やっぱりぶつぶつはこわいものなの?(集合体恐怖症ってきついよね)
文章は同じ。主人公の台詞だけ違う
ジーッ。
「ハルゥ、なんしようと?リンも。」
何故か鉄道模型のジオラマが縦横無尽に走る庭を望むとある日本家屋の縁側に立つ神子と部屋をのぞく涼子。
その部屋で寝る少女の顔をのぞき込む遥夢とリン。一体何がしたいのか。
「先行くね。」
聞き覚えのあるけどそう頻繁には聞かない声が聞こえる。あ、もうあさなんだ。
そう思って私が目を開けると目の前に女性の顔があった。
「あ、起きましたか。お久しぶりです。レイさん。」
そりゃ大声を出すよ。出す前に口ふさがれたけど。
[ん!ふふははん。(あ、遥夢さん?)]
レイが多少落ち着き遥夢を認識したのに合わせて口をふさいでいた手をどける遥夢。
「おはようございます。」
[今何時?]
「6時15分ですね。」
少しの沈黙の後再び枕にダイブするレイ。
「まあ、寝ててもいいですけど…。」
大きく息を吸い込む遥夢。
その間に防音結界を張るリン。
「総員起床その後整列。繰り返す、総員直ちに起床し、階級の高き者より総括司令の前に横一列に整列せよ。」
家が揺れるほどの大音量に私たち9人は慌てて飛び起きる。
「「そ、総帥…じゃなかった陛下。」」
「一体何や。」
「全く。今日は平日ですよ。まあそれはおいておいて、早く起きないと、遊ぶ時間が無いですよ。
特にリトエルスとリールフェルトは、早く朝ご飯を食べてしまいなさい。6時45分から真朱彌さんが特別講義をするそうです。」
げんなりするリトエルスとは対照的にわくわくとした表情で、落ち着かなくなるリールフェルト。
「遥夢さん。一体何やっとる…なあ、何でこの子こんなにワクテカしとるん?」
「真朱彌さんが特別講義すると言ったら。」
いったいいつここに来たのかと聞いたら、6時と即答されてしまった。
哲夫達はどうなったのかと聞いたら、せっかくだからと、遥夢さんたちの国に送ってしまったそうな。
「フェル・ザインディア・ガウザーミッドガルド・ランバ・テイハ・サーナ・エイハルベリア?(ミッドガルドシステムの暫定監視のために 3年間の任務期間延長をお願いできますか?)」
「え?」
「ソーレン・ノイア。サイトウ・アリーバ・タナカ・エル・スィーア・エイボル・フェリア。メリオス・ダイン・ケイシャンガ・ナイファン・セン ボーラ。
(即答を求めるわけでは有りません。答えが決まったら斉藤か田中に言って下さい。無理だとしてもこの世界に残るかを選択できますが。)
まあ、僕としては、この任務が終わったら、この世界に2人の戸籍を作って貰って、2人のうちどちらかに駐界大使になって欲しいなあと思っていますが。
それともレイさん、大使をやってみませんか?駐界大使として、瑞穂の代表で、蒼藍王国に。
いずれにしても7年後、レイさんたちが大学を出てからの話になりますね。
そういえば、藍蒼大がリトエルスとリールフェルトを、界外戦闘学の名誉教授に任命すると言ってました。
全くあの代表教授会の呆け老人どもは一体なにを考えてるんでしょうか。2人とも教授認定の基準をクリアしてるとはいえ16ですよ。
それなのに自分たちよりも年上相手に。特に相手が軍人ならいいですがただのずぶの学生相手に、講義をしろというのがどだい無理な話でしょうに。
戻ったら、一発全員締め落としてやりましょうか。」
悪態をつくときはやたらよくしたが回るのは蒼藍王族の血なのだろうか。額に手を当て呆れる正規と神子。苦笑いする涼子と真朱彌を除き、あっけにとられる一同。リンはというと、お茶をすすっていた。
[あ、あの。]
「ん?」
あっけにとられている者の中でいち早く回復したレイが遥夢に声をかける。
「その今お話に出た大学での教授認定の基準てなんですか?]
