表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
シャンドラ王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/217

シーラ・ライトナー

 武器屋を出て、近くの服屋に来た俺は適当に店員さんに服を見繕ってもらった。

 元々、オシャレなんかにも最低限しか気を遣わない俺は、元の世界でもマネキンが着ているものをセットで買うような男だ。

 10分で終わった。


 少し近くをふらついていると、気になる看板を見つけた。


『魔族屋オークション』


 魔族というと魔物とかのことだろうか。

 看板に書いてある名前から察するに…………要はペット的なアレか?

 魔物っていうのがどういう生き物なのか分からないけど、どこにもこういうのはあるんだな。

 ちょっと気になるし、覗いていくか。


 俺は入り口にいた男に案内してもらい、中へと入った。

 中は一言で言えばクラブのような雰囲気で、正面のステージに司会が立っていた。

 かなりの観客がいて、盛り上がっている。


「さあさあ! 今回ご紹介させて頂く商品も最後となりました! 本日お越し頂いた皆様の中にも、こちらをお目当で来られた方も御座いましょう!」


 どうやらこれで最後みたいだ。

 タイミング的に少し遅かったか?

 でも今回の主役とかいってるし、逆にタイミングがいいのか。


「最後に紹介させて頂きますのはコチラ! 何と魔者の子供でございます! 魔者は魔法を多用し、魔王の味方をする我々の敵! 寿命が長く、子供時代は短いと言われている魔者の子供を今回見事捕らえることができました!」

「魔物……イントネーションが変だな。あ、魔者の方か」


 司会が紹介する中、鎖に繋がれた生き物がステージの上に連れて来られる。

 いや、生き物なんて言い方は似つかわない。

 その見た目は俺たちと同じ人間のようで、女の子だ。

 小学生ぐらいでボロボロの布切れを見にまとい、真っ赤に燃えるような髪色をしているその子の目は、この世の全てを悲観していて、生気も何も失ってしまった、そんな目だった。

 トボトボと歩き、「早く歩け!」と鎖を引っ張られ、ステージの上で無様に倒れこんでしまう。


 なんだこりゃあ…………。

 胸糞悪い。


「成長してしまえば捕まえることが難しいとされる魔者! その中でも最強の火魔法を扱うと言われているレッカ族の子供です! 今なら魔法封じの指輪もつけましょう! さあー100万ドラから!」


 次々と観客がりを始める。

 200万、300万と価格が吊り上げられていく。

 その光景を見て俺は言い様も知らない不快感を覚える。

 ペットショップ的なものかと思って入ってみればそこは、漫画やアニメで見るような奴隷売買の場だった。


 同じようなものはもしかしたら元の世界でも存在していたのかもしれない。

 俺が知らない世界での話だったから、漫画で見てもここまで不快には思わなかったんだろう。

 どうせフィクションだから、と。

 実際にはそんなのないだろ、と。

 ここも人間が人間を奴隷にしているわけではなく、敵対する魔王の味方をしている魔族を奴隷にしている分、もしかしたら良心的なのかもしれない。


 ……………………良心的?


