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迷宮救命士 ~お前ら無茶しやがって~  作者: 星野サダメ


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18 地球世界の現状

 18 地球世界の現状


 先日、ラビリンスモールでパソコンを購入して、様々な情報に触れることができるようになった。

 そうなるとゲームだけではなく、いよいよ私にとってのパラレルワールドであるこの地球世界のことやこの日本と言う国のことが調べたくなる。


 手始めにダンジョンがいつからこの世界に存在したかを調べてみると、今から約100年ほど前の西暦1920年代初頭に出現したとわかった。

 まだ約100年か……。

 私がいた異世界では、記録が残っている限りでも約1万年程前からダンジョンが存在していたようなので、存外に最近に出現したことになる。

 ダンジョン出現以前の歴史を見ると、私の知っている歴史通りに天皇家を中心にした大和朝廷、源頼朝による鎌倉幕府、徳川家康による江戸幕府などが存在していたことがわかった。

 明治維新から日清戦争や日露戦争は起きているが、この世界での世界大戦は1度しか起きておらず、第2次世界大戦時のドイツによるホロコーストもアメリカによる広島と長崎への原子爆弾投下も起きていない。

 そして西暦1920年代初頭、今までに全く記録のない大規模な流星群が地球に降り注ぎ、これがダンジョン出現の原因とされているようだ。

 流星群が降り注いだ後、世界中にダンジョンが出現し、すぐに各国は調査を始めるが、間もなくして世界中のダンジョンで同時的にスタンピードが発生した。

 そうして世界が混乱する中、各国は約10年程の時を掛けて、魔物たちを人類の生活圏から一掃することに成功する。

 だが、無政府地域や到達困難地域に発生したダンジョン周辺までは、駆除することができず、未だに魔物の地となっている地域があるそうだ。

 このダンジョン出現から世界同時スタンピードの終息までを日本では『迷宮事変』と呼んでいる。

 なるほど……、私の知る歴史と比べると第2次世界大戦の代わりに、全世界的スタンピードが起きたのだと考えることができる。


 また迷宮事変の最中の日本では、明治維新後に成立した公家や大名からなる華族と軍が激しく対立していたらしい。

 結果的に軍がこの争いに勝利し、天皇家と宮家を残して、華族制度は廃止に追い込まれている。

 過程は全く違うが、私の知る地球世界の歴史の流れと近い流れをしているようだ。

 違うところと言えば、財閥解体がされていないことや日本の領土が私の知る日本よりも広いことか。

 私が知る日本列島と諸島の他に、千島列島と樺太島、それに台湾島が現在の日本の領土となっている。

 樺太島と千島列島は、シベリア地域のほぼ全地域が魔物の地となっているらしく、迷宮事変の直後の、のちのロシアであるソビエトでは管理が難しいとのことで、日本の領土とされた。

 また台湾島は、日清戦争後に締結された下関条約が未だに有効となっており、世界的に台湾島は日本の領土と認められている。

 だが大陸の領土は当時の中華民国に返還され、朝鮮半島も独立国家となった。

 そして現在の東アジアの国家と地域は、海洋国家の日本皇国、朝鮮半島南部の大韓民国、朝鮮半島北部の朝鮮民主主義人民共和国、中華地域南部の中華民国、中華地域北部の中華人民共和国、ほぼ無政府状態のロシア連邦シベリア自治州となっているようだ。

 中華民国と中華人民共和国は、清が倒れた後に中華民国が成立しているのだが、迷宮事変後に内戦が起きて中華人民共和国が独立している。

 大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国は、西暦1910年の日本による朝鮮併合後から日本の領土となっていたが、約30年後に朝鮮共和国として独立している。

 だが、それから間もなく内戦が起こり、2つの国に分かれたようだ。

 この中華2国と朝鮮2国は、それぞれ未だに講和条約などを結んでいない停戦状態で、台湾が未だに日本の領土であり続けている理由にこれらの国家の紛争の影響があるのだろう。

 またロシア連邦シベリア自治州のカムチャッカ半島には、この自治州で唯一の都市と言える街があるのだが、日本の経済圏に依存しており、度々日本への編入が叫ばれているそうだ。

