14 説教したのは、誰?
コメディ回が続きます。
タイトル見てオチのわかったそこのアナタ。かなりコアな箱庭ファンですね!?
「それでは詩雛くん、早速実験を始めようではないか!」
「はい、師匠! 魔法を教えてもらうのにどうして実験が必要なんですか?」
すかさず、ぴしっとまっすぐ手を挙げて質問すると、嬉しそうに師匠が答えてくれた。
「うむ、いい質問だ! 魔法には属性があることは知っているな」
「知りません!」
「何、知らないだと?」
目を丸くしている師匠に、ソフィちゃんが言った。
「プロフェッサー芹澤。しーちゃんの世界では、魔法はお話の中にしかないみたいです」
「何? そんなはずは……。まあ、いいだろう。それでは詩雛くんに初級の魔法講座を開こうではないか」
胸を張った師匠の魔法講座が始まった。
── 師匠、かーっこいーー!
「……つまり、この属性が分からなければ使える魔法も分からないというわけだな。そこでこの液体だ。この無色透明な液体は魔法属性に応じて色が変わる特性を持つ。例えば、私は土魔法に特性があるため、試験管の液体に魔力を込めると……。このように黄色く反応が出る」
「おおー。さすが師匠!」
師匠の持っている試験管の中の液体が無色透明から濃い黄色に変わっていく。
──うわぁ、あたし、魔法を見てるよ! すごいよっ!
「この出現する色の濃さが濃いほど、魔法力が強い証明になるのだ」
「ほほう」
「さあ、詩雛くん、君もやってみたまえ!」
「はい!」
受け取った試験管を握り、じーっと試験管を見つめる。
見つめる。
見つめる。
「ぷはっ」
「詩雛くん、息を止めるのではなく、身体の中から流れてくる力を注ぐのだ」
「力を……注ぐ……」
しばらくじーっと試験管を睨みつけていると、やがてうっすらと液体が水色に変化していった。
「な、水色だと?」
「師匠。出来ました! あたしの属性は?」
── うそ、できちゃったよ!? ひょっとしてあたしにも魔法、使えちゃうんじゃない!?
ワクワクしながら、
「師匠、これであたしにも魔法が使えますか?」
と聞くと、師匠は何か難しい顔で考え込んでるみたいだったけど、
「ふむ」
と言ってからニヤリと笑った。
「そうだな。それでは実際にその力が正しく作用するか検証してみるとしようではないか!」
「はい!」
── いよいよ、あたしの魔法使い修行が始まるよっ!
って、実験を開始したんだけど……。
どっかーん。
なぜか爆発してしまった。
「何故だ、何故そこでこのような反応が起こる!?」
「あははははは。すっごーい! さっきのはこれかー。びっっくりしたー!」
二人で騒いでいると、突然目の前に顔を真っ赤にして怒っている女の人が現れた。綺麗な銀色の髪がポニーテールにしてあって、不思議な紫色の瞳の美人さんだ。でも瞳が吊り上がっている。
「あなた達、そこに座りなさい!」
ビシッと床を指差され、キョトンとしていると、
「さっさと座る!」
そう言って、ダンダン、と足を踏み鳴らした。仕方なく床に師匠と二人正座すると、その前でフン、と鼻息荒くした女の人は大声で叫ぶ。
「芹澤! そしてソコの不法侵入者! よくもソフィーちゃんを危ない目に合わせたわね!?」
「え、そっち?」
── てっきりさっきの爆発を怒られると思ったんだけど?
「不法侵入のアナタ、さっきはよくもソフィーちゃんを引き摺ったわね!?」
「え、何で知ってるの?」
「私は何でも知ってるのよ、ソフィーちゃんのことならね! ソフィーちゃんを引き摺り回し、危険に合わせた罪は重いわよ!」
「え、ええー?」
その時、入口から静かな声がした。
「リーゼ。それは今、叱るべきことかしら?」
その声と一緒にサーッと冷たい風が流れてきた。その声にギクリとしたリーゼさんが、ぎこちなく振り向く。
「言乃花、あの、これは……」
「一番騒がしいのは誰かしら?」
その笑顔を見た途端に、肩を落としたリーゼさんはすごすごと師匠の隣に並んで正座した。
コメディ回は、毎回書くのが楽しい。書きながら毎回自分が笑っています。
先日2件目のレビューをいただきました。ありがとうございます。変な舞を奉納させていただきました。
ブクマ、いいね、⭐ありがとうございます。
それでは、また2週間後にお会いしましょう。
本編の宣伝です。
しーちゃんが登場する物語
「古墳に入ったら、異世界の姫様の協力者にされてしまったので、日本を救って異世界に転生します! ─WE ARE ALLY. SAVE THE PRINCESSES OF EMULIA. ─」
はこちら
https://ncode.syosetu.com/n5917gw/
ソフィーが登場する物語
「絶望の箱庭~鳥籠の姫君~」
はこちら
https://ncode.syosetu.com/n3370hf/