「項目がやたら多すぎて、不知火に照合させただけなので、知りません。」
「大体項目多けりゃいいってもんじゃねえってのあの禿爺ども。」
「一応、僕たち5人は全学群全学区全学部の教授認定を受けていますから、教えられますがいかがですか?」
遥夢さんのこの言葉に真っ先に反応したのが姉。
「すいません。ご教授願いたいのですが。」
姉の専攻分野があまりにコアなため、帝都大の教授陣でさえ応えられる人がいなかった。鈴ヶ森学園の経営陣=瑞穂元老院は、姉の専攻分野が、将来の瑞穂発展 につながる分野であると位置づけ、
学習院大学、帝都大学、鈴ヶ森学園大学に姉の専攻分野を教える学科を新設し姉の入学を待つ用意を整えたが、異界の知識によって、分野理解が瑞穂最高学府の教授陣を超えてしまった。
いまや、姉の質問に答えられるのはかろうじて、リートさんとリールさんだけだ。
姉が目を輝かせ、遥夢さんの講義を聴く。
「教えて問題ないんでしょうか。」
「だぁいじょうぶ。既に、基礎を手に入れてるから応用を教えても問題ないよ。でも時空変換システムについては教えるなよ。」
「大丈夫ですよ。時空変換システムを詳細に説明できるのはリンだけです。」
「ならいいんだけど。にしてもすげーなーこれ。…レイ…さんだっけ?あのさ、こいつどこに売ってるか知ってる?」
神子さんが指したのはM247系1000番台の模型。
「え?」
「いいよね。この顔。可愛いよ。ところでこいつの実車はどこ走ってるの?」
「東京から神戸だって。」
「…え。まるっきりNE251じゃん。」
神子が言うNE251とは日本連邦の鉄道会社JRIが所有運行する中で、最大勢力を誇る汎用型鉄道車両の形式である。
番台によって、区分され、0~5000番台が、通勤車用。6000~9000が中、長距離用普通電車用。10000~13000番台が急行以上の速達種別 用として区別されている。
顔は、225系から、貫通扉を取っ払って、E233系と混ぜ合わせた感じと言えば想像しやすいと思う。
「これが、NE251。お近づきの印に全番台をフル編成で4編成ずつあげる。」
「あのさあ、この子の家東京じゃん。大阪でこれ貰ったとして、どう持って帰るのさ。最大6両ならともかく最低4両、最大15両だよ。しかも基本10両固定 なんて。神子馬鹿じゃないの?」
涼子が突っ込む。
「もーまんたい。ここで渡すのは一番編成美が美しい、13000番台15両編成だ。」
「だーから、15両もHOゲージをどこにしまうのって訊いてるの。」
「これ。」
神子が出したのは、段ボール。
「で?…拡張空間箱ね。」
[何ですか?それ。]
見た目はただの段ボールだけど。
「いくかね。」
そう言って、神子が立ち上がると、そのまま、縁側から転げ落ちる。
「おおー。おもしろ。」
そう言って起き上がるが、いいのだろうか。いつもの民族衣装を汚して、どう洗うのかと小一時間。
「いや、面白いのとか言う以前におまえ痛くないのか?」
「おおー。無意識に重力制御を掛けてまうんか。こら、おもろいな。」
真朱彌さんと言っただろうか。関西弁の、女性が神子さんと同じことをして笑う。
「お姉、なにやっとるんや。」
そうは言う物の、結局主師のうちやっていないのは正規と涼子という展開となり神子と真朱彌は感性が似ているのかどうか解らないが、縁側でケタケタと笑い転 げている。
「なーにやってんだか。」
「どーざーえーもーんー。ポーンーバーシーいーくーよー。」
「ポーンーバーシー。」
「「うっさい!黙れ!馬鹿。」」
5.1chサラウンドで同行女性陣に突っ込まれる神子。
「ぼかあしあわせだなあ。」
「姉御、姉御は、神子にどんなイメージ描いてるんですか?」
「んー?そうやねえ。見ていて飽きない妹分というイメージやな。」
何故、こんなに個性的な人たちが、国の長なんだろう
「まさきさん、みてください。」
「ちょ。まて、おま、それ。」
「僕この本気にいりました。」
「買うのか。」
買うんだ。買うと言っても、それ、男性向けの年齢制限の付いたCG集だよ。遥夢さん。
「この絵がら好きです。」
「いや、だから、それ…もう俺は何も言わない。」
「いいんじゃないかな、ハルが好みなら。」
神子が苦笑いしながら、大判やきをほうばる。
