暮らしさせてやるよ」


 唐突にナンパ始めやがった!

 何だコイツ!

 煽り耐性低いんちゃうんか!


「やだ。気持ち悪い」


 いいぞ。

 シンプルながらもクリティカルを与える言葉の一撃だ。


「はっはっは。いいね、力ずくで俺のモノにして人間のことを改めて敵だと認識するよう調教してやるよ。おい、カインズとリリエル。お前らはあの男と遊んでろ」

「「分かりました」」


 何勝手に話進めてんだこの野郎。

 テメーは俺が相手になるっつってんだろ。


「ぐ……君たち気を付けろ! コイツらは魔王ガゼルの手下だ!」


 魔王ガゼル……。

 なんかチラッと見たことあんな。

 確か魔王の中で最も攻撃的な魔王だかなんだか……。

 でもまぁ。


「誰だろうと関係ない。お前達二人に用はないんだ。さっさと消え失せろ」

「お前は」

「私たちが相手よ」


 3対2の変則マッチが始まった。

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