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X4 友達!

 折角早く来たのに、妙なトラブルに巻き込まれたせいで、教室に入ると既に10人ほど来ていた。

 私の席は……っと思い黒板を見ると、そこには『席は各自好きな場所へ座るように』なんて書いてあった。そのせいで窓際は既に男子で占領されている。


 外なんて興味のない私は廊下側の壁際中央へ座ることにした。海で日焼けするのは構わないけど、教室で日晒しになるのはいやだ。

 そして自分の席に着き、一息つきさっきの出来ごとを振り返る。なんだったんだろうな、あの人たち。

 お父さんたちと知り合いって感じじゃなかったな。じゃあなんだろう。


 そんなことを考えていたら、急に肩を指先でトントンと叩かれた。ちょっとびっくりしつつも振り返ると、そこにはショートカットの元気そう……、というか子猫のように好奇心が強そうな顔をした女の子がいた。


「あの──」

「ねっ、ねっ、後ろの席空いてる?」


 私の言葉を打ち消すように話しかけられた。


「さっき誰か座っていたみたいですよ」

「そっかぁ。んじゃさ、前は?」

「大丈夫だと思います」


 するとさっさと私の前へ回り込み、椅子を引き出し座ると体をこちらへ捻り向けてきた。


「私、北星瑠美奈ほくせいるみな! よろしくねっ」

「あ、藤岡瀬奈ふじおかせなです」


 北星さんはとても人懐っこそうな笑顔で私を見ている。こういう積極的に接してくれる子は有難いな。


「瀬奈ちゃんね! あとさ、同級生なんだから敬語とかやめようね!」

「えっ、あ、うん」


 私は親の仕事上、年上の人とばかり接していたから話し言葉は若干丁寧気味らしい。

 丁寧気味といっても日本語は微妙なんだよね。あまり教わってないし、ほとんど両親の会話からのリスニングかマンガだし。


「これから仲良くしようね! ──いやぁ、家から遠い学校受けたら友達誰もいなくてさぁ。あっ、瀬奈ちゃんは?」

「私は元々友達がいないんで……」


 私の言葉に北星さんはキョトンとした顔をした。


「えっ、嘘、ホントに……? 1人も?」

「あのー……、うん」


 北星さんはその答えで急に立ち上がり、机越しに私の胸へ飛びついてきた。


「そんな、そんなの酷いよ! いじめ!? いじめなの!? 酷い! あんまりだあぁぁっ」

「あっ、あの、北星さん? ちょ、ちょっと落ち着こ。ねっ」


 クラス中から注目されてしまい、私は挙動不審になってしまった。



「いやぁ、ごめんごめん。つい感極まっちゃって。んでさ、友達いないって冗談だよね?」

「えーっと、仲が良かった子はいたよ。でも親の仕事ですぐ引っ越しちゃうからさ、友達っていえるほど付き合いはなかったかなーって」


「そっかぁ、瀬奈ちゃんの親は転勤魔なのかぁ。じゃあひょっとしてここも?」

「ううん、ここは卒業までいるつもりだから」


 私ももうじき16歳、もう高校生になったんだから親と一緒に暮らさなくても大丈夫。

 だから両親も長く留まらないと知りつつも家を買って拠点を作ったんだ。

 まあ、ずっと一緒にいた親が急にいなくなるのは寂しいかもしれないけど、それもまた経験だよね。


「じゃあさ! 私が友達になるよ! 瀬奈ちゃんの初めての友達だ!」


 北星さんは私の手を掴みぶんぶん振り回す。

 友達ってなろうと言ってなるものかはわからないけど、なってもらえるならとても嬉しい!

 3年間、よろしくお願いします。



「んでさ、どこに住んだことあるの?」


「えーっと、生まれはオーストラリアのケアンズで、それからフランスのコートダジュール、次がイングランドのロンドンで、その後がサイパン、そしてハワイの……」

「ちょ、ちょおおぉぉっとまってえぇぇ! なにそれ! ひょっとして瀬奈ちゃんって超セレブ!?」


 セレブ?

 日本ではお金持ちのことをセレブって言ったりするんだっけ、そういえば。


「ううん、ちょっと親の仕事が特殊なだけ」

「なになに? それ詳しく──」


 北星さんが飛びつく勢いで聞いてきたとき、パンパンと手を叩く音が教室に鳴り響く。

 そちらへ顔を向けるとスーツ姿の、恐らく担任の先生だろう男の人が教壇に立っていた。


「はい静かに全員着席!」


 北星さんは『また後でね』と口に手を当てつつ小声で言って大人しく席へ戻った。


 なかなか直情的だけど元気いっぱいで楽しい子だ。ずっと仲良くしてくれるとうれしいな。

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