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迷宮救命士 ~お前ら無茶しやがって~  作者: 星野サダメ


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5 迷宮省関東管区多摩迷宮支部

 5 迷宮省関東管区多摩迷宮支部 


 意識が戻り、慌てて周囲を確認するとダンジョンコアの広間のままだった。

 ダンジョンコアの魔力を抜き過ぎて破壊していたなら、見知らぬ大陸の見知らぬ土地に投げ出されていたはずなので一安心だ。

 台座の上にあるダンジョンコアを確認すると、小さな傷が残っている。

 その傷をつけた魔剣カーミラは足元に転がっており、当然私の手の中からもこぼれていた。

 そして私の内包魔力量は大幅に増しているが、魔王のように魔力を垂れ流している様子もない。

 予定通りと言えばそうなのだが、気を失うとは思わなかった。


 そこで異変に気が付く。

 目に入った手足の肌色がおかしい……。

 褐色のはずの私の肌色が、病的に見えるほどの白い肌色に変わっているのだ。

 もしやと思って髪を手に取って見てみると、妙な輝きのある白髪になっている。

 亜空間倉庫から手鏡を取り出し、顔の様子をしっかり見てみると、顔の肌色も褐色から白く変化しており、瞳の色も銀色にも見える光沢のある灰色に変わっていた。

 さらに角や翼に尻尾を出して確認してみると、こちらも髪色と同じような妙な輝きのある白い姿になっていたのだ。

 この色の変化は、まず間違いなくダンジョンコアから魔力を吸収したことが原因だとは思うのだが、なぜ白いのだ?

 そうしてダンジョンコアに目をやると、すぐに気がついた。

 これはダンジョンコアの色だ……。

 ダンジョンコアには意思があると言われているが、おそらくその意思の影響なのだろう。

 そうなると、魔剣カーミラの剣先が抜けなかったことや体が自由に動かなくなったことも、ダンジョンコアの意思の影響なのかもしれないと思えてくる。

 とは言ってもわからないことは考えても無駄なので、現実を見つめることにする。


 今の私は精霊種なので、角や翼に尻尾、髪色に肌色なども自由にできるため、実害はないに等しい。

 だが基本形態は決まっているので、それが変化してしまったことにはなる。

 とは言え、そもそも地球世界の男性から異世界の魔族の女性に転生した私なのだ。

 よほどに醜悪な姿へ変化をしたのなら、困りもするがこれくらいなら無害と言って良いだろう。

 と言うことで、白くなった自分に慣れるため、しばらくこの姿で行動をすることに決めた。


 意識を切り替え、ようやくダンジョンの中から地上へ出ることができる。

 帰還のための魔法陣は広間の品々を回収していた時に見つけてあるのだが、少しこの場でやっておきたいことがあった。

 ダンジョンコアの広間から地上へ転移すると、基本的にダンジョン入り口付近に転移する。

 ダンジョンの入り口は、スタンピードに備えて厳重な警備をしている場合が多い。

 そこに見知らぬ私が突然転移をしたなら、不審者として捕らわれる可能性がある。

 実際、地上の者たちからしたら間違いなく不審者なので、囚われることは許容するが、身に着けている愛剣たちを没収されることは避けたい。

 だからと言って無手で現れるのも不審すぎるので、アラクネ武者が落とした軍刀を腰に帯びることにした。

 軍刀の荒苦寝もかなりの業物だとは思うのだが、慣れ親しんだ愛剣たちを優先した結果の判断だ。

 と言うことで腰に帯びたシュテンゲールたちから荒苦寝に装備を変え、転移の準備は整った。


 地上がどんな場所なのか全くわからないので、不安は大きいが、ここから出なければ次に進めない。

 いざ……、見知らぬ場所へ。

 魔法陣に乗ると光の柱が現れ、浮遊感を感じるとすぐに光の柱は消えた。


 転移した先の地上には、何人かの人族がいることが確認できる。

 異世界の人々は、赤や青、緑に紫など髪色がやたらとカラフルだった。

 おそらく魔力の影響ではないかと考えてはいたが、よくわかってはいない。

 そしてこの場の人々も、同じくカラフルな髪色をしていた。

 やはり異世界のままか……。

 落胆する気持ちのまま、周囲を見渡すと、ここは広い空間のある大きな建物の中だとわかった。

 おそらくスタンピード対策のために作られた防衛設備なのだろう。

 だが魔族の大陸の建築様式とは大きく違い、近代的と言うべきか妙な既視感を覚える。

 こちらの大陸は、魔族の大陸よりも文明が進んでいるのかもしれない。

 それからしばらくの間、突然現れた魔法陣と私に周囲の人々は驚いていた様子だったが、その中の一人である青髪の中年男性が話しかけてきた。


「君は……、どこから現れたんだ?」

 素直にダンジョンコアの広間からと答えるべきかもしれないが、この男性が発した言語に私は固まってしまった。

 彼はなんと……、日本語を話していたのだ!

