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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
魔王シルバースター編

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「ベイルー! どうしたんだよ! 返事しろよ!」


 ボルザノクがいくら呼びかけようとも、ベイルに反応が無かった。

 目は虚ろで、生気を失った人形のように、ただそこに立ち尽くしている。


 ある程度予測ができてしまっている自分が嫌いだ……!

 突然いなくなったベイル、突然現れたかと思えば、爆散した奴隷の少年のような状態。



 〝彼の中にも爆弾があるんじゃないのか?〟



 そう考えざるを得ない。

 それだけの情報が揃いすぎている。


「ベイル…………?」

「ヤシロ、お前はどう思うよ」

「…………たぶんゼロが考えてることと同じだと思うぜ」

「どういうこと?」


 シーラは分かっていないが、ゼロは気付いていた。

 ミリとボルザノクは…………気付いているだろうが、気付かないフリをしているんだろう。


 俺だってそうしたいさ……!


「冗談はよしてくれよ……! こんな短時間で…………何かされるわけがないっすよね!? ベイルふざけるな!」

「今だったらその悪ふざけも許してあげるから! ベイル!」


 2人の声掛けに反応したのか、ベイルが首だけを動かし、ゆっくりとこちらを向く。


 目は変わらず死んだ魚のような目だ。

 だが涙を流している。

 静かにベイルは泣いている。


「……………………ごめん」


 蚊が鳴くような声で、それでもハッキリと俺達に聞こえるようにベイルが呟く。


 誰に対しての謝罪なのか、何に対しての謝罪なのか分からない。


「謝るな! 謝るぐらいなら死ぬな!」

「そうだよ! まだベイルは死なないよ! 3人でS級討伐隊になるんでしょ!」


 ボルザノクとミリが懇願するように呼びかけるが、誰もその場から動こうとしない。

 近づけばベイルが爆散する恐れがあるからだ。


 既に最悪の覚悟はしている。


「ゼロ……! どうにか出来ないのかよ……!」

「身体の内側から爆発するような魔法なんざ俺は聞いたことはねぇが…………あるとすれば魔王の固有スキルか、もしくは……」


 チラリとシーラを見る。

 シーラが何か関係していると……?


「…………レッカ族なら、爆発魔法を使ってそういう魔法を開発していても不思議じゃねぇ……。炎魔法を極めるレッカ族ならな」

「敵にシーラの同族がいると?」

「あくまで可能性の話だ。他にも俺が思いつかないような突拍子もない仕掛けかもしれねー」


 現状打つ手なし。

 結局はそういうことか……!

 俺の手札でどうにか出来ないのか!?


『獅子脅し』はダメだ。

 ベイルを撃ち抜いた所で何かが起きるわけじゃない。


『雷鳥』は論外。

 剣術でどうにかできる状況じゃない。


『避雷神』は…………これもダメ。

 身体の中の特定のものを弾くことはできない……!


 くそっ!

 そもそも爆発する原理が分からない以上、対処法が全く浮かばない!


「………………気をつけて………………奴は…………………すぐそこにいる」


 奴というのは誰だ!?

 魔王か!

 使徒か!


「ミリ………………ボルザノク………………ありがとう」

「そんな…………そんな遺言みたいな事を言うなぁ!」

「ベイル!!!」


 ベイルが笑ったように見えた。

 涙を流しながら笑っているように。


 その直後にベイルがこちらに向かって走り出した。

 フラフラとした足取りではなく、明確な意思をもって走り出す。

 そして、ベイルの体が発光し始める。


「く……そがああああああ!! ゼロ!!!」

「悪い…………」


 ゼロが風魔法を使い、奴隷の少年のときのようにベイルを吹き飛ばす。

 ベイルは突風により宙に浮き、反対方向へと吹っ飛んでいき、そしてーーーーーー。


 ドォォォォン!!!


 爆散した。


 ベイルを形成していた物体は飛び散り、ただの肉塊へと姿を変える。

 その凄惨たる光景は、俺達の心をも深く、深く抉り取り、癒えない傷を刻みつける。


 何日も一緒に過ごしてきた仲間が死んだ。


 それも、名誉ある死に方ではない。


 敵の人形として、自身の仲間もろとも道連れにする兵器として、死を迎えた。

 いくら死ぬ事を覚悟していたとは言え、これほど不名誉な死に方はない。


「う……うぇぇぇぇ」


 俺は井の中のものが込み上げ、そのまま無様に吐いてしまった。

 シーラが俺の背中をさする。


「がああああああああああ!!」


 ボルザノクは地面を激しく殴っている。

 抑えきれない感情を、どこにぶつければいいのか分からないといった感じだ。


「ベイル………………ベイル………………ベイル」


 ミリは壊れたテープレコーダーのように、ベイルの名前を呼び続けている。

 放心状態のその姿は、奴隷の少年やベイルと酷似しているが、決して似て非なるものだ。


「ミナト…………大丈夫?」


 シーラは意外と耐性が強いのかもしれない。

 最初に会った時から考えれば、シーラの子供っぽさも大分無くなってきた。

 俺が助けられることもしばしばだ。


 弱音は見せない見せないと思いながらも、大事な所で俺は潰れてしまう。


「無理……しなくていいよ?」

「…………ベイルがあんな目に遭ったんだ……。無理とかそういうのじゃなくて…………」


 視界の端に魔者の姿が見えた。

 こちらに気付き、魔法を使おうとしている。


 だから俺は『獅子脅し』を使って一撃、一撃で魔者の頭を撃ち抜いた。


 初めて魔者を殺した。


 だけど何も感じない。

 罪悪感なんて感じない。

 〝やられたからやり返しただけ〟そう思っただけだ。


「…………元々の考え方を変えていく」


 活人なんて考え方をしていれば、次に死ぬのは俺か……はたまたシーラか……。

 そんな事は許されない。

 殺られる前に殺れだ。

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