偽善勇者と巻き込まれに巻き込まれました。
少しでも楽しんで頂けるように頑張ります。
周りには生い茂った植物たち。
そして目の前には、涎を垂らしながら此方に近づいてくる真っ赤なドラゴン。
「…めんどくせぇ」
なんで私がこんな状況に陥らなきゃいけないんだ。
こういうのはもっとふさわしい奴がやるべきだろ。
なんで寄りによって私を選んだの?馬鹿なの?阿呆なの?死ぬの?
頭をガシガシとかきむしりながら、溜め息を吐いた。
ああうん、とりあえず。
「どうしてこうなった…」
~回想~
「ふぁ~、つっかれたー」
大きく欠伸をし、伸びをする。すると、肩や腰からパキパキと音が聞こえた。
というか今日は本当に疲れた。
なんで一時間目から体育があるんだよ。
普段からゴロゴロしてたい、何もしたくない、面倒くさがりな私――白崎千尋――は、只でさえ学校に行くのが苦痛なのに!
一時間目から体育とか!拷問かよ!?しまいにゃ泣くぞ!?
あぁ、やっと帰れる…。
帰ったら即行寝よう。飯とか風呂は後でいいや。
「涼!一緒に帰ろう!?」
「断る!!つーかなんで俺が一緒に帰らなきゃいけないんだよ!?」
「そうよ!!勇樹様、わたくしと一緒に帰りましょう?」
「は?何言ってるの?勇樹は僕と帰るんだよ?」
「勇樹様、私も一緒に帰りたいです…」
「みんなで一緒に帰ろうよ?」
「俺は一緒に帰らねーからな!?」
…うるっせーな、おい。
横で煩く騒いでいるのは、神野勇樹、木崎涼、+おまけ。
要するに、よく携帯小説などででてくる偽善勇者と巻き込まれとビッチハーレムだ。
と、そうやって私が説明している間に、全員で帰宅する事が決定したらしい。
とりあえず、巻き込まれざまぁとだけ言っておこう。
被害者面してるけど、私からしたらお前も偽善勇者と同じような物だからな?
いつもいつもギャーギャー喚きやがって、
喧しいんだよ。
というかなんで私が偽善勇者たちと同じ帰り道なんだろう。
もういっそ帰り道が被らないように引っ越ししたい。
親に掛け合ってみようかな…。
「さようなら、勇樹様」
「バイバーイ」
…あぁ、ビッチ共は帰ったのか。
途中で道別れるし。
まあ、これで多少喧しさはマシになるだろう。
「…ねぇ、涼」
「何だよ」
「あれ、何?」
…は?
偽善勇者と巻き込まれの間から、金色に輝く魔法陣らしき物が見えた。
…さて、逃げよう。
巻き込まれが巻き込まれるんならともかく、全く関係ない私が巻き込まれる義理はない。
「…ああ、魔法陣だろ。勇樹、魔王倒しに行ってこいよ」
「意味分かんないよ!?ていうかなんで逃げようとするの!?」
「巻き込まれたくねーからだよ!!腕を離せ!!」
「やだ!!」
…うわぁ。
偽善勇者が、巻き込まれの腰をがっちり掴んでいる。
まさかこんな所でホモを見るとは思わなかったわー。
『いーい!?千尋!!男が二人居ればホモは出来るの!!
たとえば二人居れば男A×男B、男B×男A、男A×男B×男A、男B×男A×男B、四つのカプが出来るんだから!!
だから、もし周りにイケメンがいたら私に全部教えなさい!!
そして…腐腐腐腐…』
…やばい、思い出した。
悪魔で腐女子な、私の姉を思い出し、恐怖が蘇って立ち止まってしまった。
この時、私は油断していた。
思わず恐怖で固まり、思考を放棄しかけた時に魔法陣を思い出す。
慌てて魔法陣を見た。
偽善勇者はもう腰まで魔法陣に飲み込まれ、だがしかし巻き込まれの腰に回す腕を離す気配は無い。
もう少ししたら魔法陣に完全に飲み込まれるだろう。
偽善勇者たちが飲み込まれる…つまり、近くに居る私も巻き込まれる。
…逃げよう。
もう手遅れかもしれないけど。
素早く体制を逃げの体制に変える。
よし、このまま逃げよう。
そう思ったんだけど。
ガッ、ズシャァァ!
…転んだ。思いっきり転んだ。
足元には、巻き込まれが投げ捨てたであろうスクールバッグ。
あぁ、うん。
魔法陣が一際強く輝いた。
…とりあえず、偽善勇者と巻き込まれぶっ潰す。