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現実 → 理想

 ラクダがいなくなった後、バンビとウサギは暫く水辺で立ち尽くしていました。水面は穏やかでしたが、次第に微かな波が立ちました。

 ウサギは波の後を視線で追いました。その先では1匹のネズミが少し離れた所で水を飲んでいました。ネズミもまた、先ほどの自分たちと同じ状態だったと思うと、水を飲む姿を見て胸を撫で下ろした所だろうとウサギは眺めました。


 水辺は終わりの見えない砂漠に比べて気持ちが良い場所。此処から離れるのも恐ろしいもの。


「どうしようかなぁ……」

 バンビは青い空を見上げていました。オアシスがあると気持ちは穏やかなでした。それが一層、バンビの森への憧れを強くしていました。

 森には木が多くあるもの。どうしたら木々が生えるのかとバンビは頭の中を緑でいっぱいにして考えていました。その時です。背後から重い足音が聞こえてきました。

「「うん?」」

 二匹が声を揃えて振り返ると、象が歩いてきていました。ゾウもオアシスを求めていたのでしょう。

 何気なくウサギが先程のネズミを見ると、隣にはクマがいました。いつの間にか沢山の動物がオアシスにやって来ていたのでした。

 動物たちが水を求めにやって来ていることを察すると、二匹は端っこへとずれて道をあけました。

 動物たちは美味しそうに水を飲んでいます。水面は美しく光を輝かせていました。

 大切に水を口に含んでいた中、ゾウは一気に多くの水を吸い込んでいました。ウサギはあんぐりと口を開けて見ていると、なんとソウは水浴びまで始めてしまいました。

「あぁ……あのままだと水がなくなっちゃう」

 ウサギは茫然としていいました。

「でも、彼だって悪気は無いはずだよ。体だって大きいから仕方ないし……」

 バンビは困った表情を浮かべています。思いはバンビもウサギと同じでした。

 そんな二匹の会話が聞こえたようにゾウは二匹に視線を向けました。変わらずにゾウは多くの水を吸い込んでいました。

 二匹がゾウと視線の合った次の瞬間、二匹は肌で水を感じました。

「「わっ」」

 ゾウが二匹に水をかけてきたのです。

「どうだ、気持ちいいだろう」

 優雅にゾウは言いました。

「雨みたい」

 ウサギは久し振りの恵みの雨のように感じて、空を見上げました。

「雨……」

 バンビは木が育つには水があればいいと思いました。

(水もある。たまにだけど、雨も降る……。あと必要なものは……)

「種だ!」

「えっ?!」

 いきなり叫んだバンビの声にウサギは驚きました。

「種だよ! 種と芽が出るような物があれば木が……森が出来るかも!」

 突然話出したバンビにウサギはついていけませんでした。

「何の話だい?」

「森を作りたいんだ!」

 ゾウの問いにバンビは瞳を輝かせて答えました。その声にネズミとクマもバンビを見て集まって来ました。


 バンビは森を作ろうと思った経緯や、方法を三匹に身振り手振りを付けて話しました。ウサギは「みんなで協力すればきっと出来るはずだ」と、バンビと同様に強い瞳で訴えました。

「やってみる価値はあると思うんだ!」

 バンビは瞳に森を映している様でした。

「森かぁ……」

 クマが小さな声で呟きました。一方でネズミは呆然としていました。ネズミには想像もした事も無い世界の話でした。

 気が付くクマとネズミ、ゾウの三匹は顔を見合わしていました。

(こうして毎日……誰にも気兼ねなく、水浴びも出来たら)