「…これ。」
路地にあるPCパーツショップの店頭でリンが手に取ったのは、
「コンデンサの詰め合わせ…。んなもん買ってどないすんのよ。」
「お釜。」
となりの店では遥夢がお釜を見つめる。
「だからこいつじゃねーけど、それ買っておまえはどうする気だ。」
「レイもコンデンサが気になるんか?」
[メインマシンのさ、マザボのコンデンサ、メンテナンス中に飛ばして鼻に刺さっちゃって。]
「「ブフォッ。」」
どうやったらそんなコントみたいなことが出来る。
[いっそのこと半田付けをマスターする教材として遣おうかなって。どうせ今日買ったものでセカンドを組むしマザーをメインも買って組み直すからそれをあーしてこーしてサードでも造ろうかなぁ。]
そんなにパソコンだけ合っても何をするのだ。
「どうぞお立ち寄りくださーい。」
メイド服を着た女性が、ビラを配って歩いている。
「行ってみるか」
何故か知らんが4組に分かれて、メイド喫茶に行くことになった。
「「お帰りなさいませご主人様。」」
「むー。何か違うんだよね。」
「本職になれるとねー。」
うなる神子と苦笑いで同意する涼子。
「なーんかな違うんだよねー。」
「一挙手一投足からして本職とは違いますね。」
リンさんたち落ち着いてるなー。
「お嬢様達、ご注文をどうぞ。」
「え、あ、その。まだ。」
「大体その歩き方からして…くどくどくどくどくどくどくど。」
遥夢さんたちは何万人ものメイドを仕えさせている。と聴いた。だから厳しいのだろう。
それにしても、ここまで、サブカルチャーのメイドカフェの店員の挙動にけちをつけている人はいないだろうなぁ。
[本当のメイドさんて、もっとしゃきっとしてるのかなぁ。]
「オタク向けのメイドさんなんだから持っときゃぴきゃぴでいいと思うんだけどな。」
「ですよね。あちらのお嬢様と、ご主人様が、厳しく私たちの動きを…。」
「いたー!お嬢様、笹ヶ島哲夫が逃亡したとの連絡が。」
店に駆け込んできたのはレディーススーツにベレー帽をかぶった女性。
「なーるーたーき!ちょうどいいところに来ました。リョウナ達はいますか?
「下で待機させております。」
鳴滝さんと呼ばれた女性、そういえば、パーティーで会ってた。
「呼びなさい。全く。ここの店は教育がなっていません。メイドとしてではなく奉仕者としての所作を教え込みなさい。」
「あ、鳴滝さん。」
鳴滝さんが店の奥に入っていって数分後。
「店主の了解を取って参りました」
こわい。その後のメイド喫茶は阿鼻叫喚だった。特にメイドさんが。
「あの。]
「ああ。彼女は鳴滝。宮内省家政局長兼蒼天宮侍女女給局長兼統括侍女兼国王専属侍女。簡単に言えば、本職のメイドさんで国家公務員で一番えらいメイドさん。です。」
「その右隣の淡い赤色の服がリョウナ。侍女女給局副局長。左隣がメイナ。一般侍女統括責任者。簡潔に言うと、リョウナが2番目、メイナが3番目にえらいメイドさん。」
本職のメイドさんの中でも一番偉い人が直々に指導してくれるんだ、そりゃ厳しいのもうなずける。
「「そういえば、遥夢お嬢様、局長からの報告はお聞きになりましたか?」」
「ん?ああ。笹ヶ島云々ですね。まああれは奇滅師に任せておきましょう。」
奇滅師は瑞穂で言う陰陽師や法術坊主などに相当する国家公務員。
「君、新しいメイドさん?」
「お嬢様、よろしいのですか?北浜を放り出しておいて。」
「どうにかなるでしょう。何でもかんでもどうにかする天才もいますから。」
そう言って、神子を見る遥夢。鳴滝はため息をつくと、接客に戻る。
本職のメイドさん3人は大人気で有ったが、遥夢達の退店時に一緒に退店したため、客からは惜しむ声が上がる。
表通りに出るときに鳴滝達と別れた遥夢達。
「すごかったなぁ。たった1時間で、入ったときとは動きのメリハリとか言葉遣いとかがもうまるっきりかわってもうて、私、本当のお嬢様になったみたいやったわ。」
よく言うよ。本当のお嬢様のくせに。そういえばあの店、数ヶ月後に、本当のメイドの所作が味わえるメイドカフェというキャッチコピーで、近畿一帯のメイド カフェの頂点に立ったらしい。
敦雅の実家に戻ってきた私たち。
「みんなよくきくんや。哲雄が暴れたせいで、この大阪にも、英国に出たのと同じ異形が現れ始めとる。」
