第1章
影隠し。
この単語をあなたは知っているだろうか。
調べても出てこないのではないかな?
何せ私が昔住んでいた地域に昔から伝わる伝承のようなものなのだから。
だが、これが大きく私の人生を狂わせた。
誰かに聞いて欲しいという訳でもないが、今後この惨劇を繰り返さないために、私は、私の体験を物語として残そう。
これは私が中学時代のお話だ。
この年に私は、この世の外。理から外れた存在と相対することになる。
これは、私が体験した出来事を綴る一種の日記の様なものだと思ってもらいたい。
さて、前置きはここまでにして早速、物語を綴ろうではないか。
――――――――――――――――――――
中学時代、私には親友と呼べる友が1人いた。
名を加藤 海と言う。
彼を一言で表すならば“元気”この一言に限るだろう。
何に対してもアグレッシブで、情熱的。昔からの幼馴染と言う物で、私とは正反対の性格をしていました。
私は物事に対して消極的で、無謀な挑戦はしないタイプの人間でして、昔から親には「もっと情熱を持て」と言われたものです。
ある日、彼がこんな話題を持ってきた。
「なぁ!近所のトンネル知ってるか?」
「封鎖されてるあの場所の事?」
「そう!」
「俺、今度別の奴らとあそこで肝試しする事になってよ!」
「だからさ!お前も来ないか?」
「いいよ、私はそういうのしないタイプだって知ってるでしょ?」
「まぁ、そう返ってくるとは思ってたけどさ。一応聞いてみただけな!」
「危ないことはしちゃダメだよ?気をつけて楽しんできてね。」
「おう!分かってらぁ!」
こんな会話をしたのを覚えています。
私は前述した通り、現実主義というか、何と言うか、まぁ物の怪、化け物の類を信じていなかったんです。
海 が持ってきてくれた話ではあったのですが、なにぶん興味が湧かず、私は不参加となりました。
それから実行までの数日間余程肝試しが楽しみなのか、海と話す度に、「肝試しが〜。」と、話していました。
その中で、奇妙な噂と言いますか、そのトンネルに対しての注意事項の様な物を見つけて、海が話してきたんです。
「なぁ、知ってるか?あのトンネルって何でかは知らねぇけどさ、写真撮っちゃいけねぇんだってよ。」
「写真?」
「そう。写真」
「何でなの?」
「だからぁ!何でか分かんないんだってば。」
「どうせ誰かが立てた噂が独り歩きしてるだけだよ。」
「そうかぁ?でもよ、本当だったら少し面白くねぇか?」
「何?もしかしてやる気なの?やめ時なよ、触らぬ神に祟りなしって言うじゃないか。」
「何だよ!信じてないなら別にやっても変わんないだろ?」
「安全かどうかと信じてる信じてないは別の話でしょ。」
「やーい、ビビってやんの〜。」
「何だとぉ?」
この後軽い喧嘩になりはしたが、なにぶん中学生同士の喧嘩だ。大事になりはしない。
だが、この時の“写真を撮ってはいけない”と言うのがこの後に繋がってくるから、皆には是非覚えておいて欲しい。
――――――――――――――――――――
そんな事がありながらも、海達の肝試しは当日を迎え、数人の仲間たちとトンネルに向けて自転車を漕いで行った。
私は後ろからそれを見送り、背中が見えなくなった後、家に戻った。
この時私は「たかが肝試しだ。すぐ戻ってくるだろう」と思っていた。
だが、出発日以降に海に関する情報が入ったのは、休み明けの学校での欠席報告からだった。
どんなに幽霊を信じていないと言えど、親友が肝試し直後に学校を休んだとなると、さすがに私も心配になってくるもので。
帰り道、海の家へと向かった。
ーーピンポーンーー
海の家のインターホンを押す。
『バタバタドタ』と家の中から誰かが慌てて玄関に出てくる音が聞こえる。
ーーバタンッ!ーー
勢いよく玄関の扉が開く。
「誰!?もしかしてもう来てくださったの!?」
慌てた様子の海の母が出てきた。
「お、おばさんこんにちは。あの、今日海が休みだって聞いて…お見舞いに。」
玄関で怯えた私を見つめた海母は、ため息を吐き、深呼吸をして、落ち着いた。
「大きな声出してゴメンなさいね。海は…今少し調子が悪いの。また明日、来てくれるかしら?」
海の母は子供目に見ても、何かを隠すような、そんな物言いをしていた。
だが、彼の家の最高権力者である母に帰ってくれと言われてしまっては、私にできることは無い。
その日は心配しながらも、大人しく家へ帰った。
時間は少し経ち、夕食の時間。
私は親に海に着いてなにか知らないか、と尋ねた。
私の住んでいる所は田舎で、噂話や情報が伝わるのは以上に早い。なので、私の両親ならば何か知っているのではないか、と思ったのだ。
「ねぇ、海が今日学校を休んでいて、何か知ってることはない?家に行ったんだけど、帰されちゃって。」
そう聞くと母は少し困ったような顔をした後、こう言った。
「海くんはね、今少し体調が悪いの。」
「だから、少しだけ安静にさせといてあげましょう?」
結果は海の母と同じであった。
疑問がさらに深まる。
(海の母も両親も“ナニカ”を隠している?)
