世を忍ぶ仮の
私は、施療院に担ぎ込まれ、治療を受けることになった。そこにいたのは、シスター剣士の、モネだった。
シスター剣士 モネ
これが、私とシスター剣士モネとの出会いとなった。
モネ「大丈夫ですか、レイドさん。今から治療を行いますので。」
この国では、攻撃魔法と剣士で魔法剣士、そして、回復魔法と剣士でシスター剣士、つまり、剣術と魔法の二刀流。
この国では、このような二刀流は珍しいことではなく、むしろ二刀流で、どちらの能力も生かせるようにするというのが、代々の王の方針で、義務化されていたのだ。
モネは小柄な少女だが、剣術も回復魔法も非常に優秀だ。細身の剣といって、見た目は細く、不安を感じるが、魔法の力が宿れば、強力な剣になる、そんな剣の使い手だ。
モネたちの治療のおかげで、私は一命をとりとめたが、立つことは・・・。
立つことは、できる!
モネ「やった!レイドさん、立てるようになりましたよ!」
なんと、モネの回復魔法のおかげで、立つことも、歩き回ることもできる!
ではなぜ、それでもあえて車いすに乗っているのかというと、世を忍ぶ仮の姿、というやつだ。
つまり、周囲の敵を欺き、油断させるための作戦なのだ。
レイド「というわけで、敵を油断させるためにも、旅先では車いすに乗って移動することにしよう。」
モネ「はい、わかりました。そういうことにしておきますね。」
あとで調べてわかったことだが、あのバルログという魔物は、魔王軍などの組織には所属しない、単独で勝手に行動する、いわば、『ローンオフェンダー』と呼ばれるような連中だ。
『ローンオフェンダー』という呼び方は、最近になって言われるようになった。
人間の犯罪者でも、『ローンオフェンダー』という、単独犯で、一人で恐ろしい事件を起こすような者をいうらしい。
そんな中、私は国王と王子と大臣、さらには新たに後任の剣術指南役になった、シュン・アケメネスなる者に呼び出された。
王子「レイド殿、あなたは僕の命の恩人です。あなたが命がけで守ってくれなかったら、僕も死んでいた。」
国王「王子を守ってくれて、ありがたく思う。しかし、そのためにそなたは車いすになってしまった、まことに心苦しい。」
国王や王子や大臣まで騙して、車いすでなければ移動できないと装う。それこそ、心苦しいことなのだが。
大臣「このような中、まことに急ではあるが、こちらの新任の剣術指南役、シュン・アケメネス殿より、レイド殿にお頼みしたいことがあるそうだ。」
そこに、一人の若い剣士が現れる。シュン・アケメネスだ。
シュン「レイド殿、お初にお目にかかる。
僕はこのたび、王子の剣術指南役を新たに仰せつかった、シュン・アケメネスと申す。
実は、レイド殿にお頼みしたいことがある。
レイド殿に、世界各地を旅して、各地の様子を逐一、我らに伝えてほしいのだ。
国によっては、我が国に戦を仕掛けようとする動きがあるやもしれぬ。
反対に、我が国と仲良くできれば、交易を行うことができるやもしれぬ。」
シュン・アケメネスは、私が本当は車いす状態ではなく、歩けるのにわざと車いす状態を装っていることもお見通しのうえで、わざわざこのような願いをしにきたのだ。
シュン「それと、レイド殿。確かあなたは、30年ほど前に、魔王を倒すため、勇者のお供をしていたそうだな。
そのことは、父や、国王や大臣から聞いておる。
この際だから、昔、冒険した場所などを、巡ってみてはどうか?」
レイド「なるほど、わかりました。そうしましょう。」
そして、新たな旅が始まった。ちなみに、シュン・アケメネス殿も同行するとのことだ。国内には魔道士部隊もいるから大丈夫とのことだ。
王子「僕も同行したいが、国を離れることはできない。」
シュン「ご心配なく。この僕がレイド殿をお守りいたします。」