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1日目 面白いと感じさせるために難しいんだ

「うおおお!やっと遊べるぞーー!」


 ついにMEにゲームをインストールすることが出来た。

 ここまでの道のりは、先日紅魔館からチルノさんの住処までこのシロモノを運んだ道より長かった。

 あぁ、長かった。


「ようやっとこの『東方紅魔郷』ってゲームを遊べるんですね」


 ここはチルノさんわたしの住処、妖怪の山の中にある掘っ立て小屋。

 妖精なんだからもっと神秘的なところに住みたかったのだが、背に腹は変えられない。

 しかし電気が通っているのは素晴らしく便利だ。おかげでPCも電話も使える。

 原理がどうしているのかは知らないが、たぶん某電力会社も幻想入りしたんだろう。


「じゃあ早速始めるぞ」


 そういってチルノさんはゲームフォルダを開き、アイコンをクリックした。

 いよいよ始まるのだ……。





「音でけええ!下げろ下げろ!」


「お、落ち着きましたね、画面に大きく東方紅魔郷と出ています。なんだかこんな当たり前なことで随分気持ちが動くというか、目が熱くなるというか……」


「涙はエンディングまで取っておくんだぞ、大ちゃん。さ、エンター押してっと、お、出た出た。startでいいんだよな?」


「ええ、あ、モード選択ですかeasy nomal……ああ難易度ですね、へぇこの段階で選ぶんだ」


「ん?何か変なのか」


「わたしが昔やっていたシューティングゲームは、オプション画面で設定していましたね」


「ふーん、最初はまあノーマルからでいいか」


「プレイヤー選択……あのチルノさんこの方って」


 赤と白の装束をまとった巫女さん……先の異変ではちょっかいかけたせいでボムぶんどられたっけ。


「あたいはこの前から知っていたぞ。でも今後この手のつっこみはナシとする、あたいはゲーム部分しか興味ないからな」


「それって楽しみ方狭めていませんか?」


「あたいは撃ったり避けたりボムったりしたいんだよ。あ、あいつもいる」


「じゃあ自機のタイプは2種類ですか」


「いや、御札ってか攻撃方法も2種類選べるから計4種類だな。こりゃ楽しめそうだ。それじゃ、こいつでいこう」


 魔理沙 魔の御札 「マジックミサイル」 「スターダストレヴァリエ」


「お、始まった」


 ゲームが始まり暫く見ていて、わたしはおおよそ思っていた通りのシューティングゲームだと理解した。

 十字キーによる8方向への自機移動、2ボタンによるショット、ボム。これだけだ。

 このいわゆるstgというゲームのジャンルは変わりばえしないなぁ。

 わたしが遊んでいた時代のゲームと少しも進歩していないのではないか、

 あのゲームだって他と比べてバタ臭い感じがあったのに……


「シンプルでいいなぁ、あたいが求めてたのはこういうのだよ」


 チルノさんが呟いた。

 そういうことなのだろうか、しかしそれでは新しいモノを作る意味はあるのか。

 心の中でチルノさんに疑問をもっている、どうしてだろう。

 どうしてこんなゲームにチルノさんはなにかを感じたんだろう。

 ゲームは滞りなく進行している、中ボスと思われるルーミアさんは出てきて暫く撃っていると、飽きたように帰ってしまった。

 次はボスとして戻ってくるのかな?

 そういえばどうしてわたしはstgに反感を持っているんだ。

 苦手意識を植え付けられたのかな、子供の頃に……


「うおお!」


 チルノさんが奇声をあげ、わたしは考え事を止めて画面を見た。


夜符「ナイトバード」


 画面が敵の弾で埋まっていた。

 ボスと思われるルーミアさんが腕をなぎ払うと10発は発射している、それが2回。

 間隔も置いているが撃った弾が消えないうちにもまた新たに発射している。

 違和感、そうだ敵の弾速だ。

 わたしの記憶している時代のゲームとは弾の速度が違う、だから画面が弾で埋まってしまうのだ。

 弾幕ってこのことなのか。


「ううーこんなのどうやって避けるん……あれ、当たってない」


 また違和感がわく、今の弾は完全ではないが自機に接触していた。

 ツッという音を立てて弾がかすったようなエフェクトが出ただけで、ミスにはならない。


「へえ」


 面白そう……

 不意にそう思ったことを恥じた、こんなのに期待してはいけない。

 今思い出した、昔遊んでいたゲームを。

 熱中して、足掻いて、悔しくて、ムキになって何度もプレイして……

 数え切れないほどのミスに落ち込んで、それを過ぎて無感覚に近い状態でプレイし続けてなおクリア出来なかったあのstgを。

 名前は確か「雷○Ⅱ」って言ったっけ。※



 結局チルノさんは2面半ばで残機計3つを失い終わってしまった。

 ボムを駆使していたのでstg経験自体はあるみたいだけど、コンテニューはしないのかな?


「……どうしたんです、あと3回コンテニューできますよ」


「大ちゃん!!あたい感じた!!このゲームは難しくて面白い!!!面白いと感じさせるために難しいんだ!」


 わたしも昔同じようなことを考えていた気がする、彼女ほど目がキラキラしていなかったと思うけど。

※名前は確か「雷○Ⅱ」って言ったっけ。

 有名な縦スクロールシューティングゲームの二作目です。

 初代がアーカイブスで遊べ、そのあまりの完成度の高さに驚いた記憶があります。

 男らしく勇ましい1面BGM、敵に弾を打ち込む効果音の気持ちよさ、敵弾1つ1つの怖さが昨今主流の弾幕ゲームと比べ物にならず、どの場面でも緊張感が付きまとうシンプルイズベストを体現した名作だと思います。

 いつも5面で復活できずに死にますが。


 その続編であるⅡはとにかく難易度が異常に高く、一時期遊ぶのが本当に嫌になりました。

 なにが難しいってパワーアップアイテムを安定してとるのが難しいんです。やり始めは特に。


 赤、青、紫、の三種の武装があり、現在装備しているのと同じ色のアイテムを取らないと、武装が変化するだけで強化段階が進まないのですが、出てくるアイテムは時間経過で色が変化するので毎回上手くタイミングをうかがう必要があるのです。

 で、ミスの救済措置としてフェアリーというアイテムがあり、それを取得できれば被弾しても復活時にアイテムをばら撒いてくれるのですが……まあ上手く取れないように出してくるんです。

 前述のアイテムシステムを作った方も知っているのはずなにフェアリーが赤、青、赤とほぼ重なった状態でアイテムをばら撒いてくるのでアイテム取得タイミングを計っているうちにミス……なんてのはしょっちゅうでした。


 しかし書き込まれたドット、ボム等で変化する背景のギミック、ノリのいいメロディアスなBGM、やりこめば先の問題もうまく処理できるようになる難易度のバランス、と難しいのにまた挑戦したくなる要素に溢れかえっている、やはりこれも名作です。

 難しすぎて大嫌いで大好きです。

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