 魔者がどういう生き物なのか、俺はガルムから聞いただけで何も知りはしないが、少なくとも、俺の目の前でりにかけられている女の子は人間と同じだ。


 それも小学生ぐらいの小さな女の子。

 ボロボロの身体を見れば、どういう仕打ちを受けたのかは想像するにかたくない。

 それを目の色を変えて買おうとしているこいつら。

 この世界ではこれが普通なのかもしれないが、はっきり言って吐き気がする。

 この世界に来て初めてこんなに不快だと思ったよ。


 もしもこの世界に順応して、魔者がどういうものか知った後だとしたら、俺の価値観も変わっていたのかもしれないが。


 やっぱりいいことばかりじゃないな、どこの世界も。


「3000万ドラ! これ以上はおりませんか!? どうでしょうか!?」


 貴族風の男がドヤ顔をしながら立っていた。

 俺は腰巾着に手を掛けながら、ステージの方へと歩き出す。

 本当はこんな目立つことはしたくないんだが、俺の手持ちの結晶石がいくらになるのか分からないから仕方ない。


「他におりませんか!? でしたらこれで…………ん?」


 俺はステージの上へと飛び乗った。

 近くにいた警備員らしき人達が身構える。

 暴れたりなんかしないから安心してくれよ。

 客も、警備員も、司会の男も、貴族の男も、全ての目が俺へと向けられる。

 唯一見ないのは、赤髪の女の子だけだ。


「これでその子を俺に売ってくれ」


 俺は腰巾着の中からほんの数カケラの結晶石を取り出す。


「それは……結晶石でございますか……! しかしながら申し訳ありません。それだけではとても足りま──────」

「あー違う違う。こっちだよ」


 俺は腰巾着ごと司会の男の近くにあったテーブルにドンッ! と置いた。

 中から大小様々な結晶石が顔を覗かせ、客がオオッとどよめいた。


「こ……これは……」

「全部本物だよ。確認してもらっても構わない。これで足りるでしょ」


 司会の男は慌てたように裏から鑑定人らしき男を呼んできて、俺の持っていた結晶石を調べた。


「本物ですね…………全て」

「おお……おおお! こちらの方が持っておられたのは5000万ドラ以上あります! これ以上は御座いますか!?」


 会場内はシーンとする。

 先ほどドヤ顔で立っていた貴族風の男は憎々しげにこちらを見ていた。


 ごめん。

 そんなにあるとは俺も思わなかった。


「では! こちらの商品はこれにて落札です!」


 カーンカーンと、ベルのようなものが鳴らされ、客が次々と散っていった。

 俺は司会の男に促され、手続きを済ませる。


「おめでとうございます! では、こちらの商品は今から、え〜、こちらは何とお呼びになりますか……?」

「え? ああ、ヤシロです」


 俺は紙に八代 湊と日本語で書いてしまっていた。

 俺はこの世界の文字を読めても、向こうは読めないのか。

 武器屋でも日本語で書いちゃったよ。


「ヤシロ様のものです! お好きにお使い下さい! そしてこちらが魔法封じの指輪になりますので、この商品が魔法を覚えて使うようなことがありましたら商品におはめ下さい!」


 商品商品ってうるさいな。

 次商品って言ったら王族とのコネを使って脅すぞこの野郎。


 俺の前に死んだような目をした真っ赤な髪をした女の子が連れてこられた。

 首輪と鎖を外されるも、死んだような目は何一つとして変わらない。

 どうやったらこの子を元気づけられるか……。


 俺は女の子と外に出た。

 女の子の歩き方はぎこちなく、何かに支えられないと立っていられないような状況だった。

 俺は女の子の手を握り、姿勢を低くして目を見て話す。

どうしよう。

俺も小さい子供の扱いとか良く分からないんだけど。


「ん〜と……腹とか減ってる? 今からご飯食べようかなって思ってんだけど」

「………………ご飯?」


 お、反応ある。

 無言てわけじゃないのな。


「そう、ご飯。お腹空いたからそろそろ食べようかなって。君もお腹空いたでしょ?」

「……………………」


 そこは反応ないんかい。

 見るからにご飯とかまともに食べさせてもらえなさそうなんだけどなぁ…………。

 もしかして言い方が悪いんかな。

 今までの扱いから考えると、この子に決定権をゆだねるんじゃなくて…………。


「じゃあ今から飯食いに行くから、お前も食べろよ」

「…………! ………………はい」


 おお、返事した。

 でもこれ、いちいち命令すんの面倒だな。

 ちょっとずつでいいから意識改革行わないと自立できなさそうだ。


「そうだ。名前とかってあんの? 呼び方分からないから教えてよ」

「………………シーラ。」

「シーラだけ? フルネームとかある?」

「………………シーラ・ライトナー」

「ライトナーか…………。だったらシーラって呼んだ方がいいよな。俺は八代やしろみなと。よろしくな」

「………………ご主人様」


 八代湊ゆーたやん!

 どう聞き間違えたらご主人様になるんだよ!

 もしかしてそう言うように躾けられたのか?