私たちは愕然とした。
「陛下。」
「整流砲と神流砲とどちらがいいですか?」
そのとき私は、それをリートさんたちの新装備だと思っていた。
「大阪の人は昔から異形に類する物には馴れとったさかいな、いままでと変わらん生活をおくっとる。」
「むー。ハル、リン、双発無砲身拡散神流砲用意。ハルは発射後すぐにレールガンが撃てるようにもしておいて下さい。」
遥夢さんとリンさん、涼子さん、真朱彌さんも、MPDSを持っていた。
でも見た目があまり変わらない。
「あれ?」
「ああ。この4人が使うP.G.Wは、外見にほとんど変化がないんよ。あるとしたら、全体的に青味がますってだけかな。」
道の向こうから、異形がやっってくる。
「めっけたよ賢者の石。」
「ハリー○ッター?」
「「違う違う。」」
遥夢さんとリンさんが、背中合わせに立つ。
真朱彌さんが手にしているショットガンの銃身にサンスクリットが光っている。
『装填完了』
そんな意味だ。
「総員注目。」
神子さんが、取り出した札にはでかでかと、85の文字。
「確認後行動開始。」
遥夢さんが命令する涼子さんが、青い刀身にオレンジと緑の刃を持つ、太刀を中段に構えて、異形に切り込む。反対方向の異形には真朱彌さんが、ショットガンを乱射する。
「涼子、姉御、制限85から95へ。涼子は爆破制限解除。」
神子さんの声が聞こえる。どこに行ったのだろう。
「準備しますか。」
ドスン!
見事に電柱の根元に突き刺さった、制限解除の標識。
神子の仕業である。神子がいるのは電柱のてっぺん。
「3(サ)…2(リ)…1(ファ)…リエルファイオ。」
電柱の上にいた神子さんのかけ声に呼応するかのように輝きを増す、遥夢さんと、リンさんの両袖。
いきなり、轟音とともにあたりが閃光に包まれる。
「な、なんなんや。」
「こ、これが、神流砲。」
なにが起きたのか理解できずに呆然とする敦雅の横で、へたり込むリートさん。
「神流砲?」
「一発で世界を30は破壊できるという創造主とその御子のみが使える技です。」
「力を持つものではねー。実際には、整流砲はリールシェル級の特砲、神流砲は、リンクリス級、コーウェリア級の主砲として開発されたものだもの。」
『レイさん。」
なにやら聞き覚えのある優しげな女性の声。
声のする方に振り向くと,こちらに向かって走ってくる20代前半の白人女性。
英国女王、マリー4世陛下だ。
「あ、うしろ。」
涼子さんが指したのはマリー4世陛下の後ろに現れた異形の残党。
「…おねーさん、全速力でこっちに走って。合図したら、スライディングね。」
「え?」
「あ、えっと、とにかく全速力でこちらに走って下さい。彼女が合図をしたらスライディングをするか、うずくまるかして彼女の腰よりも低い体勢になるようにして下さい。
異形は動く物に反応しておそってきますが、たとえ直前まで動いていても動かなければ、襲われません。」
私の説明に納得し、走る陛下と、お供の方々。
「りょい。」
神子さんが変なかけ声とともにだしたのはよく工事現場で見かける赤い旗。
陛下達がスライディングする。直後陛下ご一行の頭の上を閃光がかすめる。
「ブラックホールをいとも簡単に消滅させるほどの威力を持つレールガン。」
マントがずり落ちる。
「おけがはありませんか?先ほどは当国の宰相が失礼をば致しまして大変申し訳ございません。
私は創造界蒼藍星間連邦王国第三代主師国主国王、フェドレウス・ハードルナース・ホルト・ハルナ・リールシェル・ランゲルハンス・ラーニャラムージャ・テルス・キーク・ソウラ・ラルストムージャです。以後お見知りおきを。」
「ご丁寧な挨拶恐れ入ります。私は、英国国王、マリー4世です。」
世界は違うが、大国同士の国家元首の自己紹介にしてはあっさりとしている。
片や、創造界という、大世界の盟主。片や、惑星世界の一地域の盟主ではあるが、その威厳は勝るとも劣らない。というよりは、遥夢が、あまり威厳をつけたがらない性格なのだ。
「蒼藍星間連邦王国第三代主師第三十五代太宰の、御山神子と申します。先ほどは緊急とは言え、陛下に大変無礼な口を訊いてしまい申し訳ございません。」
