他己紹介
シーラが泣き止んだ頃、ある程度の小休止ができた俺は周りを見てもらっていたアイラに声をかけた。
「敵、来ないな」
「ヤシロ。もう大丈夫なの?」
心配してるように見えて、声に少し怒気が含まれている。
収拾つかないまま放り投げてゴメンよ。
「魔力は全然回復してないけど、それなりに体力は回復したよ。だけど足が痛い」
「足? あっ…………」
俺の右足には弓矢で討たれた傷がある。
誰も治療魔法が使えないため、出血は縛って抑えてあるが、戦いが終わってアドレナリンが切れた今、忘れた痛みを脳が思い出し始めていた。
「フェリスさんがいればなぁ」
「そういえば一度も見てないよね。途中で魔導級水魔法が発動されてたから、多分フェリスさんだと思うけど」
「やっぱりあの魔法は魔導級だった? 凄まじい豪雨だったからそうじゃないかと思ったけどさ」
豪雨もそうだけど、咲いた花が美しかった。
水で作られた花なんて前の世界じゃ見れるもんじゃない。
「フェリスさんじゃなくても治癒魔法を使える人はきっといるはずだよ。探しに行きましょ」
「そうだな」
と、歩こうとすると右肩を抱えられるようにして支えられた。
赤い髪の毛が俺の腕ごと担ごうとしているのが視界に映る。
「えっと…………シーラ? 何してんの?」
「肩、貸してあげる」
「いや、これぐらい歩けるし……」
「貸してあげる」
「………………はい」
こんなところで固い意志を発揮されても困るけど……確かに楽なのは間違いない。
突発的な敵にだけ注意しておけば大丈夫か。
「………………」
「アイラ? どうした行こうぜ」
「う、うん。そうだね」
??
アイラと少し距離があるな。
あっ、そういうことか。
アイラとシーラはお互いに全然知らない人同士だし、なんならアイラに至っては攻撃されてるからな。
苦手意識を持っていても仕方がない。
ここはやはり俺が仲を取り持つしかないようだな。
これから同じパーティを組むのに壁があったら嫌だもんな。
よし。
「シーラ、お前が気を失ってる間に面倒を見てくれたのが、こっちにいるアーネスト…………まぁアイラだ」
「雑! 人の名前雑!」
「ん…………あの時はごめんなさい」
「えっ、あっ、全然大丈夫だよ! 闇魔法掛けられてたんだよね。シーラさんこそ大丈夫だった?」
「ん…………」
「…………」
………………。
会話終了。
相変わらず口下手なんだよなぁこの子は。
仕方ない。
俺がさらに助け舟を出してやるか。
「シーラはレッカ族って言う種族で、炎魔法を得意にしてるんだよ」
「えっ、レッカ族!?」
「やっぱり魔族では有名なのか?」
「そりゃそうよ。焔のレッカ族って言えば、私達蒼のシルヴァード族と同じくらい有名なんだから」
はい出た。
久しぶりに出たよ、アイラの種族自慢。
シルヴァード族なんてアクエリア大陸で、アイラの口からしか聞いたことないからね。
自尊心が高い種族だとは言ってたけど、その辺りはアイラも根っこの部分にあるんだよなぁ。
「でも数が少なくて絶滅寸前なんてことも聞いたことあるけど、何でそんな人とヤシロが一緒にいるの?」
「それについては谷よりも深〜い理由が…………」
「ミナトは私のご主人様だから」
OH…………。
深〜い罠に足を取られた気持ちだよ。
見たまえ、アイラのあの目を。
俺の評価が知らぬ間に大暴落よ。
だけど一つ言わせてくれ。
「アイラ、そんな引いたような目してるけど、お前も俺のこと首輪で繋いで興奮してたよな」
「ぎくっ」
「俺の方は紛れもなく勘違いだが、お前のアレは間違いなく本気だったよな」
「そ、そんなわけないじゃん」
「目が泳ぎまくってんぞ」
アンダーグラウンドがあるゲヴィッター属国での事を俺は忘れないからな。
「そ、それはともかくとして! シーラさんとヤシロの関係性はどういうこと!?」
話を逸らしたな。
「シーラが奴隷として売られてたから、俺が買い取っただけだよ」
「やらしい目的で……?」
「違うわ!!」
「ミナトは私にご飯を与えて太らせてから食べようと…………」
「やっぱり女の子を食べ物にしてるんだ……!」
「シーラの言ってる意味と変わってんじゃねーか! 俺ってそんなに獣に見える!?」
「どちらかといえば」
ショックだよ。
こんなに紳士である俺を獣と思ってるとか、ミナトショックだよ。
「シーラさん気を付けてね。ヤシロは狼だったんだよ」
「狼……? それより私……シーラ」
「?? 知ってるよ」
「シーラサンじゃない……シーラ」
「あっ、なるほど。じゃあよろしくねシーラ!」
「ん…………アイラ」
…………へへ。
二人が仲良くなったなら、俺が獣呼ばわりされることぐらい良いってことよ。
へへ…………ぐすん。




