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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
アクエリア大陸 剣聖編

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204/217

元勇者の元仲間

【ドット・グリゼル】


「敵が引いていく……?」


 上級魔人を倒した後、生き残った兵を連れて戦闘中の区域に加勢に出ていた。

 裏切りの兵が出始めたことから現場は想像以上の混乱を迎えていたが、突然敵が引き始めたことにより事態は収束へと向かっていた。


 敵が話していた内容が少し聞こえたが、どうやら敵の指揮官が討伐されたことでやむなく撤退を決めたようだった。

 裏切りの兵共々、一目散に門に向かって逃げている。

 一部は自暴自棄になったのか、尚も向かってくる者もいたが所詮は統率の取れない有象無象。

 我々の敵ではない。


「逃げる者を討ち漏らすな! 我が国を裏切る行為、万死に値する! オトシマエはつけさせろ!」


 この戦い、上級魔人を討伐できたことが何よりも大きい。

 中級魔人もいたようだが、五天羅指揮の下、無事に討伐が出来たという報告も受けている。


 魔族共め。

 我が軍事国家を侮り過ぎたようだな。

 被害は確かに小さくはないが、かつてないほどの侵攻に対してこの成果であれば防衛に成功したと言えるだろう。

 この経験は財産だぞ。


 だがしかし、この戦いはまだ終わりではない。

 これが敵の策かもしれないということも念頭に置きながら対処せねばなるまい。


「ドット龍将! 第1交駆隊、第2交駆隊、第5交駆隊の地方警備に当たっていた部隊も間もなく本国に到着するとのことです!」

「よし。国の外側に配置させ、逃げ出した魔族を討伐させろ。『裏』に流れる裏切り者が多くいることも伝達するんだ」

「了解!」


 地方の部隊にも裏切り者がいることを考慮すれば、国内に入れるのは得策とは言えない。

 改めて調査を行う必要があるだろう。

 それまで外周に配置しておく。


 中央に敵が入り込んだという情報は流れてこないが、前線が落ち着いた以上、中央に下がることも考えねば。

 国王の側にはハボックが控えているはずだが、奴もまた信用を失っている身。

 フレニアルも私と同じく前線で戦っているはずのため、私が一度戻った方が良いか。


「ラセツ、この場の指揮はお前に任せる」

「了解しました。龍将はどちらに?」

「王城へ状況報告も兼ねて戻る。何かあれば伝達を飛ばせ」

「了解、道中敵が潜んでいるかもしれないため、数人は連れて行かれますよう。お気を付けて」


 私は新世大隊のメンバーを5人連れ、城へと戻った。

 その途中、家の安否が気になったが、軍のトップたるもの一個人の意思は消し去った。

 アリスには有事の際にどうすればいいのかは伝えてある。


 今は妻を信じようではないか。


 道中では下級魔人と何体か出会うことはあったが、魔者とは一度も会うことはなく、何とか処理することができた。


 中央へ来てもそれは変わらなかった。


 前線と比べて街の被害はほとんどなく、戦闘音も全く聞こえない。

 おそらく魔族は中心部まで来ることはなかったのだろう。


 ともすれば安全だな。


 城の警備に当たっている者達に確認してみたが、やはりそれらしき魔族は全く見ていないようだ。

 城の警備に当たっているのは特に信頼の厚い者達であるため、裏切りの可能性も少ない。


 私達はそのまま城内へと入り、ハボックがいるであろう最上階の王室から一つ下がった龍将室へと向かった。

 国王は有事の際は龍将室へと避難し、近衛兵数名、並びに龍将と共に隠れることになる。


 異変に気付いたのは上へと登っている途中だった。


「…………静か過ぎるな」


 多くが外へ出払っているのは分かる。

 だが、警備している人間を上の階層で全く見かけない。


 使用人達は地下へと避難しているはずだが、城内警備兵までいないのはおかしい。


「龍将……これは……?」

「分からぬ……。敵が忍び込んだとしても争った形跡がない……」


 私達は警戒しつつ階段を登った。


 龍将室がある階まで来たところで、その理由が判明した。


「うっ!」

「こ、これは……!!」


 血の海。


 一面に死体が転がり、真っ赤に染められた廊下が目に飛び込んで来た。

 まさに地獄絵図。


「な……何故だ! どうしてこんな事に……!」

「龍将! 国王陛下は!?」

「確認するぞ!!」


 私達は死体を避けるように、バシャバシャと血溜まりを進んだ。

 まだ乾ききっていない。

 敵がまだいるかもしれない。


「開けるぞ……」


 龍将室の前へと着いた私はドアノブに手を掛けた。

 そして勢い良く開ける。


「陛下!! ーーーッッッ!!!!」


 衝撃的な光景だった。

 廊下ではあれほど死体が転がっていたが、部屋の中はほぼ綺麗な状況だった。


 ほぼ。


 一番奥の壁際、ここには血がビッシリと飛び散り、一人の男が死んでいた。


「ハボック……!」


 ハボックが十字に斬りつけられ、壁に寄りかかるようにして生き絶えていた。


「龍将……! この血…………2代目勇者の『勇者の証』と同じマークじゃないですか……?」


 言われて気付いた。

 ハボックの後ろに散っていた血は縦に二本、2代目勇者の『勇者の証』と同じIIの形となっていた。


