#1 夢の始まり
世界は既に、混乱の最中であった。
「黒魔術教団」と名乗る、謎の者たちの力により、侵攻を続けられている。彼らは、魔物を生み出し、人を襲っては、幾つもの都市を壊滅させている。
この事態に、「純騎士」と呼ばれる戦士たちが集まり、「対黒魔術教団機関」を設立、幾人もの騎士たちが力を奮っては、殉職を繰り返していた。
何年もこの戦いは続き、この戦いは「白黒決戦」と呼ばれた。
今もなお戦闘が続き、「純騎士」は何度も交代を繰り返している。
そして今、「対黒魔術教団機関」に所属する者は、四名のみ。
ある朝
「対黒魔術教団機関」にやってきた一人の少女がいる。長い白髪は腰まで届き、空のように透き通った青い目で、まっすぐに「対黒魔術教団機関」を見つめている。そのまま扉を開け、中に入っていった。
「おはよ~」
「おはようって、始業開始時刻は過ぎてますよ…」
白髪の少女の挨拶に、水色の髪の少女が答える。
白髪の少女の名は藤野 月夜。「対黒魔術教団機関」に所属する、「純騎士」の一人。左腕に、彼女の指にははまらないほど小さい指輪がかかったブレスレットをつけており、右腕には、何重にもしてブレスレットの様にしたネックレスをつけている。
「ごめんごめん。布団が離してくれなくて」
「自分が出てこなかっただけじゃない。」
部屋の奥から、暗い紫色の髪の少女がやってくる。こちらの少女は砂盃 茜。胸元に花のコサージュをつけている。
「月夜の所為で汐ちゃん困ってるわよ~?」
汐とは、先程の水色の髪の少女のこと。星宮 汐である。
「いやっ、別に、困っては…ないんですけど…。なんと言いましょうか、はい。」
汐は呆気にとられた様子で、何も言えずにいる。
現在、この「対黒魔術教団機関」に所属するのは、月夜、茜、汐、そしてもう一人を含めた全四名。少し前はもう少しいたのだが、魔物や黒魔術師との戦闘で、何人もの「純騎士」が死傷している。一年ほど前には、月夜の妹である、月香も在籍していた。彼女たちと同じ「純騎士」であったが、訳があり変身ができず、重火器等を使った戦闘をしてサポート役を行っていたが、戦いの最中に亡くなった。彼女が持っていた変身アイテムの一部であるネックレスを、月夜が現在、自分の右腕に巻いている。
「そういえば、今日全国のテレビがジャックされたって聞いたけど。」
月夜が思い出したかのように呟く。丁度先程、番組の最中、黒魔術教団により一分間ほどテレビがジャックされたらしい。テレビ局に関係なく、どの番組もジャックされたとのことだった。月夜が「対黒魔術教団機関」に到着する数分前だった。
「そうみたいですね…。今、調べてるところです。」
汐がパソコンを操作しながら答える。どうやらネットのつぶやきや、テレビジャックを取り上げたニュースを漁っているらしい。
その時、サイレンがなった。民間の通報などにより、魔物や黒魔術師を検知すると、「対黒魔術教団機関」のサイレンが鳴る仕組みになっている。月夜、汐、茜がそれぞれ目配せをし、提示されている住所を確認したのち、全員そろって向かった。
「出現しているのは魔物、だったわよね?」
「うん、近くに児童が多く、魔物のサイズもかなり大きいみたい。」
「守りながらの戦闘は…骨が折れそうですね…。」
「そうだね~」
三人が走りながら、会話を交える。会話とともに、今回の作戦を練っているのである。
「今日こそは月夜さん、変身してくださいね」
「え~別にこれで戦えてるからいいじゃーん。どうせ後から記憶遮断使うんでしょ」
記憶遮断、とは、「純騎士」を実際に見た者の記憶を曖昧にさせる能力だ。「純騎士」の正体を暴かれないための対策である。
「それでもだめよ。折角『純騎士』の力を持つんだもの。使ったほうがいいわ」
茜が嗜めるように告げる。
月夜は現在、変身しての戦闘をしていない。亡くなった妹の変身アイテムの一部であるネックレスの力を使って戦っているのだ。本来、変身アイテムはその本人しか使えないはずなのだが、月夜は特別に変身アイテムが使える。その理由として、「純騎士」の変身アイテムは、各個人の大切なもの、もしくは忘れられないもので、どうしてそのアイテムが自分にとって大切なのか、を理解しないと使えない。実際に月香は、過去の事故で記憶をなくし、自身の変身アイテムの意味というものを理解していなかった。逆に理解していた月夜が、代わりに彼女の力を使えるようになっている。それゆえなのか、妹を亡くしてからというもの、月夜は自身の変身アイテムを使わなくなった。妹の変身アイテムの一部を使い、変身はできないものの、魔法だけは使えている。
いつしか目的地の近くまでやってきた。民間人の前で変身するわけには行かないため、汐、茜が立ち止まり、変身を始める。




