食事会
「見苦しいところを見せてすまなかった」
グリゼル家が用意してくれたご飯を食べながら、ドットが頭を下げた。
本当に見苦しかったよ。
「まぁ家庭にも色々ありますからね」
「こんなはずじゃなかったのに……」
「今日のお肉はおいしいね!」
フェリスはぶつぶつ独り言を言い、オーリスは美味しそうに謎肉を頬張っていた。
マイペース過ぎる。
「ところでフェリス。勇者様の所へはいつ頃出発するんだ?」
「7日後を目安に考えてます」
「噂に聞くと、勇者様は魔王シルバースターを討伐したようだな」
「そうですね。だからいち早く集合しなければならないんです」
シャッタード都市を陣取っていた魔王を、三代目勇者はどうやって討伐したんだろうか。
正攻法で正面切って討伐したと聞いたけど、フェリス以外の仲間は既に再集合しているのかな。
「ところで、ヤシロ君とアイラ君はオーリスを助けてくれたようだが、魔物は何だったのかね?」
「……なんて蜂だっけ?」
「ロイヤルキラービーだよ」
ああ、そうそうそれそれ。
「A級指定の魔物か……! A級の魔物を倒すということは、それなりに実力があると見て良さそうだね」
まぁそれほどでも。
ワンパンでしたよワンパン。
「当たり前ですよお父さん。なにせヤシロ君は、魔王グロスクロウと戦って生き残ってるんですから」
「なに!? 本当か!?」
「あらあら凄いですね〜」
「ヤシロさん! 魔王と戦ってるんですか!?」
食い付きが凄い。
あんまりこういう反応取られたことがないから、少し照れるな。
「死にかけましたけどね。そこをフェリスさん達に助けてもらったんです」
「それでも魔王と接触をして生き延びたという話は、2代目と3代目勇者様達以外では聞いたことがない。初代ですら不可能だったわけだからな。君は今、討伐ギルドに属しているのか?」
一応そういうことになるのかな。
A級討伐者って籍を置いてることになるし。
アイラは入ってないけどね。
「そうなりますね」
「良かったらウチの軍に入らないか?」
まさかの勧誘!
いやぁ流石に軍に所属するのはちょっと……。
でもこれ星宝三龍将の人からの直接スカウトなんだよな。
普通だったらあり得ないことだよ。
「旅の身なものでちょっと……」
「そうですよ。いくらなんでも突然過ぎます」
「しかしだな……。今は魔王イズナと揉めている問題で、この辺りにも魔物が増えてきている。少しでも実力のある人間が求められている。この前までA級指定の魔物なんていなかったんだぞ」
「それはそうですけど……」
やっぱり魔物が増えてるのは、魔王イズナ討伐のせいだったのか。
舗装された道にあんな化け物みたいな蜂が出てたら危なくてしょうがないよ。
「今、うちには短期でも参加できる『新世大隊』というものがある。ここに所属していれば、短い間に安定した収入が得られるぞ?」
収入は別に求めてないんだよね。
「実力が伴わないとダメなんじゃないですか?」
「天才と謳われる娘が、実力は本物だと言っているんだ。文句はないだろう」
出た。
娘絶対主義。
あまり過信し過ぎると、そのうち騙されるぞ。
「う〜ん……」
「見学していくだけでもどうだ? もちろんアイラ君も来てもらって構わない。魔族が軍に入ることに反発する人間もいるが、それを通すのは私の仕事だ」
かっこいい。
娘の前だとデレデレアホおじさんになっちゃうけど、仕事の話になると見た目通りだ。
「私は別に大丈夫だよ?」
「まぁ…………せっかくですし見学だけなら」
「そう言ってくれると思ったよ」
軍に入るつもりは毛頭ない。
俺はサンクリッド大陸に戻って、シーラとゼロを探さなければならないんだから。
でも、世界のトップである軍事国家がどういう戦い方をしているのか、どのようにして魔族と均衡を保っているのかは気になる。
少し齧っていくのもアリだと思ったんだ。
「ヤシロ君、アイラさんごめんね? お父さんが無理矢理お願いしたみたいで……」
「いやいや、勉強になるかもしれないので、全然大丈夫です」
「おかわり!」
気付くとオーリスがご飯を食べ切っていて、さらにもう一杯追加を頼んでいた。
やっぱりマイペースだよこの子。
「それにしてもヤシロ君、結構男前よね〜」
えっ、まじで?
俺そんなん初めて言われたんだけど。
「フェリスもそう思うわよね〜」
「……まぁ討伐者として場数は踏んでいると思いますし、顔つきはしっかりしていますね」
「凄い嬉しいんですけど。アイラ聞いた? 俺、男前なんだって」
「そうなの? 初めて知ったよ」
「おい!!」
「でも残念ね〜。フェリスにはもう心に決めた人がいるから……」
「ち、ちょっとお母さん! そんな人いませんってば……!」
とか言いながらもテレテレした表情を見せるフェリス。
たぶんアレだな。
三代目勇者のことだな。
「そんなこと言って〜好きなんでしょ〜?」
「違いますって〜」
「ナイルゼン・ベール君!」
「は?」
一瞬にしてフェリスの顔が般若に変わった。
百面相かな?
「あら? 違かったけ〜?」
「全然違います。あいつだけはあり得ません」
なんて冷めた目なんだろう。
アレは虫を見る時の目だよ。
「フェリス! 私より強い奴でなければ交際は許さないぞ!」
「お父さんは黙ってて下さい」
父親にも冷たい一言。
凍えそうだよ。
「アイラ、ご飯頂こうか」
「そうね……」
その後俺達は食事を終え、一度グリゼル家を出て、宿屋に宿泊した。
次の日、再びグリゼル家を訪れ、ドットとフェリスについて行き王宮を訪れることとなった。
広大な王宮の敷地内に、軍の訓練機関があるそうだ。
城とはまた別の離れた位置にあるのはもちろんのこと。
ミラージュ王国の軍事見学会が始まった。