 うーん……、東アジアの国際状況を眺めてみると、微妙なバランスは保たれているものの、安定しているとはとても言えない状況なのかもしれない。


 他の地域の様子を眺めると、私の知る地球世界よりもロシアが力を持っていないらしく、その影響なのか欧州地域や中東地域が全体的に安定しているように感じる。

 それでも東ヨーロッパやイベリア半島の紛争は起きているし、イスラエルは成立しているので、中東戦争も起きているようだ。

 また人種問題も人類共通の敵である魔物がいる影響なのか、アメリカ合衆国を中心とした公民権運動は穏やかに行われている。

 こう見ると、人類は、ダンジョンの存在に助けられているところがあるのだろう。


 ここまで歴史的視点で眺めてみたが、今度は地理的視点で眺めてみる。

 そうすると、明らかに異常としか言いようがない状況が見えて来た。

 それは、この地球世界にダンジョンが現れてから地震や火山の噴火が見られないのだ。

 例えば日本の場合、関東大震災が起きておらず、その後のいくつかの大地震、とりわけ阪神淡路大震災と東日本大震災が起きていないことには驚いた。

 また伊豆大島の三原山や長崎の雲仙普賢岳の噴火も起きておらず、それ以外にもダンジョン出現後の火山活動についての記録が全くなかったのだ。

 これは世界的に共通しているようで、ハワイやフィリピン、アイスランドなどの火山群でも噴火活動が鎮静状態らしい。

 だからと言って温泉が枯れているようなこともなく、ダンジョンが出現した時から地球全体の熱活動が固定されてしまったように感じてしまう。

 とは言え、気流や海流は問題なく動き続けているので、何とも不思議な状況のようだ。

 あくまで可能性の話になるが、ダンジョンが地球の熱エネルギーの一部を使い、ダンジョンの維持や魔物の生成、魔力の散布などを行っているとしたなら、一応の理解はできる。

 また不思議なことに海には魔物がおらず、スタンピードの時に地上から海に出る魔物もいないので、おそらく海底にはダンジョンが出現していないと考えられている。

 このことから人類にとって海中が新たなフロンティアと考えられてもいるらしい。

 もしかしたらダンジョンには意思があり、現在の地球世界における支配種である人類に合わせてダンジョンを地上へ出現させたのかもしれない。

 とは言え、いくら考えても答えの出ない問題なので、この辺りにしておこう。


 ついでに気になって調べてみたことにエネルギー問題がある。

 魔力はあらゆるエネルギーに変換することが可能なので、魔力が含まれている魔石がどう使われているのかが気になったのだ。

 そしてわかったことは、この世界に原子力発電は稼働しておらず、代わりに魔石による魔力発電が広まっていることがわかった。

 それ以外になると、火力、水力、風力が使われており、エネルギー効率はかなり良いらしい。

 だが、原子力の研究はされており、残念なことに原子爆弾も過去のスタンピードで使われていることがわかった。

 とは言え、原子力は正しく使えば、様々な恩恵を与えてくれる技術でもあるので、可能な限り安全に使い続けてほしいと願う。


 つぎにダンジョンについてだ。

 まだ確信は持てていないが、ダンジョンの魔物が異世界の魔物よりも弱いように感じている。

 私が激しく負傷したり、命の危機を感じるような魔物は、異世界でも多くはなかったが、それにしても手ごたえがない。

 まだまだダンジョンは成長中で、この先に今よりも強力な魔物が出現するようになるのかもしれない。

 多摩迷宮から近いダンジョンに、習志野迷宮と藤沢迷宮がある。

 時間が取れた時に、行ってみても良いかもしれない。


 歴史と地理、それに私と縁のあるダンジョンについての情報は、ある程度だが集めることができた。

 そうなると、これから私はどう生きるべきかを考えることもできるようになる。

 そこでダンジョンに関係する職業をいくつか調べてみた。

 まずはわかりやすいところで探索者だ。

 迷宮へ入り、魔物を倒し魔石やドロップアイテムを持ち帰って現金にしたり、武器防具を強化するために使う。

 真面目にやっていれば、人一人分の生活費を無難に稼ぐことはできるようなので、戦い続けることができるのなら悪くはない職業なのだろう。

 今の私には、最も現実的な職業ではあるが、戦い続けることは本当に辛いことなので、可能ならあまりやりたくはない。


 次にドロップアイテムを加工するメーカーなどの研究員についてだ。

 私が知っている異世界の知識をメーカーに流せば、今よりも高品質なドロップアイテムの加工品を世に出せるようになるかもしれない。

 だが、残念なことに研究員になるには、それ相応の学歴が必要らしいのだ。

 今の私に大学へ通って、その後に修士課程や博士課程に進むだけの気力はないので、残念ながら却下にするしかない。

 探索者用品の販売をする企業への就職も考えてみたが、これでも魔王軍の幹部をしていた私なので、今更になって接客ができるのかが不安すぎて却下とした。

 そうして残るは迷宮省職員があるが、この世界の常識にうとい私が国家公務員試験に受かるとは思えない。

 朱里さんや令奈さんは、高校卒業と同時に入省しているようだが、2人とも国家公務員の試験を突破しているだけのことはあり、かなり頭が良い印象がある。

 今の嘱託職員から正職員へ移行できる制度もあるようだが、やはり難関な試験を突破する必要がありそうなので、迷宮省にいつまでもいられると思わない方が良いのだろう。


 そうして、さらに調べた結果、二つの資格のことを知ることができた。

 1つ目は『迷宮療法士』と言う資格で、病に苦しむ患者を迷宮内まで連れて行き、治癒魔法で癒す職業の資格となる。

 普段は病院に勤務し、迷宮治療を希望する患者を医師から紹介され、治癒魔法で快癒の可能性があるかを判断し、最終的に迷宮内で治癒魔法を使うわけだ。

 治癒魔法には怪我を癒すヒール系と毒や麻痺を癒すキュア系があり、主にキュア系を使うことになるのだろう。

 もう1つの資格は『迷宮救命士』と言う資格で、迷宮内の救難者を救い出す職業の資格となる。

 普段から迷宮支部に待機し、救難信号が出ると即座に出向いて救難者を回収し、迷宮外へ運び出す。

 即応性が必要なので、迅速な機動性と高い戦闘力が必要になる仕事のようだ。

 この2つの資格は、国際資格になるのだが、残念なことに日本では病院の受け入れ態勢の問題と迷宮省の組織の問題で、運用実績が乏しいらしい。

 それでも取得は可能で、ある程度の戦闘力と光魔法のスキルを持っていれば専門学校に通い、最短1年間の学習期間で受験資格を得ることができる。

 また迷宮療法士と迷宮救命士の受験資格を同時に取得することも可能らしい。

 とりあえず、今年は高認の合格を目指し、来年は専門学校への入学から資格取得を目指すことになりそうだ。


 さて……、実は……、異界転移に必要な魔力はダンジョンコアから吸収することで確保できると予想ができている。

 本当にこの世界が辛ければ、異界転移の魔法を改造し、私のいた地球世界へ改めて渡ることもできるのだ。

 だが、この世界でやれるだけやってみようと思っている。

 なぜか私は、この地球世界が好きになり始めているらしい……。


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