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心得

気が付けば、そこは草原だった。いや、100m位先は木が茂っていて、周囲をぐるっと木々に囲まれているから、正確には森の中の平地が正しいのかな。


う~~~ん、ここは何処だろう?…………こういう時は~~え~っと、まず…慌てず状況確認だよね。


……僕は河口 優斗(カワグチ ユウト)、高校2年生。現在状況整理の真っ最中。えっと学校から帰宅しようとして……、あっ、良かったぁ~、そばに居るね。まずは、一緒にいた女の子の無事を確認。

彼女は、水野 香奈(ミズノ カナ)ちゃん、僕の幼なじみで同じく高校2年生、……えっと…、その、ぼ、僕のカノジョで…す……。う~~未だに慣れないよぉ…。

駄目だ、駄目だ……、ここはしっかりしないと…。香奈ちゃんはまだ、ちょっと呆然としたままなので、しばらくはそっとしておいてあげよう。

直前までの記憶が確かなら、香奈ちゃんも一緒に帰る途中だったから二人ともこんな目に遭った、ってことだよね。

場所に見覚えはまったく無いけど、手足が拘束されてないし、周りに人も居ないから誘拐の線は薄いか。う~ん、生き物気配も感じないから取り合えず周囲は安全だね。


…………あ~~~、これは十中八九アレかなぁ~~。いや、UFO的なアブダクションもあるから可能性としては六四かなぁ~~。……はぁ…、流司の話は半分流してたけど、役に立つ時が来るとはねぇ。

え~っと、この次はどうすんだっけ?…あ、そうそう、ステータスの確認だったね。念じれば良いのかな?それとも呪文的な言葉を言うのかな?う~ん、ステータス出ろぉ~、ステータス…。あ、念じただけで出るな。

はい、これでアレであることが確定かな。ゲームの世界ってのもあるけど、前後の記憶的にそっちは薄いで良いか。


状況が一通り整理できたので、目の前に浮かんでるステータス画面に目を向けた。


--------------------


[名前]カワグチ ユウト

[種族] ヒューマン

[HP]150

[MP]450

[筋力]34

[耐久]40

[魔力]67

[精神力]110

[素早さ]75

[幸運]100

[称号] なし

[スキル]【鑑定】【解析】【収納空間】【物質創造】【MP自動回復】


--------------------


う~ん、数値は比較対象が無いと判らないから後で香奈ちゃんにも聞いてみるか・・・。鑑定と解析って何が違うんだろう?よし、鑑定から使って……。


「ユ、ユ、ユ、ユユユ、ユウ君!!!」


あ、香奈ちゃんが返ってきたみたいだね。


「ど、ど、ど!!」


「香奈ちゃん、落ち着いて!こういう時は深呼吸だよ。ほら、スーッ、ハーッ、スーッ、ハーッって。」


「い、いや、ここどこ~~~~!!!?何でこんなことになってるのぉおおおお!!!!!」


「だから、落ち着こうよ、ね。」


「無理よぉ~。何でそんなに落ち着いてられるの?さっきまで帰り道で、今何か広場で、でもブランコもすべり台も無いから公園じゃないし!!」


ロケーションという意味だけなら、大きな自然公園とかだったらこういう風景はあり得る気がするんだけどね。状況には合わないか。それと…。


「駄目だよ、あんまり大きな声出しちゃ。周りに熊とかいたらどうするの?」


「ヒッ…………………、く、熊居るの……ココ?」


「いや、今は少なくともいないよ。ココは結構視界が開けてるでしょ。ざっと見ても、目の付く所に動くものいないし…。」


ついでに言うと木々の間からこっちを見ている様な気配も無いね。うん、しばらくは大丈夫。


「じゃ、じゃあ…。」


「うん、前にも言ったけど、何がいるか分からない場所で大声は出さない、だね。動物によっては興奮してコッチに襲い掛かってくることもあるし。」


この場合、蜂が厄介なんだよね~。巣が地中にあると目視できないし、いざ襲い掛かってくると回避が難しいし…。


「……やっぱり、こういう時ユウ君頼りになるね。慣れてるのかな?」


「子どもの頃は香奈ちゃんもそうだったじゃない。そういや最近、"冒険だ~!!"ってならないね?」


「そ、そんなの小学校までの話だよぉ~。正直、おばさん達に海外に連れていってもらってから、本当に怖い状況って分かったし……。」


あら?うちの両親が招待した海外旅行が若干トラウマになってるみたいだね。流司と結衣ちゃんはそうでもなかったのに。


「ユイユイは兎も角、リュウくんは別だよぉ~。私もあの時は子どもだったから、今思うと考え無しだったけれど、それでも二人ともタフ過ぎだと思ったもん。」


そんなもんなのかな?まぁ、いいや。香奈ちゃんも落ち着いて来たみたいだし、本題に入ろうか。


「あのね、香奈ちゃん、落ち着いて聞いてね。僕達どうも異世界に来ちゃったみたいなんだ。」


「……??…………………??????…………えっえええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!」