不信感がつのる。
こんな時に海の安否も分からない。
親友なんて肩書きは、肩書きとして存在しているだけで、いざと言う時ここまで無力なのかと感じたのを覚えている。
自分の部屋に戻り、考える。
情報を整理するとこの様になる。
1・海は仲間数人と肝試しに行ったこと。
2・肝試し後、海の体調(?)が崩れていること。
3・海の母も両親も“ナニカ”を隠しているいう 事。
考える。
どうして今現状こうなっているのかを考える。
「やっぱりトンネルが関係してるよな…」
薄々勘づいてはいたが、非現実的すぎて、除外していた考えが、頭の底から浮き上がってくる。
「幽霊?取り憑かれたってこと?いやいやいや、ありえないでしょ。」
前にも書いたが、私は現実主義だ。目に見えないものは信じないし、見えないなら存在していない事と同義である。と思っているタイプの人間だ。
こんな事実が導き出されたからと言って、ホイホイ信じるような性格はしていない。
だが、もし本当だったなら?
海は今相当危険な状態なのではないか?
そんな考えが頭の中をグルグル回る。
現実主義だが、血も涙も無い鬼ではない。
ましてや、親友の危機だ。心配しないわけが無い。
そこで俺は、夜中彼の部屋を見に行き、あわよくば侵入しようと計画を立てた。
彼の部屋は1階にあり、窓際にベッドがあるため、窓をノックすれば気づくはずだ。
夜。
実行する時が来た。
玄関を気づかれないように静かに出て、彼の家へ向かう。
向かうと言っても真正面なのだが。
ーーコンコン
窓をノックする。
反応がない。
ーーコンコン
再度ノックをする。
(気づいてないのか…?)
『ゴソゴソ…。』
(!!)
中から音がした。気づいてくれたのだ。
ーーガラガラ
窓が開く。
衝撃的だった。
そこから顔を覗かせたのは痩せこけ、本当にあの元気に溢れ、周りに元気を与えるあの海なのか疑ってしまうような見た目になった海であった。
「海…お前…。」
「…。」
「何があったんだよ!?」
「…くな…。」
「え?」
「あの…トンネル…近づくな。」
「は?おい!海?ちゃんとしろ!海!?」
虚ろだった。
目からは光が消え、焦点が合わず、同じ一言を繰り返していた。
“影”
この言葉が何を意味するのか何も分からなかった。
「影?」
「影がどうしたんだ?」
「海?海!!」
ーーバタンッッ!
急に窓を勢いよく閉められ、危うく頭が挟まる所だった。
海の家の電気が点灯する。
(ヤバい!起きてきた!)
あんなに合わせたがらなかったのだ。見つかれば何を言われるか分かったものではない。
少しばかりの疑問と心配を胸に、私は足早にその場を離れたのだった。
それからの事だ。
学校に海が来ない日が続いた。
あの日から丁度1週間が経った頃だったであろうか。
海が亡くなった。
突然の訃報。
前まで一緒に笑い、喧嘩もした親友の急な知らせに、頭が真っ白になった。
何も考えられないとは言い得て奇妙なもので、頭の中で無数に考えが浮かんでは消えていく事を繰り返すため、正確には考えられないのではなく、処理ができていないという事なのだな、と思ったのを覚えている。
こんなしょうもない事を考えるほど、私は動揺していたのだった。
数日後。
海の葬儀。
葬儀には私も出席させてもらった。海の母はなく気力も無いようで、ボーッと虚空を見つめていた。
棺桶から除く顔は、前とは似ても似つかない、痩せこけ、原型が分からないほどにミイラのような状態になった海だった。
ここで自分はある違和感を覚える。
(あれ…?海の頭にこんな“痣あったかな…?”)
海の頭の丁度デコの真ん中部分、黒いシミの様な、痣のような物が出来ていた。
さて、第1章はここで終わりだ。
今のところ何も分からないだろう?
そのように書いているのだ、当たり前だ。
一気に書いてしまってはつまらないからね。
君たちにはとことん付き合ってもらおう。




