15 説教されたのは、誰?
前回の逆タイトルです。
言乃花に説教されたのは……?
言乃花ファンの皆様、今回は待望の(?)お仕置き回です。
入口に立っていたのは、肩で切り揃えたまっすぐな黒髪に眼鏡をかけた女の人。風はその人から吹いてくるみたい。さすが魔法学園だねっ! じーっと見ていたらその人が手を差し出して私を立たせてくれた。
「あなたがしーちゃんね、初めまして。椿 言乃花です。怪我はない?」
「あ、うん。大丈夫。はじめまして、言乃花お姉ちゃん」
すると言乃花お姉ちゃんは優しく微笑んでくれた。それから、
「しーちゃん、ここは副会長が個人の実験室として使っている部屋よ。危険なものがたくさんあるから、なるべく入らない方がいいわ。何を実験されるか分かったものじゃないわよ」
「え? そうなの? 師匠、魔法のこといっぱい教えてくれたよ。実験失敗しちゃったけど、面白かったよ!」
「そう? あ、ソフィーちゃん、少し長くなるから座ってて」
「はい」
その時、初めてソフィーちゃんが心配そうに見てくれていたことに気付いた。
── しまった。実験に夢中になってて全然気付かなかったよ。
友達を放ってちゃ駄目だよね、反省反省。謝らなくちゃとソフィーちゃんの側に行くと、
「副会長。後でゆっくりと話を伺いますのでそのままでお待ち下さいね」
言乃花お姉ちゃんが笑顔で言うと(笑顔がコワイ気がするのは気のせいだよねっ)、師匠の視線がどんどん遠くなり、モゾモゾと身体を動かし始める。
── どうしたのかな?
と思っていると、言乃花お姉ちゃんが近くに来て、
「しーちゃん、詳しくお話聞かせてくれるかな?」
と聞かれたので、あたしはさっきの実験のことを話したんだ。
「……でね、あっちの液体と、こっちのを混ぜたところに、『魔力を流して』って言われたからやってみたら、どっかーん、てなっちゃった!」
「そうなんだ、びっくりしたね。怪我がなくて良かったわ。……あのね、しーちゃん。この部屋のものは、使い方を間違えるとさっきのように簡単に爆発してしまうこともあるの。危ないから、絶対に一人でこの部屋に入ったり、勝手に使ったりしないでね」
「うん、分かったよ」
「じゃあ、しーちゃん。もうそろそろお昼だから、この後食堂に案内するわね。その前にこの二人と話をする間、ソフィーちゃんと待っていてくれる?」
そう言うと言乃花お姉ちゃんは正座している師匠とリーゼお姉ちゃんのところへ歩いていく。
── あ、また涼しくなったよ。
「リーゼ。あなた、何をやっているの? 冬夜くんやメイさんに校内を捜索させる必要はあったのかしら。あなたがそこまで怒るほどのことかしら?」
「う、それは、あの……。とにかく不審者であることに変わりはないでしょう!」
「そうね。でもあなた、考えてみた? 彼女は別の世界の子なのよ。普通なら来られるはずのない、ね。あなた自分で言ったわよね。あなたが警戒するべきなのは、誰?」
リーゼお姉ちゃんはハッとしたように口に手を当て、何か小さい声で言ってるみたいだったけど、残念ながら聞こえなかった。それを見て頷いた言乃花お姉ちゃんが続ける。
「そういうこと。もちろん彼女に危険がないのか調べる必要はあるわね。でも、それは副会長が確かめたのではなくて?」
リーゼお姉ちゃんがジロリと師匠を睨みつけているうちに、言乃花お姉ちゃんは机の上にあった試験管を手に取った。あたしが師匠に言われて魔力? を流した試験管だ。それを洗い場へ持っていくと、静かにそれを傾けて中に入っていた水色の液体を全部捨てちゃった。試験管を綺麗に水で洗い流していると、
「ああっ! 貴重なサンプルに何てことをっ!!」
悲鳴を上げて立ち上がろうとした師匠が、見事にすっ転んだ。
「うわっ、何だこれは!? 私の下半身はどこへ行ったのだ!?」
「バカなの? しびれただけでしょう!?」
あんまりその様子がおかしかったので、ソフィちゃんと二人でお腹を抱えて笑ってしまった。
── ふふ、あたしの異世界転移、面白いことになりそうだよっ!
レビュー、感想ありがとうございますっ!!
宝物です
まりんあくあのやる気スイッチが入ります。
少しずつ読者が増えています。ありがとうございます(泣)
コメディ回は一旦一区切り。次回はほのぼの回の予定です。
それではまた2週間後にお会いしましょう。
本編の宣伝です。
しーちゃんが登場する物語
「古墳に入ったら、異世界の姫様の協力者にされてしまったので、日本を救って異世界に転生します! ─WE ARE ALLY. SAVE THE PRINCESSES OF EMULIA. ─」
はこちら
https://ncode.syosetu.com/n5917gw/
ソフィーが登場する物語
「絶望の箱庭~鳥籠の姫君~」
はこちら
https://ncode.syosetu.com/n3370hf/