 そりゃ本来は言われて悪い気はしないけど、こんなボロボロの女の子に言われても悲しくなるだけだよ。

 それにしても、勢いでこの子連れることになっちゃったけどどうしようマジで…………。

 城には連れて入れないよなぁ……。


 まぁいいや。

 とりあえずご飯を食べに行くか。


「それにしても、大金が1日で溶けたな…………」


 昨日までジャラジャラとあった、宝石と同じ価値をもつ結晶石が今では手元に3カケラだけだ。

 これだけでも1週間は過ごせる価値があると思うが、流石に勢いにまかせて浪費し過ぎた。


 まず最初に全部金に換金すれば良かったかな。

 計画なんて一切立てずに、感情のみで動くとこうなるといういい見本でございますよ。

 それよりも、この子をどうするかだよな…………。

 とりあえず服を新しく買ってご飯は食べさせてるけど……たぶん城には連れていけないだろ。


 どう見ても魔者の奴隷制が一般に認められているこの国で、国の象徴たる城に奴隷を連れていくなんて暴挙は許されないはずだ。


 そうするとどこかの宿屋に置いとくか……。

 あ、なんかこの言い方だと物みたいだな。

 どこかの宿に泊まらせておくか。

 それがいいよな。


 俺は運ばれてくる飯を必死に口にかき込むシーラを見て、そうするのがベストだと思った。

 こんな言い方はあまりしたくはないが、今解放してもすぐにまた捕まって、俺が払った大金の意味がなくなっちまうからな。

 いくら俺でもそれはガックリ来そうだし。

 だからもう少し自立できるまでは面倒みてやらないとな。

 それが買取主? としての責任でもあるし。


「うまいか?」


 俺の言葉にシーラはビクリと肩を震わせ、オドオドしながら遠慮がちに「…………うん」と答えた。

 まだまだ道のり的には険しそうだな。


 シーラがお腹いっぱいになったようなので、余った分は俺が食べ、3つしかない結晶石のかけらの一つを店員に渡す。

 まだお金に換金できてないから仕方ない。

 あとの2つは宿屋で、食事と宿代をセットにして、これで泊まれる分とでも指定して渡すようにするか。

 とりあえず日も暮れて来たので、シーラを連れて飯屋を出る。

 既に数時間一緒にいるが、シーラが自分から話してきたことはない。

 俺の呼びかけには一応応じるが、一言二言だけだ。


「シーラ、俺はこれからあそこにある大きな城に戻るからさ、お前は宿屋の部屋で一人で待っててくれよ」


 俺がそう言うと、シーラは何も言わず俺の服の裾をヒシッと掴んで首を横にフルフルと振っていた。

 おお? 意外とこの短時間でなんかなつかれたか? ちょっと感激。


「なに?」

「………………いや」

「なにが」

「………………一人」

「なんで」

「………………また連れてかれる」


 違った。

 怯えてるんだ。


 また連れてかれる…………やっぱりこの子はどっかから拉致られてきたのか。

 そんなこったろうとは思ったけどよ。

 でも俺も城に戻らないと心配されるだろうしなぁ。

 それに一人で居させることにも慣れさせないとダメだと思うし。

 ちょいと酷だけど、今回は突き放してみるか。


「宿屋にいりゃ大丈夫だろ。俺が宿屋の主人にも言っておくからさ、誰が泊まってるかはしゃべるなって」

「……やだ…………やだ……」


 シーラは少し涙目になりながら再度フルフルと首を横に振っている。

 なんだよこれ。

 俺の良心にクリティカルヒットするんだけど。

 すげー悲しい気持ちになるわ。


「もしお前が連れ去られるようなことがあれば、俺がこの国滅ぼしても探し出すから。な? また明日来るからさ、一人で待っててくれよ」


 まぁそんなことはもちろんできないけど。

 でも万に一つでも連れ去られるようなことがあれば、俺だって全財産失ったんだから、ただじゃ済まさないぜ。

 そこんところはガチよガチ。


「…………………………………………分かった」

「よし」


 俺がシーラの真っ赤な髪をわしゃわしゃと撫でた。

 体は少し震えていたが、それでも嫌な表情をしていないから、少しづつだけど早くも打ち解けてきたんかな。


 実は俺って子守が得意?

 弟や妹はいるけど歳の差あんまり離れてなかったからなぁ。


 その後俺は近くの宿屋に向かい、残りの結晶石2カケラを見せて泊まれる限りの日数分と飯代を借りた。

 2カケラでも一室を1週間借りることができるみたいだから良かった。


「じゃあなるべく部屋からは出るなよ。約束を破って外に出て連れ去られても知らんからな」


 シーラはコクコクと頷いた。

 よっぽどトラウマになってるのか、素直だな。


「それじゃあまた明日来るから。ゆっくり休めよなシーラ、おやすみ」

「………………おやすみご主人様」

「ミナトな」

「………………ミナト」

「なんだよ言えるじゃんか」


 一瞬、ミナト様と呼べ! とかいう邪な考えが浮かんだが、俺の良心がマッハで消しとばしてくれた。

 ありがとう良心マン!


 俺は宿屋を出て城に向かった。

 外はもう既に日が完全に落ちていたが、まだまだ人は賑わいを見せている。


 この1日で俺は手持ちの資金を全て使い切ってしまった。

 もう一回あの洞窟に行って結晶石取りまくってきたら億万長者じゃね!? とも思ったが、よく考えたらダンジョンまでの道のり全く覚えてないから無理だった。

 なので、資金面に関してはもう一つの可能性に懸けようかなと思ってる。

 それは、この国の王様に会って異世界から来たと認めてもらったら、勇者として魔王討伐の旅に出るから金をくれ! と乞食こじいてやるという乞食こじき戦法だ。


 勇者として送り出すんだったら、やっぱり資金の一つや二つくれないとさ、どこかのゲームみたいにヒノキの棒だけ渡して「おら世界救ってこいや」なんて外道なことしないと思うんだよね。

 だからこの数日、金稼ぎなんて一切やらない!

 飯も城で出してもらう!

 俺、お客様だから!


 そんな訳で資金面については解決したも同然なので、自然と足取り軽く城へと戻っていった俺だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