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11日目 エピローグ 夫婦漫才

「咲夜さんと結婚したい!」


 鼻から大きく空気を吸い込み、大きく声に出して、もう一度。


「咲夜さんと結婚したい!」


 よし、気力が充実していくのを感じる……。あの本に書いてあったことは本当だったんだ。アゲイン!


「咲夜さんと――」


「あの……大ちゃん?」


「え、えええ!!チルノさん!?どうしてここに!?」


 ここはわたし達の住処、掘っ立て小屋。だからチルノさんがいるのは当然なのだが……。


「あああのあの、暫くは戻らないと言っていたはずでは……」


「い、いや……忘れ物したんだよ」


「あ、そ、そうですか……」


「う、うん……」


……。


…………。


恐ろしい程気まずい沈黙を、チルノさんが破ってくれた。


「最近暑かったもんね、あたいも叫びたくなる気持ちはわかるよ」


「い、いえ!同情するくらいなら、この前の商品のお金払ってください!」


「そ、それは関係ないよ!大体叫んで結婚できたら仲人はいらない!」


「じ、事情があるんですよ。見てください」


 と言ってわたしはこの前買った本を、チルノさんに見せることにした。


『声に出すと、実はいろいろ実現する 若鷺鴨雄わかさぎかもおの真実のアレコレ』


「な、なんだこれ?」


「真実についてのアレコレが載っている本です」


「だ、大ちゃんだって下らんもの買ってるじゃないかー!」


「い、いやわたしも始めはそう思っていたんですが……騙されたと思って読んでみるとこれがなかなか……」


 毎日隠れてデカイ声を出すだけで、咲夜さんと結婚できるなら……わたしは鴨雄に賭ける!


「うー大ちゃんが変だと調子狂うよー。あたいは見なかったことにするから、そこのニンジン取って」


「むむ、まあそれならいいですけど……ニンジン?」


 聞き間違いか?


 ニンジンがチルノさんの忘れ物?

 

「ああ、取って」


「……まさか何か飼うつもりじゃないでしょうね?」


「まっさかぁー」


 ピューと口笛を吹くチルノさん。白々しいことこの上ない。


「本当ですね?うちにもう余裕はないんですよ?」


「サギ本買う余裕はあるんだろ!馬の一頭や二頭でグチグチ言うなよ」


「馬!?しかも二頭もいるんですか!競馬場に返してきなさい!」


「物の例えだろ!一頭だよ!」


「馬一頭飼って何するんですか!非常食ならもっとエサ代が安いやつにしなさい!」


「だ、大ちゃんあたいのサイオーを食う気かー!鬼妖精に改名しろ!」


 なんですってー!

 それじゃあわたしは「鬼ちゃん」が愛称になるではないか!


「もう我慢できません!こんなとこ出て行きます!」


「おうおう!出て行け出て行けー!サイオーには乗せてやらんからなー!」


「ええーもちろんです!羽がありますからね、わたしには!チルノさんなんか馬乗ったり食ったりしてブクブク太るがいいですよ!」


「も、もう許さないからな!勝手にしろー!」



………


「という訳なんです!チルノさんひどくないですか!?」


「長いですし、農耕用の馬だと思いますよ」


 売り言葉に買い言葉で、着の身着のままで掘っ立て小屋を出て行くと、真っ先にここ紅魔館にやって来た。


 咲夜さんは私の話を聞き、やれやれと首を振ってからこう言った。


「オチをあててあげましょうか?あなたが忘れ物を取りに行くと、チルノさんが『大ちゃん帰ってきてー!』と叫んでいるのです。例のサギ本を信用して」


 ……。


「それなら……まぁ……仕方ないですね」


「夫婦漫才やってんですか。あなたがたは」


 


 例の本を取りにいくと、チルノさんが叫んでいた。


 もう……ほんとしかたないんだから……。

 

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