6 ソフィーちゃんの笑顔は最強だよっ!
芝すべりの続きです。みんなが楽しむ様子になごんでもらえたらうれしいです。
「な、なんなのです? この芝すべりは! はっ、これはまさかのトラップが仕込まれて……」
「そんなはずないでしょう。単に美桜のブレーキミスよ」
メイお姉ちゃん、冬夜兄ちゃん、ソフィーちゃんが準備している間に、フライングで美桜ちゃんがスタートした……んだけど、あたしとおんなじでゴール地点で勢いよくすっ転んでしまった。しかも、ゴールした途端に一回ジャンプして空中で体勢を立て直し、見事な受け身で芝生を転がるというアクロバティックな動作つきで。周りの人たちが、どよめいてたよ!
「美桜ちゃんすごいね……」
「あたしにもまねできないよ、あれは」
── 美桜ちゃんの身体能力高すぎじゃない!?
あたしたちが呆れている後ろで、言乃花お姉ちゃんが額に手を当ててため息を吐いていた。
「あれ? 言乃花お姉ちゃんはすべらないの?」
「私はいいわ。それに、この格好でするのは、ね」
そっか。お姉ちゃんたち制服だもんね。スカートですべるのは大変そうだ。
── ん? じゃあメイお姉ちゃんはどうするのかな。
メイお姉ちゃんは冬夜兄ちゃんの後ろに乗せてもらっていた。
となりでソフィーちゃんもそりに乗っている。
三人で一緒にすべり降りてきた。
冬夜兄ちゃんの合図で三人ともきれいに足ブレーキをして止まると、そりを持って歩いてくる。
「久しぶりにやったけど、面白いな。メイ、どうだった?」
「うん、気持ちよかったよ。美桜ちゃんが転んじゃったからちょっと心配だったんだけど、ブレーキをかければ転ばないんだね」
「うふふ、これ、とっても楽しいね。メイ、こんどはわたしとすべらない?」
「ふふ、ソフィーとすべるのも楽しそう」
その時、美桜ちゃんが言った。
「それならば冬夜お兄ちゃん、美桜たちと勝負なのです! 勝った人のお願いを一番負けた人が聞くのですよ」
「え? 私はちょっと……」
── れーちゃんは勝てない勝負はしない子なんだよね。この四人では負けそうだって思うよね。うんうん。
れーちゃんがジトッとした目で見てきたけどあっさり無視した。
「そうだな。美桜ちゃんが俺に勝ったら、一つだけ願いを聞いてやるよ。ただし、この園内でできることだぞ」
「やったあ! なのです。それではみんなで行くのですよ」
あたしたちは階段を上ると、横一列に並んだ。ソフィーちゃんとメイお姉ちゃんは後からすべってくることになり、メイお姉ちゃんがスタートの合図をしてくれることになった。
「それじゃあ、いくよ。用意、スタート!」
── あたしとれーちゃんは何回か練習してるから、簡単には負けないよ!
って思ってたんだけど、あたしたちの横をものすごい速さで冬夜兄ちゃんがすべり降りていった。
「え? はやっ!」
うっかり見とれてしまったので、転ばないようにあわててゴール手前でブレーキをかけた。
一回戦は冬夜兄ちゃん、あたし、れーちゃんと美桜ちゃんはほぼ同時という結果だった。
「ちっ、ブレーキを早くかけすぎたのです。冬夜兄ちゃん、もう一回勝負なのです!」
「はは、何回でも受けてやりたいところだけど、メイとすべる約束をしているからな」
「むう、メイお姉ちゃんは一人ですべればいいのです!」
「美桜ちゃん、無理言ったらダメだよ。メイお姉ちゃんが一人ですべるのはやめたほうが良くない?」
「……しかたないのです。次はみんなで勝負なのです!」
あたしたちが話している間に、ソフィーちゃんとメイお姉ちゃんが一緒にすべり降りてきた。
「ソフィーとすべるのも楽しいね」
「メイ、これ、すっごくおもしろいね」
── あー、ソフィーちゃんの笑顔、いやされるー。
その時、ふと周りが静かなのに気がついた。父さん、母さんたちだけでなく、この広場の周りにいる人みんながほっこり笑顔になってソフィーちゃんたちを見ていたんだ。
── さっすがソフィーちゃん。ソフィーちゃんの笑顔はみんなを幸せにするんだね!
ソフィーちゃんにはみんなを笑顔にする不思議な力があるのかも知れませんね。
続きをお楽しみに。
それでは、また2週間後にお会いしましょう。