「ハボックは十字に切られているはずなのに……背後には縦二本の線……これは……!」

「龍将! 国王陛下がこちらに!!」

「なにっ!?」


 見ると部屋の隅にある机の陰に、国王が震えながらうずくまっているのが確認できた。


 15代目ミラージュ王国国王フローズン・ミラージュ。

 すぐさま国王の元に走り寄り、安否を確認したが外傷等は無いのが確認できた。


「陛下! 無事で何よりです!」

「ド……ドットか……?」

「一体何があったのですか!?」


 おおよそ一国の王とは思えぬほどの怯え方。

 こんな国王は初めて見た。


「…………フレニアルだ」

「フレニアル?」

「奴が裏切ってハボックを殺したのだ!!」

「なっ…………!!」


 国王から聞いた話はこうだ。


 ハボックと共に龍将室で待機をしていたが、突然入り口の方に城内の近衛兵達が集まり、何事かとハボックが聞いたところ、龍将フレニアルに集まるように呼ばれたそうだ。

 指示の意図が理解出来ず解散させようとしたハボックだったが、そこへ現れたフレニアルが瞬く間に近衛兵達を殺し始めた。

 戸惑い、準備もしていなかった近衛兵達は次々と殺され、ハボックは国王を部屋の中へ押し戻し、フレニアルと対峙するために距離をとった。


 そしてすぐに部屋の扉がゆっくり開き、返り血に塗れたフレニアルが入ってきた。


 さほど大きくない部屋の一室で同じ実力同士の剣士と魔術師。

 どちらが有利なのかは明白だった。


 抵抗も虚しく、国王を守りつつ小さな魔法しか使えないハボックはフレニアルに敗北した。


「つまり奴も『裏』に染められていた裏切り者だったというわけか……! しかし何故陛下には手を出さなかったのか……」

「彼女の目的はハボックだけのようだった……。『戦況を見ても剣聖はここへ来れないだろうから、私が仇を討っておいてやろう』と言っていたからな……。私には目もくれずここから出て行ったよ」


 剣聖…………。

 2代目勇者と同じ『裏』に属していると噂の、元星宝三龍将ツォルク。


 ここに2代目勇者の刻印を残していったということは、「私は『裏』の人間だ」と言い表していることに他ならない。

 正に宣戦布告だ。


 新旧の星宝三龍将どちらともが『裏』に流れたとあっては、連合国からの追求は免れなくなるだろう。


「フレニアルめ……! なぜ『裏』などに寝返った……!」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーー



「なんて、ドットは思っているだろうな」


 フレニアルは国が見渡せる城壁の上にいた。

 既に魔族が撤退し始めていることから剣聖、並びに魔者側の指揮官がやられたことが知り伺えた。


「私は何も今の今日裏切ったわけじゃない。私がガルム様に仕えていたのはもっと前から」


 小さいころの話。

 アクエリア大陸の小さな村出身の彼女は、村が魔物の大群に襲われ死にかけた時、たまたま近くにいた2代目勇者一行に助けられた。

 それから彼女はガルムを慕い、ガルムと共に旅をし、ガルムから剣術を学んだ。


 しかし、魔王リネンとの決戦時、彼女は魔王リネンの使徒と戦っていたためにガルムが魔王との戦いの後どこに行ったのか分からなかった。

 嘆き、悲しんだが、彼女はそれでもいずれガルムが現れることを信じ、ミラージュ王国で己の技を磨き、気付けば星宝三龍将となっていた。


 そして今から一年前、ガルムが彼女の元へと現れた。

「チームを作るから協力して欲しい」と言われ、彼女は二つ返事でOKを出した。


 慕っていた勇者様が生きていた。

 これに勝る感動を未だにフレニアルは知らない。

 ガルムの言うことであれば例えそれが間違っていることだとしても、考えることなく実行する。

 彼女の生き甲斐はそれだけとなっていた。


 必要とされるまではミラージュ王国にいて欲しいと言われ、今日までずっと待ってきた。


 剣聖の手助けをして、僕の所へ戻ってきてくれと言われたフレニアルはまるでプロポーズを受けた女の子のように喜び、今まで過ごしてきた仲間を斬り捨てることに何の躊躇いもなかった。


 そうして五天羅を殺し、近衛兵を殺し、ハボックを殺した。


「結局剣聖は死んでしまったようだし、私がハボックを殺しておいたのは間違いなかったようね」


 フレニアルは外壁を下り、ミラージュ王国のさらに国外へと向かった。

 その途中で交駆隊が残党狩りを行なっているのが見えたが、誰もフレニアルが裏切り者だとは思わない。

 思うわけがない。


 そのまま素通りし、さらに遠くへと向かった。


【怪童】のメンバーとの待ち合わせ場所。

 そこには既に一人の男がいた。


「ん? 想定よりずっと早いな。もしかして作戦は失敗か? 『緋龍将ひりゅうしょう』」

「恐らく剣聖が死んだ。魔族ももう撤退してるよ。貴方の方が来るのが早いんじゃないの? 『空ノ神(からのしん)』」

「遅れるよりかはいいだろ。それにしても剣聖が死んだか…………。ガルムの中でこれは想定通りなのかねぇ」

「ガルム様のやることに文句が?」

「ねーよ、ガルム信者め。それじゃあ俺らの拠点に向かうとするか。遠征に出ていた奴らはお前も含めて戻ってきているぞ」


 フレニアルはレインフォースに付いて【怪童】の拠点へと向かった。

 いずれ来る戦いのため?

 いや、ただただ愛する人へ会うために。

彼女の着る服には常に中央に縦二本の白線が入っており、2代目勇者の信者であることを本人は隠してるつもりはありませんでした。

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