20 お手紙を書こう
学園を去る時間が近づいて来ました。
今回はスペシャルゲスト回です。ゲストはお名前のみの登場ですが、箱庭本編でも何度かお名前の出ているあの方ですよー。
ほのぼの回お楽しみください。
おやつを食べ終えたあたしは、ソフィーちゃんと一緒に中庭の噴水近くにある花壇へ来ていた。そこがソフィーちゃん専用の花壇なんだっていうことは、アプリで通話しているときに教えてもらっていた。ソフィーちゃんの花壇には色とりどりのチューリップが植えられていたけれど、満開は過ぎて花が散り始めている。
「本当にチューリップ植えてくれたんだね」
「うん。しーちゃんが教えてくれたから学園長にお願いしたの。たくさん綺麗な色で咲いてくれたよ。でも、満開のときに見てもらいたかったな」
通話しているときにソフィーちゃんが花壇をもらった話をしてくれて、
『どんな花を植えたらいいのか考えてるところなの。しーちゃん、何かおすすめの花はある?』
と聞かれて、
「それならチューリップがいいんじゃない?」
て答えたんだ。本当に植えてくれたことがとっても嬉しい。ビデオ通話ができるようになってからこの花壇も見せてくれたけれど、画面でみるよりも本物のほうがやっぱり何倍も素敵だよね。
「ううん、まだとってもきれいだよ。見せてくれてありがとう! だけど、そろそろ切っちゃったほうがいいよ。母さんが教えてくれたんだけど、チューリップって花が終わったらすぐに茎を切った方がいいんだって。そうすると土の中で元の球根が新しい球根を作るんだってさ。そうすれば来年も綺麗な花を咲かせてくれるらしいよっ」
「そうなんだ。来年も咲いてくれたらうれしいな」
ソフィーちゃんがにっこり笑った。それからあたしたちはすぐ近くにあるソフィーちゃんお気に入りの東屋に入っていった。ソフィーちゃんはよくここでビデオ通話をしてくれるから、知っていた場所だけど、実際に来て見てみると、とっても居心地の良い場所だってよく分かった。中の椅子に隣同士で座って花壇をゆっくりと眺めた。そのとき、ソフィーちゃんがいちごの鞄からお手紙セットを取り出して、鉛筆と一緒に差し出してきた。
「ソフィーちゃん、ありがとう。ねえ、うさみちゃんって私の世界の字、読めるかなあ?」
うさみちゃんは、ソフィーちゃんのお友達であたしと同じようにこことは別の世界にいるうさぎのぬいぐるみだ。なんと魔法が使えるすごいうさぎさんらしい。ソフィーちゃんは一人で森にいるときに出会ったんだって。それから時々文通しているらしい。うさぎちゃんにあたしのことを知らせたら、『会ってみたい』ってお返事が来たらしい。だから、あたしもうさみちゃんにお手紙を出すことにしたんだ。
── だけど、あたしの世界の文字読めるのかな?
って心配になってソフィーちゃんに聞くと、笑って答えてくれた。
「わたしのお手紙も読んでくれてるから大丈夫よ、きっと。それに、うさみちゃんにはすごく賢いお友達がいて難しいところは教えてくれるって言ってたわ」
「そうなんだ、すごいね。あーあ、うさみちゃんにもそのお友達にも会ってみたいなー」
「本当ね。わたしも会いたいな、もう一度うさみちゃんに」
それから二人で手紙を書いたんだよ。
『うさみちゃんへ
はじめまして 小鳥遊 詩雛、しーちゃんです。この手紙はソフィーちゃんと一緒に学園で書いています。学園長が招待してくれて遊びに来ました。学園の人はみんな優しくて、私には師匠が出来ました。今度来たら魔法を教えてもらいます。今日は実験に失敗しちゃったけど、次は成功させたいです。私もうさみちゃんに会いたかったな。次はうさみちゃんと三人で会えるといいな。うさみちゃんの世界のお話が聞きたいです。ソフィーちゃんが強くてかっこいいうさぎさんだって言ってました。会えたら私にも魔法を教えてください。師匠には素質あるって言われたので楽しみにしています。この手紙はソフィーちゃんにたのんで届けてもらいますね』
あたしが書いている間にソフィーちゃんも手紙を書いていた。出来上がった手紙はソフィーちゃんが読んでくれた。
『うさみちゃん、元気に冒険続けていますか。今日はしーちゃんが遊びに来てくれました。とっても元気な女の子で、二人で学園を探検しました。実験室でどっかーん、と爆発したときはびっくりしたけれど、しーちゃんはとっても楽しそうでした。迷宮図書館でしーちゃんが迷子になって心配したけれど、無事に見つかってほっとしました。次はうさみちゃんと三人でお話し出来たらいいな。またお手紙書きますね。ソフィーより』
書き終わるとお別れの時間が迫っていた。
「次に植える花は秋に咲くものがいいね」
「ふふ、そうだね」
名残惜しいけれど、あたしたちは手を繋いで入ってきた門の方へ向かった。門の前に冬夜兄ちゃん、メイお姉ちゃん、リーゼお姉ちゃんと言乃花お姉ちゃんも立っている。メイお姉ちゃんが少し屈んであたしに言った。
「しーちゃん。今日はソフィーと遊んでくれてありがとう。これからもソフィーのことをよろしくね」
「うん。ありがとうメイお姉ちゃん。あたし、ソフィーちゃんのこと大好きだよっ。あーあ、もうお別れかー」
そう思うと悲しくなってくる。あたしが俯くと、メイお姉ちゃんが頭をなでてくれた。
「またいつでも遊びに来てね」
って言ってくれたけど、
「次って来られるのかな」
思わず涙が出そうになって、別の方向を見たらいつの間にか学園長さんが立っていた。
「な、いつの間に?」
リーゼお姉ちゃんが驚いて声を上げると、
「あれえ。僕がいないとしーちゃんが帰れないでょ?」
と楽しそうに笑った。
20話目をお届けすることが出来ました。ここまでお付き合いいただきありがとうございますm(_ _)m!
ここまで章は立てていませんが、初回の学園訪問は次回で終わります。
今回は以前もお名前の登場したうさみちゃんへのお手紙回です。本編でソフィーちゃんがお手紙を書いていたお人形仲間です。
うさみちゃんの登場する物語は、こちら
「見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜」
https://ncode.syosetu.com/n1094hm/139
箱庭本編とはこれからもどんどんリンクしていきます。お楽しみに。
まりんあくあの本編とは?? ふふふ、だってコラボ小説ですよ。ということは、いずれ……ね。
本編の宣伝です。
しーちゃんが登場する物語
「古墳に入ったら、異世界の姫様の協力者にされてしまったので、日本を救って異世界に転生します! ─WE ARE ALLY. SAVE THE PRINCESSES OF EMULIA. ─」
はこちら
https://ncode.syosetu.com/n5917gw/
ソフィーが登場する物語
「絶望の箱庭~鳥籠の姫君~」
はこちら
https://ncode.syosetu.com/n3370hf/
それでは、また2週間後の10時にお会いしましょう。