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第91話

ため息を吐きながら、何が一番効果的かを考えて即効性のある方策を実施することにした。


彼らのプライドをへし折るのに最適なのは武力行使である。


獣人や魔族にとっては俺は単なる優男で、賢者らしく脆弱だと舐めた空気を出されることもあった。


それならば、その脆弱な優男に叩きのめされたらショックは大きいはずである。


ただ、さすがに彼らと戦うのにリスクがないわけではない。


模擬戦を申し込んで辛勝や惜敗したところで大した効果はなく、身体能力で人族よりもはるかに優れた彼らに必ず勝てるかといわれればそこまで自信家ではなかった。


そこで殊勝な態度で稽古をつけて欲しいと申し出たのである。


もちろん、何日かをかけて彼らの鍛錬を観察していた。呼吸や筋肉の動き、スピードやパワー、どういった体術を使うかまで見させてもらっている。


俺とエフィルロスとの一戦についてはマイグリン以外はわずかな者しか知らない。ビジェにも「初見殺しで負けた」としかエフィルロスが言っていなかったため、俺の使う合気道の詳細はほとんど知られていなかったのだ。


油断しているところを瞬殺する。


もちろん実際に殺したりはしないが、その作戦でいくつもりだった。




「ぬぉ!?」


ヴェーハートが背中から叩きつけられて声をあげた。


なぜかはわからないが、稽古をつけて欲しいというとまず特攻部隊長が出てきたのだ。それを軽く倒すと、次にこの獅子獣人が向かってきたのである。


周囲は呆気にとられた顔をしていた。


相変わらず、合気道の技を見切れる者はいなかったため、苦労せずに二連勝である。


「なんだあれは···。」


「まさか、あれは伝説のユルティム・コントラタックか!?」


ん···?


場内がザワつくのはわかるが、ユルティム・コントラタックって何だ?


そして、なぜ君が俺の前に立つ?


「驚きました。まさかソー殿が、伝説の武芸ア・マシオウの終局(ユルティム・)の逆襲(コントラタック)の使い手だったとは。」


え、何言ってるのかわからない。


「何それ!?」


「古代最高の武芸者であるマシオウが到達したといわれる究極技です。その技は間合いに入った相手の攻撃をすべて無効化し、痛烈な反撃を加えるという武芸の到達点。久しぶりに血が滾りました。ぜひお相手を。」


マシオウって誰!?


しかも闘気みたいなのをまとうのはやめて。


「嫌です。」


「···なぜですか?」


「なぜも何も、そんな伝説の技じゃないから。」


「謙遜しなくても大丈夫ですよ。」


いや、謙遜じゃないから。


まだ死にたくないんです。


「あ、いたぞ!?」


そのときにブローナンヴィルが血相を変えてやってきた。


「ソー、遊んでいる暇はないぞ!今からコークス生産設備の最終打ち合わせだ。」


ブローナンヴィルはそう言って俺の襟首を掴んで引きずって行こうとした。


「普通に歩きますよ。」


俺はそう答えてその場を去ることにした。殺戮ウサギ(ヴォーパルバニー)からの緊急避難だ。


それにしてもマシオウか···ちょっと気になるから調べてみよう。


「賢者様は伝説のマシオウの後継者でもあるのか···」


通りすがりにそんな言葉が耳を打ったが聞き流すことにしよう。


いちおう、後をついてくるビジェには「ごめんね」と言っておいた。


「仕方がありません。また時間があるときにお相手をお願いします。」


俺は曖昧に笑っておいた。


これは対策が必要だな。


でなきゃ死ぬ。




「本当ですか!?」


珍しくビジェが声高に反応した。


「うん、ビジェさえよければ技を伝授するよ。」


「一手お相手を」というビジェから逃れるために出した答えはそれだった。


想定として、ビジェは今日やりあった軍人ふたりよりも強いと感じている。


技術的な面は見ていないのだが、普段の身のこなしだけでわかるものがあるのだ。


彼女はまったく無駄な動きをしない。そして、それ以上に全身のバネがとてつもなく高次元レベルなのである。


彼女と一手交えるとした場合、その勝敗は俺の反射神経や動体視力、そして反応速度で競り勝てるかがポイントとなるだろう。


戦闘時の動きを見れば気を読みやすくなるのだが、初めての相手でも呼吸や目線などに気を合わせることで対応はできるものだ。


しかし、彼女の身体能力は前世の常識を超えている気がする。


もちろん、ティファがそうであったように、身体能力強化の魔法を使う者は往々にして存在した。だが、魔法というものは一瞬の溜めなのか詠唱かはわからないが、若干のタイムラグが発生することを掴んでいる。


そういった意味では気を合わせやすくなるといえよう。そして、俺が相手に触れれば魔法は解除されてしまうようだ。


これについては魔力がないことに起因していると思えたが、あまり前例がないためはっきりとした理由はわからなかった。




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