表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/23

X13 トラブル!

「瀬奈ちゃんエクストリーム部に入ったんだね!」

「あっうん」


 朝会うなり北星さんが私の腕に気が付いた。

 この学校では部活ごとに部章というものがあって、左腕にワッペンを貼るんだ。

 私の腕にも貼ってある。自由の象徴である鳥の翼に、EXTREMEの文字。羽は銀糸で文字は金糸だからとても目立つ。


「北星さんもフリーランニング部に入ったんだね」

「まあね!」


 北星さんの腕にもワッペンがある。緑のジャングルジムみたいな絵に黒いFREERUNの文字。


「だけどいいなぁエクストリーム部の部章! すっごいかっこいいよね! 他の部活なんて地味な色だしさぁ」


 ちょっと派手な気もするけど、かっこいい。エクストリーム部が特別だっていうのがわかる気がする。

 だけどその目立つせいで今朝は大変なことになった。



 私の席は廊下側。うちの学校は黒板を見て右側が廊下。つまりワッペンのある左腕はクラス全員から見えてしまう。


「えーっ! 藤岡さんエクストリーム部なんだ!?」

「すっげー! かっけー!」

「入学早々エクストリーム部に入れるって、藤岡さん何者なの!?」


 私の周りに人だかりができた。こんなに囲まれたことないからちょっと怖い。


「や、やだなあ。偶然だよ偶然」


「偶然で入れるわけないじゃん。嫌味?」


 がやがやと周りが騒ぐ中、呟くような誰かの言葉が私に刺さった。

 そんなつもりは全くない。偶然部長と会っただけだし、父のことも偶然部長が知っていただけだ。

 私の何かを評価されたわけじゃない。



「ほらみんな、そろそろ先生来るよ! 散った散った!」


 北星さんが手をパンパンと叩き、みんなを席に着くよう促す。それでも席に戻ったみんなはちらちらと私のことを見ている。

 辛い。


「やー、いきなり人気者だね、瀬奈ちゃん!」

「……ぅー」

「ど、どうしたの?」

「……私って嫌味っぽいのかな……」


「そ、そんなわけないじゃん。何? 誰かにそう言われたの?」

「別にそういうわけじゃ……」

「だったら気にしなくていいよ! ねっ」


 北星さんが私を励まそうとしてくれている。

 誰かに言われたことは黙っていよう。北星さんは大切な友達だから、変なことに巻き込みたくない。

 



 少し憂鬱な気分のまま部室へ向かおうとしたら、道を遮るように3人の女子が立っていた。


「あなたが1年のエクストリーム部員?」

「えっ、あ、はい」


 見たところ、上級生だ。わざわざ私が通るのを待っていた?


「入学してすぐ入ったって聞いたから、どんな色香で誘惑したのかと思ったら、とんだちんちくりんね」


 ちんちくりん? どうしよう、聞いたことない言葉だ。


「あの、何か用でしょうか」

「何か用? あなた、生意気ね」


 えっ

 今の聞き方、駄目だったの?

 やばい、上級生にどう接したらいいのかわからない。普通ならきっと中学とかの部活で上下関係を習うのだろうけど、私にはそういう経験がない。

 何も言わないでいると、どんどん先輩方の心象が悪くなってしまう。どうしよう……。


「あのー、先輩方。私のクラスメイトと何かあったんですか?」


 私が黙り込んでしまっていたところに、通りかかった北星さんが声をかけてきてくれた。


「あなたは?」

「フリランの北星です」

「あなたには関係ないわ」

「いやー、何か先輩方にしたのかなーって。クラスメイトとして放っておくのもあれだなって」


 先輩たちは色々と話した結果、「ちゃんと教育しておきなさいよ」と北星さんに告げ、去って行った。


「なんか面倒なのにひっかかっちゃったね。大丈夫?」

「あっうん」

「エクストリーム部は憧れだけど、下級生相手だとやっかみの対象になるんだね! 気を付けないと」

「そうだね……」


 北星さん、わざわざ助けに来てくれたんだ。凄い嬉しい。


「やー、でもさすが喜信堂先輩を輩出したフリーランニング部。発言権があるね!」

「そうなんだ?」


 喜信堂先輩といえば、北星さんが憧れている先輩だ。元々フリーランニング部で、エクストリーム部に転部したのかな。


 あれ? でも部員は確か……そういえば1人怪我でいないって言ってたっけ。それが喜信堂先輩なんだろう。


「とにかく、こういうことは後からもあるかもしれないからさ、何かあったら私を呼んでよね!」


 北星さんの心強い言葉に、少し泣きそうになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