2 妄想注意報発令中
「遅いのです! 昨日は大変だったのですよ。今日はいーっぱい遊ぶのです!」
次の日、あたしとれーちゃんが特別寮前に転移すると、もう美桜ちゃんが待ち構えていた。
── 昨日のこと、ソフィーちゃんに聞きたかったんだけどな……。
「早速遊びに行くのです」
そう言ってあたしたちの手を握ると途端に走り出そうとする美桜ちゃんに、
「わわ、ちょっと待ってよ、美桜ちゃん! せめてソフィーちゃんに挨拶させてよ。それに眼鏡ももらわないと困るんだよ」
慌てて止めていると美桜ちゃんの手から思念波が感じ取れた。
『早く逃げないとまたお姉ちゃんに宿題をさせられてしまうのです!』
── あー、なんとなくそうじゃないかとは思ってたけどね!
思わず吹き出しそうになるのをこらえてると、反対側でれーちゃんも口を押さえていた。
「む、なんなのですか二人とも。何かおかしいことでもあるのですか?」
「ふふ、美桜ちゃん。逃げても宿題は減らないよ」
「な、なぜ宿題のことを知っているのですか! だ、大丈夫なのです。後でやれば問題ないのです!」
「あー……美桜ちゃん。残念だけど言乃花お姉ちゃんにはバレバレだと思うよ?」
「そんなことはないのです。お姉ちゃんは図書館でお仕事をしているからバレるはずはないのです」
あたしは黙って美桜ちゃんの肩の辺りを指差した。そこには水色の透明な羽を持つあの蝶が止まっていた。
「な、いつの間に!」
その蝶が羽を震わせると言乃花お姉ちゃんの声が聞こえてきた。
『美桜、やっぱり逃げようとしたわね。しーちゃん、れーちゃんいらっしゃい。申し訳ないのだけれど、美桜を図書館に連れてきてくれるかしら。美桜、きちんと宿題を持ってくるのよ』
「はいなのです……」
肩を落とす美桜ちゃんを連れて扉をノックすると、ソフィーちゃんが開けてくれて食堂に入った。美桜ちゃんはここで宿題をしていたみたいだ。
── うわ、本当だ。まだ半分しか終わってないよ。
開いていた問題集はまだ真ん中くらいの場所だった。しおしおと片付けながら美桜ちゃんがブツブツ言っているのが聞こえた。
「まだ夏休みは半分残っているのですから半分終わっていなくても問題ないと思うのです……それなのにお姉ちゃんは……ハッ、そういえばしーちゃんとれーちゃんは宿題はないのですか?」
「ん? あるに決まってるじゃん。だけど、ふ、ふ、ふ、今年のあたしは余裕だよ! 問題集はとっくに終わっちゃったよ」
「な、なんですと!? れ、れーちゃんはどうなのです?」
「私も宿題はほとんど終わったかな? 後は自由課題だけだね」
「なんということでしょう……」
目に見えてガーーンとなっている美桜ちゃん。
── ま、あたしもそうなるところだったけどね。
「あたしはさ、宿題終わらないとれーちゃんと遊んじゃダメって言われてたからね。だから必死で終わらせたんだよ」
「私は母さんがそういうのに厳しいから。毎年宿題はほとんど七月中に終わらせてるよ。『しーちゃんと遊びたかったら宿題終わらせなさい』って言われてたし。それにね、終わらせとくと残りの夏休みぜーんぶ楽しめるでしょう?」
「……なるほどなのです。確かに一理あるのです」
「美桜ちゃん、あたしたちこれからも遊びに来るからさ、宿題終わったらいっぱい遊ぼうよ」
「わかりましたなのです。そうと決まったら今日中に全部終わらせるのです!」
美桜ちゃんの身体からまたピンク色の光が溢れ出してきた。
「美桜ちゃんの身体から出ている光って魔力なの?」
「そうなのですよ。これはオーラという魔力の光なのです。この光が強いと強い魔法が使えるのですよ」
「そうなんだ」
「そっか。これが魔法の力……」
── おっと、またもやれーちゃんの目がキラキラしてきたよ! 妄想注意だ!
あたしはこっそり肘を曲げて準備をした。
姫様たちのことは、後ほど(鬼)
今回はどんな騒動が待ち受けているんでしょう?
2週間後をお楽しみに!
面白いな、続きが気になる!っと思っていただけたら、ずーっと下の方にある⭐️をポチポチポチっと押したり、ブクマ、いいねで応援してください。
感想もらえるとまりんあくあが大喜びします。レビューいただけると、変な舞いを踊って喜びます。
それでは、また2週間後にお会いしましょう。