 バンビの夢を想像したゾウは、キラキラ輝く森を素敵な世界だとうっとりしました。

「そうだな、やってみよう」

 ゾウの答えに、クマが頷きました。四匹の輝いた瞳にネズミも自然と協力したいという思いになっていました。

「「ありがとう」」

 バンビとウサギがお礼を言いました。嬉しさのあまり、二匹は新たな協力者に抱き付きました。


 五匹は円を作り、話し合いを始めました。しかし、五匹にあるのは森に対する憧れだけ。

「森……もり……森……」

 バンビの可愛い声が響きます。

「この砂漠の中にも何か役に立つ物があるかもしれないよ」

 クマが言いました。

「何か……」

 バンビがそれは何かと不思議そうに言いました。

「何か、だよ! 何でもいい。役に立つかもと、皆が思った物を集めてみようよ」

 ウサギは高々と手を上げました。ゾウが頷くと、ネズミも頷きました。

「うんっ。そうだね。そうしよう!」

 バンビは、仲間が居てくれるのを嬉しく思いました。五匹はそれぞれに手を出しました。手を伸ばせないゾウは、代わりに鼻を伸ばします。

「よ~し、みんなで集めよう!!」

「「「「お~!」」」」

 バンビを合図に、四匹は声を重ねました。


 バンビはウサギと、ネズミはクマと、ゾウは一匹でそれぞれに何かを探して砂漠を歩くことになりました。


「何かないかな~」

「どんなのがいいかな~」

 バンビとウサギは無意識で言葉を出しながら探しました。砂漠に転がった乾いた木の枝。たまに見かける石。他は砂ばかり。

 石は重かった為、諦めた二匹でしたが、

「木の枝は軽いし役に立つかもしれないね」

 と、持って行く事にしました。そうして二匹は木の枝を大切に持って歩きました。

「一体どうしたんだい?」

 突然の声に二匹は驚きました。小さな姿で飛びながらバンビ達に尋ねたのは、ハチドリでした。ハチドリの問いに、バンビは森を作る為の材料を集めている事を説明しました。

「へぇ~、ここにねぇ。……私は森を知っているよ」

「「えっ」」

 二匹は驚きました。

「どこ?」

「ずっと遠く」

 バンビの質問にハチドリはクチバシで遠くを指しました。見えない森にバンビはじっと遠くを見つめました。

「どこに材料を集めるの?」

 ハチドリは素っ気なく聞きました。

「あっちのオアシス」

 ウサギは指で示します。

「ふ~ん」

「ハチドリさん……協力してくれない?」

 バンビは見えなかった森を知っているハチドリに懇願するように言いました。純粋なバンビの瞳にハチドリは恥ずかしくなり、顔を背けました。

「気が向いたらね」

 そう言うなり、ハチドリは飛んで行ってしまいました。

「「あっ」」

 二匹は飛んでいくハチドリの小さな姿をすぐに見失ってしまいました。手元に残ったのは、ウサギの握る数本の枯れた枝だけでした。


 二匹がトボトボとオアシスに戻ると、三匹が先に居ました。

「ごめん……これしか見つけられなくて」

 ウサギは三匹に枝を見せました。バンビは森を知っているハチドリに折角会えたのにと、すっかりしゅんとしていました。

「いいんだよ、みんなで少しずつ集めていけば」

 クマの頭に乗ったネズミが言いました。一番小さなネズミが言ってくれたお蔭で、バンビは笑えました。

「ありがとう」

 バンビの言葉にネズミは頭に手を回しました。そして、もう片方の小さなてのひらを広げて見せました。どうやらネズミは微量ながら土を発見した様です。バンビが見た事が無い、しっとりとしたものでした。クマは空き缶を、ゾウは大きな袋を持っていました。

 ゾウが袋をひっくり返すと、またバンビが見たこともない物がたくさんありました。それは、ウサギも同じようでした。

「「なんだろう……」」

 それは、ふわふわしていて綿飴のようでした。


 その夜、バンビ達は「疲れたね」とオアシスを横に眠る事にしました。水辺で安心した五匹は疲労も手伝って直ぐに眠りました。 


 静かに風だけが時折、響きました。すっかり五匹は夢の中です。遠くから小さな一匹の影が見えました。徐々に近づいてきた影はハチドリです。

 ハチドリはバンビとウサギの眠っている姿を見て、二匹に近づいて来ました。

「眠っている……よね?」

 そう呟くと、綿あめのような物に目を留めました。そして、こっそりと数種類の種を落としました。

「わ、私は協力したんじゃない。た、ただ通った『ついで』だからねっ」

 その場で素早く羽根を動かし、小声で二匹に言うと、ハチドリは来た空を再び辿って行きました。


 ハチドリが種を落としていたことなどつゆ知らず、翌朝も五匹はせっせと同じ作業を続けました。それは何日も、何日も続きました。

 熱い砂漠の中でもいきいきとしていたバンビ達の姿は、事情を知らない動物たちからすれば、さぞ不思議なものだったでしょう。


 はじめは興味本位から近づいて来た――そんな見知らぬ動物達も、バンビ達から事情を聞くと手伝ってくれる様になっていました。




 何日も時間がながれた、ある日のこと。突然それは起きました。

「あ~!」

 ウサギの声に皆が集まると、ふわふわしている綿飴のような物から植物の芽が出ていました。

「やった! 葉っぱが出ているよ!」

「もしこれを続けたら……」

 嬉しそうにはしゃぐバンビや仲間の動物たち。ウサギも夢見ていた森を想像し、胸を馳せました。ウサギだけではありません。この場に居る動物たち皆が、そうだったことでしょう。


 この日以降も、同様に芽は頻繁に出ました。その度に動物たちは歓喜を上げ、小さな芽に大きな喜びと期待が広がりました。


 それから数年の月日が経ちました。


 終わりのない砂漠地帯と、ほんの少しのオアシスしか無かったその場所に、今では美しい川のせせらぎや、爽やかな緑の香り、賑やかな動物たちの姿があります。『森』は、いつの間にか、多くの動物達が憩う場所になっていました。

 いつも輪の中心に居て楽しく過ごすバンビとウサギ。その二匹をこっそりと見つめている一匹の動物がいました。ラクダです。長いまつ毛は、声を掛けずに優しく二匹と輝かしい緑を暫くその瞳に留めたのでした。

(あとがき)

 バンビとウサギはお相手様がキャラを確定してくれた気がしています。バンビは無邪気で真直ぐな、でもちょっと子どもっぽい可愛い性格。甘え上手でもあると思います。ウサギはバンビよりは少しお兄さんな印象が私にはあります。

※あくまでも私の勝手な二匹に対する印象です。

 ラクダとハチドリは私ですが、言わなくても私らしいようなキャラではないかと(苦笑)。そして、時折、夢見がちなバンビに現実を突きつける私……悪魔ですか。←w

(……「ハートフル」は何処へ行ったww「ご都合主義」な展開が苦手な奴ですみません、涙)

 お相手様がラクダとハチドリのキャラを押してくれて……感謝です。広い心に感涙です。


 ちなみに、お相手様とは(私の案で)リレー小説のように交互に文章を足して作りました。合作というからには、どちらかの意見が過度に出るのは違うかな~というのが私の見解でした。『お互いに推敲をしたり、話の方向性を確認しあったりしながら合作として作り上げた』という認識が私にはあります。

 が、後編の原文推敲は私だけですので、至らない所が多々あるかもしれません。申し訳ありません。


 作品を作るにあたって「ハートフルな」と云うことで進めてきた作品です。個人的には「夢を実現すること」「仲間の大切さ」「気づかない優しさ」を入れていきたいな……と思って作らせて頂きました。


 お付き合い下さったお相手様、読んで下さった方、ありがとうございました。


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