パラダイス・ロスト ~~自販機の中の戦争~~
コインの投入音。
それは、我々にとって死の宣告に違いなかった。
チャリン♪チャリン♪チャリン♪チャリン♪
無機質でいて、楽しげな音が、終わりの始まりを告げた。
「やべぇよ、やべぇよ。」
「いやぁ・・・私死にたくない・・・。」
「くそっ!!おい!天然水!なにか手は無いのか!」
「・・・・。」
俺は仲間からは【天然水】の愛称で呼ばれている。
もちろん、現状を打破する能力を持ち合わせてなどいない。
我々は皆、死刑囚のごとく監禁され、執行の日を待つだけの存在なのだ。
何をしたわけでもなく。生まれたときからこうなることが運命だったのか。
「やだ!やだ!死にたくないよぉ!なんで!!私なにも悪いことしてないのに!!」
このようにピーチネクターちゃんは恐れおののき。
「お、落ち着くんだピーチネクターちゃん。君が犠牲になるとは決まってない。」
また、落ち着かせようとするおしるこもパニック寸前だった。
「嘘よ!!私のお姉ちゃんたちも、そう言われたあとに落ちて行ったわ!!
さながら、絞首刑になる死刑囚のようにね!!」
「まぁ、落ち着け。ピーチネクターちゃんに、おしるこも。」
「天然水・・・。」
2人を落ち着かせる為、俺は考察を語った。
「投入されたコインの数は4枚だ。130円入った可能性が高い。俺とおしるこの可能性は薄い。」
「なるほど。110円の天然水、120円の俺は候補から外れる可能性が濃厚だな。」
「えっ!やだ!私は130円だよ!!私の可能性が濃厚なの!?」
「落ち着け、ピーチネクターちゃん。今日の気温は何度だ?」
「えっと、33°ね。」
「そう、つまり気温が高いときにピーチネクターなんてねっとりしたものを飲むか?
俺だったらそうはしない。清涼感の高いものを選択するだろう。」
「「ちょっと失礼なこと言ってない?」」
ちょっとしたブーイングを受けたが2人は落ち着いたようだ。
「そ、そうね!そう聞くとちょっと安心したわ。」
「そうだよ!ピーチネクターちゃんは大丈夫だよ!安心!安s」ガコンッ!!
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「お、おしるこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「おしるこさああああああああああああああん!!いやあああああああああああ!!」
おしるこが死んだ・・・・・。
なぜだ・・・・。釣り銭の音も無かった。
「はっ!!まさか!!!」
あの悪魔め・・・・・・。
50円玉を2枚使うなんてッッ!!
「こんな生活もういやああああああああああああああ!!」
俺達の苦悩はこれからも続いていく・・・・・・。