2.ボタンとペンギン
大学帰り、のどが渇いた加藤は、自動販売機でおしるこを買った。自動販売機のルーレットが始まる。777ときて、あとひとつ7が来たら、大当たり。どうせこないだろうとルーレットの画面を見つめていると、最後の数字も7になる。当たりだ。
「おめでとうございます!!大当たり!!あなたは、この金のボタンを押す権利を獲得しました!!」
自動販売機からそう聞こえると、取り出し口に金色のボタンが落ちてくる。加藤はそれをスルーし、近くにあったベンチに座って冷めないうちにおしるこを飲む。おしるこを飲みきり、加藤が顔を上げると、自動販売機が大きいペンギンになっていた。そのペンギンと目が合った加藤は、ぺこりと会釈して、そのまま家に帰った。
玄関に入ると、何かポケットの中から聞こえてくる。加藤はポケットのなかに手を突っ込んだ。何かが入っている。取り出してみると、手のひらサイズの小さなペンギンだった。
(ペンギンならこの寒さでも生きていけるだろ。)
根拠はないが、そう思った加藤はペンギンを外へ出してドアを閉めた。加藤は、その日はそのまま就寝した。
午前7時、アラームの音とともに、加藤は目覚める。まだ起きていない体を叩き起こしながら、カーテンを開ける。そこから見えたのは、昨日外へ逃がした小さなペンギンが、近所の野良猫を整列させている姿だった。突然、今日は何もない日だと思い出した加藤は、開けたカーテンを閉めてそのまま布団に入った。
午後6時、加藤起床。今度こそ起きた加藤は、自分がお腹が空いていることに気づく。とりあえず冷蔵庫を開けてみるが、何も入っていない。仕方なく、近所のスーパーに食材を買いに行くことにした。
ダボダボのスウェットを着て玄関のドアを開ける。そこには、小さなペンギンがいた。加藤がまばたきした瞬間、虹色に光るボタンに変わった。加藤はそのボタンを通り過ぎて、スーパーに行った。
スーパーから帰ってくると、玄関の前に、まだ虹色のボタンが置いてあった。さすがに邪魔だと思った加藤は考える。
(このボタンって、粗大ゴミかな?不燃ゴミかな?)
住んでいる地域のゴミの分類を調べる。「虹色ボタン 捨て方」で検索するが、出てこない。「七色に光る 粗大ゴミ」で、検索し直す。
「…まあ、一番近いのは電飾看板か。」
不燃ゴミだと分かり、明日がちょうど回収日だと知った加藤。明日捨てるために、その虹色に光るボタンを恐る恐る玄関の端へ寄せて、そのまま家のなかに入った。
次の日、7時に起きた加藤は、ゴミステーションに虹色に光るボタンを捨てに行く。
(誰か押しちゃうかもなぁ。……俺には関係ないか。)
その後、加藤はまっすぐ家に帰り、朝食のパンを貪った。