 さらに耳をすませば、周囲から聞こえる声も日本語ばかりであることに気がつく。

 なるほど、確かに私へ声をかけて来た男性も、現代地球世界にありそうな警備員のような服装をしているように見える。


「言葉が通じないのか?」

「あっ、いえ、わかります……。ですがわからないのです……」

 おそらくここは私の知っている地球世界の日本ではなく、私の知らない地球世界の日本だ。

 異界転移の魔法は成功していた。

 だが並行世界への対策までは術式の中に組み込んでいなかったことが答えだ。

 私はわからない、知らない、謎の地球世界へ来てしまったのだ……。


 高速脳内会議を開いていると、始めに話しかけてきた男性とは別の緑髪の女性が現れた。

「あの……、彼女が現れた魔法陣って、ダンジョンコアの広間からの転移に見られる魔法陣かもしれません。資料で見たことがあります」

「え、ってことは彼女がこのダンジョンを制覇したと?」

「だとしたら、すでにダンジョンの崩壊が始まっているはずですが、何も起きている様子には見えないのでダンジョンコアは無事なのかもしれません」

「うーん、どうするべきか……。とりあえず、スマートデバイスは持っているか?」

「ん……。ごめんなさい。よくわからないです」

「そうか……」

 何かデバイスとやらを持っている必要があるのかもしれないが、全く心当たりがない。

 2人は困り果てているようだが、私もどうするべきか混乱中だ。


「私はこのダンジョンの職員の今井美和と言います。お名前を教えてもらっても良いでしょうか?」

「えっと……、私の名前……、アンリです……」

 とりあえずアンリと名乗ることにする。

 幸いアンリは日本人でもあり得る名前だ。

 本来なら、地球世界に到着した後は、適当な買い取り業者で金目の物を売ってから、その現金でネットカフェに入って情報収集しつつ、その後の展開を考える予定だった。

 この予定の中で必要となる身分証などは、闇属性の幻影魔法でどうにかするつもりだったのだ。

 だが、今はダンジョンのある地球世界、安易に闇魔法を使えば見破られる可能性がある。


 姿を魔法で変え、人族の大陸へ行ったときは、可能な限り人目は避けて公の組織とは距離を置いていた。

 それにもし潜入がバレても、戦争中の敵国なのだから、適当に暴れて逃げることもできた。

 だが今はダンジョンの前で、その場所を管理している者たちとなると公の組織の可能性が高い。

 さらにここは敵国ではなく、私の知っている地球世界の日本人と近い価値観を持っている人々なら、簡単に暴れるわけにもいかない。

 安易に闇魔法を使えず、暴れることもできないのなら手詰まりだ……。

 闇魔法を使って無駄に疑いの目を向けられるよりも、後でバレる可能性は高いが、記憶喪失のふりでもした方が良いかもしれない。


「この場所に転移する前はどこにいたかわかりますか?」

「それがよくわからなくて……、記憶が変なんです……」

「えっ……、記憶ですか。確かダンジョン内に長期滞在をしすぎると重度の魔力汚染による記憶障害が起こると聞いたことがあります」

「ってことは、やはりダンジョンの中からってことか……。何かの事件に巻き込まれていたかもしれないから警察と病院へ通報をするべきだろうな……」

「そうですね……。アンリさん、今は不安かもしれませんがもう大丈夫です。アンリさんは私たち、迷宮省関東管区多摩迷宮支部が保護をさせていただきます。そうさせてください」

 迷宮省だと?

 もう何が何だかわからないが、このビッグウェーブに乗るしかない!

「よくわかりませんが、よろしくお願いします」


 こうして私は見知らぬ地球世界で謎の組織、迷宮省に保護されるのだった。


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