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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
アクエリア大陸 剣聖編

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203/217

背中を預ける

「上級魔人はそのまま上級魔人に当たらせる。シーラは魔者の相手を頼む」

「分かった」


 俺は足に刺さっていた矢の先端を切り落とし、引き抜いた。

 痛みが無くなるわけではないけど、心なしか和らいだ気もする。


「応援が来る可能性については加味していなかった。デザイア、あの女を殺れるか?」

「余裕ですよ! まだまだ魔力も残ってますし、人間が一人増えたぐらいで!」

「ではあの炎を消せ。その後は任せる」

「了解でさ! デスウォーター!」


 黒く濁った泥のような液体が魔者から放たれ、俺達の間を隔てていた炎が鎮火された。


 それを皮切りにフォルゲートが速度を上げて斬りかかってき、上級魔人も動き始めた。


「かかって来い! 神剣流六の剣技『神裁断』!」


 剣を横に振りかぶる形に持ち替えた。

 横に薙ぐ防御不可の一閃。


「その技は過去にも受けたことがある! 我の肉体とどちらが頑丈か試してみるか!?」


 そう言いながらノーガードで突っ込んでくるフォルゲート。


 俺の中に迷いが生じた。

 このまま一撃を食らわせたところで倒すことができなければ、俺は奴の攻撃をもろに受けてしまうことになる。


「くっ!」


 フォルゲートが斧を振りかぶってきた。

 俺は寸前のところで攻撃をやめ、後ろに飛んでかわした。

 地面が抉れ、風圧で飛ばされそうになる。


「かわしたか……。だが、結局技は出さなかったようだな。懸命な判断だ」

「なにも俺が使えるのはこれだけじゃないからな」

「ふむ……。ちなみにだが、その技を受けたことがあるというのは嘘だ」

「なっ!?」

「ぬんっ!!」


 振り下ろした斧を今度は振り上げてきた。

 圧と共に石飛礫が飛んでくる。


「見たことがあっただけだ!」


 さらに距離を詰めて斧を振ってくる。

 俺はそれを剣で軽く当てつつ弾きながら耐え凌いでいた。

 面と向かって打ち合えば剣が折れてしまいそうだったからだ。


 だがこのままではジリ貧だ。

 かといってコイツの斧を振るスピードは速く、隙を見つけての一撃を入れられない。


(コイツの言葉に惑わされてはダメだ!)


 戦いの最中でも平然と姑息な嘘をつく。

 これが上級魔人との違いか。

 単純な戦闘能力だけでなく、勝つための手段を用いてくる戦い慣れた敵。

 普通に戦えば上級魔人の方が強いのは確かだが、俺はフェイントを用いてくるフォルゲートの方がよっぽど戦いにくかった。


 速さでは優っているはずなのに手が出せない。

 攻撃は最大の防御を体現されている。


「我は第八師武! その強さ、とくと身に刻むがいい!」

「ぐっ、この、調子に、乗るな!」


 攻撃を防いだと同時に、相手の脇腹に蹴りを入れた。

『拳闘獅子』に教えてもらった武闘術。

 付け焼き刃の大した攻撃ではないけど、ガルムの恩恵で身体能力の上がった俺の一撃なら多少は効くはずだ!


やわいな、下級魔人の方が効いたぞ。蹴りとはこうやるのだ」


 突然視覚外から蹴りが飛んできた。

 俺は咄嗟に剣を盾にしてガードすることができたが、そのまま強い衝撃と共に吹っ飛ばされてしまった。


「がっ!!」


 デカイ図体でムチのような蹴り。

 この強さでこいつは使徒じゃないのかよ……!


「片足が潰れているとはいえ、貴公はその程度であったか。番犬の誇張表現のようだな」

「くそっ……! 魔力が無いと俺はこんなにも弱いなんて………………ん?」


 吹っ飛ばされた事で、剣聖の亡骸が近くにあった。

 俺はそこに落ちていたある物を見つけ、思い付く。

 奴に勝つにはこれを使うしかないと。


 そして、周囲を確認することで俺は勝機を見出した。


 俺はすぐさまそれを鞘と一緒に拾い、立ち上がった。


「…………何だそれは?」

「これは……剣聖の遺産だ。戦利品として俺が使わせてもらう」


 刀身が長く、限りなく薄い剣。

 持ち手のところにこの世界の言葉で『とおる』と書いてある。

 俺は雷鳥ととおるを鞘に納め、とおるのみを居合いの形に構えた。


「神剣流四の剣技『兵城神へいじょうしん』」


 居合い抜きの剣技だが、待つのではなく自ら動いて相手を間合いに入れる剣技。

 ふぅーと息を吐いて心を鎮める。

 俺が意識するのは一瞬の振りのみ。

 足運びは無意識に行えるほど訓練してきた。


「慣れない武器を使うのは愚策だな。我に付け焼き刃は通じぬ」


 その言葉に反応することなく、俺は動き出した。

 剣聖が指導してくれていた時に、この剣の間合いは嫌というほど見た。

 どの距離で間合いになるのかは把握している。

奴の攻撃の間合いの外から繰り出す事が出来るはずだ。


 振るときは決してブレずに、全ての太刀が神裁断と同じになるように振る。

 できなければ折れてしまうだろう。

 それ程までに薄く、扱いづらい。


 フォルゲートまであと30m。


「知らないようだが、我は魔法も使えるのだぞ」


 ここにきてフォルゲートが炎を放ってきた。

 これまで一度も使ってこなかった技。

 この距離、躱すとしたら上しかないが、恐らく上に跳べばフォルゲートが斧を構えているだろう。

 そのまま真っ二つだ。


 だから俺はこのまま突き進んだ。


 炎魔法が効かないとかそういうことじゃない。

 間違いなく食らえば重傷だし、奴に勝つことはできなくなる。


 でも俺には届かない。

 なぜなら俺は、この炎が防がれると信じているから。


 ゴウッ!


 右方向から別の炎がフォルゲートの炎を呑み込み左へと流れ、俺の視界が開けた。


 さっき剣を拾った時に見えていた。

 シーラが魔者を倒していたところを。


「なっ! この炎は…………! デザイアアアアアアア!!!」

「終わりだああああああ!!!」


 ヒュンッと風を切る音だけがした。

 俺自身にも何かを切った感触はない。

 まるで虚空を切っただけのような、そんな一閃。


「これは…………何も起きてはおらぬ。見せかけだけかヤシロミナト! 死ね!」


 フォルゲートが斧を振りかぶった瞬間、上半身がぐらりと揺らぎ、後ろへ滑るようにズレ落ちた。


「ば……バカな……。この我が……」

「お前の敗因は、すぐに嘘だとネタバラシしたことだよ」


 もし過去に六の剣技を受けたことを嘘だとバラされなければ、四の剣技を使おうとは思わなかっただろう。

 結局のところ、他に上級魔人を持っていたと言うのも嘘だったんだろう。

 まぁいずれにしてもシーラが魔者を倒した時点で2対1になっていたし、負けはなかっただろうけどな。


 そして予想通りというか、またしても上級魔人は相打ちとなって消滅していた。


「やったねミナト」


 そう言って走り寄ってくるシーラ。


「ああ。ナイスタイミングだったよ。シーラならどうにかしてくれると思ったぜ」


 そう言って頭を撫でた。

 久しぶりの感覚。

 背丈が近いせいか、少々撫でにくくはあるが。


 でもシーラはそのまま俯いたままで、あまり嬉しそうではなかった。

 距離感間違えたかな?


「シーラ?」

「…………私、ミナトに酷いことをいっぱい……」


 ああ、そのことか。

 闇魔法で操られていた時のことをシーラは覚えていたんだ。


「事情なら聞いたよ。お前は闇魔法で操られていたんだよな」

「うん…………」

「だったら気にすることなんてないよ。俺はお前が無事でいてくれた事が本当に嬉しいんだ」

「うん…………うん…………」

「俺の方こそゴメンな。絶対に守るって言っておきながら、お前を一人にさせて」

「ミナト…………」

「今度こそ約束だ。俺はどこにも行かないし、ずっとお前の側にいる」

「私も…………私も約束するよ……! うええええん」


 そのまま俺の胸元に顔を埋めてシーラは泣き出してしまった。

 誰かに大事に思ってもらうというのは、これほど大切なことなんだと改めて実感した。


 俺はもう二度と、この子を失わない。


「はぁ……はぁ……やっと追いついたかと思えば…………なにシーラさんを泣かせてるのヤシロ!!」

「げっ! アイラ」

「げって何よ、げって! シーラさんが目を覚ましたかと思ったら急に走り出しちゃって、凄く焦ったんだからね! って…………ヤシロ大丈夫?」


 アイラが俺のボロボロの姿に気付き、心配そうな表情をした。


「実のところ、大丈夫じゃない」

「えっ!?」

「ちょっと…………後頼むわ」

「ええっ!?」


 そのまま俺はシーラと一緒に後ろに倒れた。


「あ〜…………疲れた」

「うえええええん! ミナト〜!」

「ちょっ……どうすればいいのよ〜!」

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