響き渡る大音量。正直耳が痛いな。あっ、鳥が逃げてく。見た事ないな、あの鳥。


「香奈ちゃん、シーーーーッ!!」


「で、でも、だって、異世界、異世界って、何で……。…………どうして判るの?異世界に来たって。」


何か腑に落ちてないけど、無理やり飲み込んじゃったみたいだなぁ。フォローして上げないと。


「えっとね。流司が昔していたバカ話にね。異世界に転移した時の心得みたいな話があってね。」


「……プッ。リュウ君らしいね。」


お、ウケたみたいだね。良かった、良かった。


「まぁ、その中にね。魔法とかステータスとか見えたら、そこは異世界っていう確認方法があってね。」


「え?今魔法とか使えるの?」


「ううん、ステータス画面の方が見える。"ステータス出ろ~"って念じたら見えるよ。」


「ウソ……。………………!!!!!!!!!!!!み、見えるよ!!何か目の前に変な文字が浮かんでる。あ!確かにゲームに出てくる奴にそっくり!!」


「よし、香奈ちゃんも見えるってことはもう間違いないかな。」


僕だけが見えるっていう可能性もあったから少し心配だったんだよね。


「う~ん、何か書いてある事がすごいのかどうか、よく判んないね。」


やっぱり香奈ちゃんもそう思うよね。


「うん、それでね。流司が言ってたんだよ、"異世界に行った時にまずすべき事"って。今はそれに従ってみようと思ってね。」


何かマニュアル本にでもしてそうな気がするなぁ。見た目と中身は完全なオタクだしなぁ、アイツ。

先程から話上っている流司とは、彼は僕と香奈ちゃんの共通の幼なじみの鈴木 流司(スズキ リュウジ)(17)である。流司は180cmを超える長身を惜しみなく鍛えているので、一見高校生アスリートに見えるのだが、その中身は重度のオタクである。

もっとも彼に言わせると"本、漫画、ゲームやアニメの作品そのものが好きなだけで、グッズにまで手を出していないから重度じゃない"との事だが、月のお小遣いとバイト代の8割を費やしている時点で十分オタクだと思う。

さらに彼が言うには、高校生でオタクがあることがバレると狩りの対象になるので、隠密行動を心掛けないと駄目なんだそうだ。


傍から聞くと異常なんだけどね。本人はいたって本気な所が凄い。学校では、オタクに見えないように振る舞っているし、帰宅後の自由時間を100%趣味に使えるように授業だけで学年トップクラスの成績にしてる。

さらに万が一不良とかに絡まれたときのためにと空手と剣道の通信講座を続けている。後、見た目にも気を使っており、さわやか好青年を作り出そうとしている。実際、イケメンの部類に入ると思うし。

ただ、流司の家に行った時にその努力の片鱗を見て、正直その場で固まったよ。中々いないと思う。顔パック付けたまま、木刀で素振りし、なおかつアニメを観てる高校生って。

まぁ、そんな努力の甲斐もあってか、おそらく幼なじみの僕達以外で、校内に流司がオタクだと気付いている人はいないと思う。


一方で、隠している反動からなのか、僕と二人で遊んでる時は、かなり濃い話をしたがる。結構繰り返すから何となく覚えちゃったモノが幾つかあるんだ。

今僕が実践しているのは、そんな彼の妄想の産物の1つである"異世界転移時の五箇条"という訳だ。


その中身は、確かこうだ。


  1つ、まったく見覚えの無い場所に急に立っていたら、まずは冷静に周囲の安全確認と自分の頭をチェックすべし

  1つ、世界観は早めに掴むこと。建造物や風習、そして、自分の出来ることで把握すべし

  1つ、自分の能力は入念に確認すること。ただし、できるだけ人に見られない場所で行うべし

  1つ、衣食住と医療は早急に充足させるべし

  1つ、どんなに良い人に思えても軽々に信用しないこと。特に王様や神様を名乗る輩には注意すべし


最初の2つが状況確認。次の2つが当面の行動指針。最後の1つが全体的な心構え、ということらしい。海外旅行なんかでも使えそうだから結構頭に残ってたみたいだ。


この内、すでに1番目と2番目の半分くらいはもう終わっている。最初から結構大変だったけどね。

自分の記憶チェックを行う際には、誰かに聞かせるつもりでやった方が良いらしい。取り留めの無い言葉よりも、十分に整理した言葉で語る感じの方が、記憶の齟齬に引っかかり易いのだとか

流司は、異世界もので一人称の文体で書かれているものは、実は主人公が自身の考えを整理する面もあると力説していた。…単に作者の好みの話だと思うんだけどなぁ~。


世界観も何となくだけど掴めたね。周囲に建物は無いんだけど、ステータス画面を出すとか、今まで自分に出来なかったことが出来る以上、ここは異世界だ。少なくとも自分が元々いた世界じゃない。

おそらくステータスに魔力なんて項目がある位だから、魔法もあるんだろう。それ以上の情報はここから移動しないと得られないから…。


先に3つ目から片付けようかな。


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