「いえ。気にしておりません。少々解りづらい部分もありましたが、的確な対処を教えていただきありがとうございます。」
首をかしげながらも神子がまず正規に近づく。
「蒼藍星間連邦王国第三代主師王相瑠美野正規殿下です。妻である遥夢様とは大変仲むつまじく、国民の憧れのご夫婦です。
こちらは、私の妹で、蒼藍星間連邦王国第三代主師第三十六代長相フェドレウス・リン・コンコルド・リンクリス・エル・ラルストムージャです。彼女が戦闘を含めた外政を一手に引き受け、私は内政を引き受けています。
こちらは、私の配偶者で、蒼藍星間連邦王国第三代主師第256代空官長を務めております、巫剣涼子です。時代劇や武士道をこよなく愛する侍レディで す。
そしてこちらが、蒼藍星間連邦王国第三代主師第四代天医の摂津真朱彌嬢と同補佐看護医師の摂津彌蘭陀嬢の姉妹です。治せない病はないとまで言われる名医です。」
長い。そして神子にしては珍しく一回も咬んでいない。漢字が多くて読みかえすと目が疲れる。そして何よりも書くのが疲れる。
では書かなければいいのだがそれは10年前の作者にいっとくれ
「あの異形をたった一撃で消し去るとは。」
「中心となっている個体に埋め込まれていた、賢者の石を消し飛ばしましたから。」
「賢者の石?」
「これです。」
遥夢が見せたのは、コンパクトなスマホとほぼ同じ大きさの賢者の石の結晶である。
「別名、緋血水晶。ないし、源血結晶といいます。」
「どちらにしろ、血という字が入るのか。」
遥夢が表示した、グラスウインドゥには蒼藍語と日本語で名称が表示されていた。
「これが、蒼藍語。」
ユーラシア大陸南岸地域の言語表記に似ている。そんな気がする。
「異形=悪魔の産物だからなあ。あの馬鹿どももう一回殲滅してやる。」
「悪魔?」
「科学至上主義に凝り固まった馬鹿な人間の集団を指します。本来の意味での悪魔は、創造主に従う者として天使や堕天使と同列に扱われますから。」
『解析が完了しました。指定された物質から賢者の石は検出されませんでした。ですが、生命のスープが検出されています。』
見回しても誰も口を動かしていない。
『なお、藍蒼大に詳細な解析を依頼しています。結果到着に1時間ほどかかる模様です。』
まただ。
「…あのさあ、リア、報告をアウトスピーカでやってくれるのはいいが、姿を見せながらやってくれ。」
『失礼しました。マスター、笹ヶ島哲夫の縁者が、大阪に入ったことを確認しました。また、ウェリアスから連絡があり、空軍元帥、尾束義則氏よりの提案により、瑞穂皇国、相模半島沖5kmの海上に東西方向で着水するとのことです。これによる、ミッドガルドシステムの展開に関する影響は一切存在しません。なお、着水により、通信速度が2割ほど上昇しています。演算効率を3割引き上げます。』
どうやら、この声はNASの声らしい。
「ソラ、見てきて。」
『いやです。ここにいるだけで解ります。リウロさんや、ミズホさんよりも強力で高性能なのが。』
「そんなに高性能なんか?」
『高性能どころの問題では無く、リアさんは、電脳世界の創造主と称されるほどに万能です。』
リアと呼ばれたNASが私たちの前に姿を見せる。
「これが、リア。正式名称は…何だっけ?この前の更新の時に正式名称変更したんだけど忘れちまった。」
『フェドレイアス・リア・リクヌア・コンコルド・エル・サイバリオンです。』
「えっと、リンさんとは、名前も姿もにているのですね?」
マリー陛下が質問する。
「はい。リンが、フェドレウス・リン・コンコルド・リンクリス・エル・ラルストムージャ。リアが、フェドレイアス・リア・リクヌア・コンコルド・エル・サイバリオンですからね。」
「レイ、怪我してる。」
確かに私の左腕は血まみれだった。
「ん?ああ。大丈夫よ。こんなの。」
「そうとも言い切れへん。レイさん、さっきから左腕曲げられてへんやろ。どうもさっきから、気になっとったんや。ピンガラ、スキャンしい。」
真朱彌が、レイの腕を見て言う。
『主、左二の腕内側の腱が切れています。』
「治療するから、いったん縁側に横になり。」
真朱彌が、レイに横になるよう促す。
「遥夢さんたちはこの後どうするんですか?」
「梅田の方に宿を取ろうかと。」
「泊まってき。」
敦雅のおばあちