英雄と呼ばれた少年1
その文献の最初のページに記されていたのは、『彼が初めて現れたのは、シャンドラ王国』だった。
つまり、英雄と呼ばれた少年の物語はこのシャンドラ王国から始まっていることを意味しているのだ。
さらにその文献の『シャンドラ王国』の後に記されていたのは人の名前。
この国においてかなりの知名度を誇る人物、『フロイライン・アッシュガード』。
彼が少年と出会った人物として記されていた。
現在彼は王国護衛騎士団最高顧問として、一線を退きながらも兵の育成に力を注いでいる。
私は何とかして彼とアポイントメントをとり、取材を行う約束を取り付けることができた。
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「ヤシロミナト…………。何年も前にそんな少年がいましたね。確か異世界から来たとかなんとかで、当時の国王の命で手合わせを行いました。その時私は、自分で言うのもなんですが国の兵士の中で一番腕がたちました。こんな胡散臭い少年を相手に、長々と仕合をするなんて馬鹿げてると。だから少年をビビらす意味でも真剣でやろうと提案したのですが…………彼は一切動じることなく、受けてたった」
「刃を交えて直ぐに分かりましたよ。この少年は、異世界から召喚されたということの真偽はともかく、その実力に関しては本物であると。私は何年も剣技を鍛えてきて、マスター級の炎魔法まで使用することができたというのに、彼には全く通用しなかった。」
「ハッキリ言って化け物でしたね。一太刀浴びせようとすると、瞬く間に返される。彼に剣を当てられるイメージが湧かなかった。そんな感覚は3代目勇者グリムと剣を交えたときだけでした。もちろん剣術の流派は全然違いますが。3代目勇者は正統派の神剣流ですからね。ただ、悲しいことにその素性が分からなかったがために、国から追われる身となってしまっていた。タイミング悪く、シャンドラ王国で異世界から召喚した人間が2人いたのが良くなかったのでしょうね」
「国を追われるようにして出て行った彼は、本来であれば指名手配という形を取られていたのでしょうが、運が良かったのか悪かったのか、その後直ぐにこの国に魔王の軍団が奇襲をかけてきたことにより、彼のことは国の誰しもが忘れてしまったよ」
「…………久しぶりに聞いたけど、彼は今どこにいるのだろうか。3代目勇者グリムにも匹敵する力を持っていた彼が、私たちに味方してくれていれば、さらに早く魔王を倒すことができていたんだろうか。」
「もし彼に会うことがあったら伝えておいてもらえませんか? 『国が君を裏切るような事をしてすまなかった』と。まぁ平和になった今だからこそ思えることだけどね」
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フロイライン・アッシュガード氏に聞いたことは、全て新しいノートに記した。
簡易にしか書かれていないこの文献を、私が正しく補筆し、完成させようと思っているからだ。
そして、初手からかなりの情報量を手に入れることができた。
このヤシロミナトという少年は確実にこの世界におり、当時全盛期であった最高顧問からも化け物と思われるほどの人物だった。
さらに、この少年は異世界から来たという話も聞くことができた。
こんなにも密な存在である彼はどうして世間にはでてきていないのか?
私の興味は増していく一方だ。
私は次に彼が向かったページを開く………………。




