現代魔女のおまじない。
短編が書きたくなりました。
美容院行ってるときに思いついた話です。
いつからだろう、
魔法というものが人の暮らしから静かに姿を消していったのは。
傷や病を癒やすなら、薬草を煎じるより薬局の薬のほうが早い。
火を灯すなら、魔術よりライターのほうが便利。
明日の天気は、占いよりもテレビの天気予報が確実だ。
そんな時代でも、魔女は一般人に紛れひっそりと暮らしている。
私もそんな現代魔女の一人だ。
魔女学校を卒業してから、
町の片隅に小さな美容室を開いた。
名前は《Lune》。
白い外壁に、古びた木のドア。
扉を開けると、ハーブとシャンプーの香りが静かに混じり合う。
光をやわらかく返すアンティークの鏡は、祖母が生前に使っていたものだ。
その鏡を見るたび、あの人の手つきや声がふっと思い出される。
ここが、私の小さな城。
私はここで人々に“おまじない”をかけている。
★☆★☆★
先日発売されたカット専門誌をめくりながら、
いつものようにトレンドを確認する。
ふうん、今はこういうのが流行っているのね。
今度、練習してみよう。
「風、強いなぁ……」
ふと、窓ガラスが小さく震える音に耳を傾ける。
ちらりと窓の外に目をやると、街路樹が激しく揺れていた。
「こういう日は、お客さんも少ないのよね」
小さくつぶやいて、雑誌を閉じる。
今日は早めに店じまいしよう。
そう思った、その瞬間──
カラン、とドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
雑誌をカウンターに置き、笑顔を作る。
立っていたのは、近くの高校の制服を着た女の子だった。
スカートの裾をぎゅっと握りしめ、視線を泳がせている。
「予約、してないんですけど……」
扉の隙間から秋の風がそっと入り、ドアベルの余韻を残した。
また思いついたら書きます。




