0.プロローグ コンビニ
初投稿です!
午前0時をまわった深夜のコンビニ。外は猛吹雪。中にはバイトの大学生が一人。誰も来ないおかげでレジ以外のすべての仕事をこなしたバイトは、レジにぼんやりと立ち尽していた。
すると、大柄なひとりの男が、鬼のような形相をしてコンビニの中へ入ってきた。一直線にレジまで向かうと、赤黒いドロっとしている液体が入った小瓶をバイトに見せて、ドスの利いた声で言った。
「この液体と同じ色をした度数が70度以上の酒と、ライターをくれ。あと、このコンビニに黒い犬はいるか?」
「そちらの液体と同じ色をした度数が70度以上のお酒は、こちらの店舗では扱っておりません。大変申し訳ございません。また、黒い犬もおりません。……ライターですね?今お持ちしますので、少々お待ちください。」
バイトはライターを持って戻ってきた。
「こちらのライターでよろしいでしょうか?」
バイトの冷静な対応に、男はとても驚き、焦り、喚いた。
「酒がない!?ないだと!!こっちは命がかかっているんだ!!!用意してくれなきゃ困る!!…………だが、まだ黒い犬が来ていないとなると、救いはあるのか…。」
男の態度に一瞬迷惑そうな顔をしたバイトは、すぐにいつもの表情に戻り、再度繰り返した。
「こちらのライターでよろしいでしょうか?」
「そうだ、お兄さん。銀髪でピアスバチバチ、その上、その冷静な態度。あんた、もしかして、『掃除屋』なんじゃないか?」
「なんのことでしょうか?とりあえず、ライターはこちらでよろしいですね。120円です。」
会話が成り立たない男を相手に、あきらめたバイトは、ライターをレジに通した。男はおとなしく金を出して、会計を済ませた。それでも男は食い下がった。
「あんたが『掃除屋』じゃないんなら、別にいいんだ。とにかく、この液体と同じ色をした70度以上の酒を頼む。」
「そもそも、度数が70度以上のお酒を取り扱っていないんです。お引き取り願えますか?」
すると突然、誰もいないはずなのに、自動ドアが開き、店内中に犬の遠吠えが響き渡り始める。男の顔が、みるみる怯えに染まっていく。遠吠えは聞こえるが、遠吠えの発生源らしき犬の姿は見当たらない。おびえながらも、男は叫ぶ。
「酒はないのかっっっっっ!!!!」
男が酒を渡さないと帰ってくれなさそうだと悟ったバイトは、少し考えて答えた。
「度数が70度以上ではないですが、それと同じ色の赤ワインならありますよ。」
「もうそれでいい!!それで頼む!」
赤ワインを取ってきたバイトは、それをレジに通す。
「1000円です。」
男は1000円札を乱雑に渡し、赤ワインを奪い取り、自動ドアから全速力で外へ走っていき、猛吹雪の中、夜の闇へ消えていった。それと同時に、犬の遠吠えもコンビニの外へ遠ざかっていき、やがて、聞こえなくなった。バイトは外の荒れ狂う闇を見つめて、淡々と言う。
「ご来店ありがとうございました。」
午前5時。バイトは仕事を次の人に託して、帰路につく。外の吹雪はすっかりやんでいるようだ。
バイトの名前は加藤。
この奇妙で不可思議な出来事も「加藤さんの日常」の1ページに過ぎない―――




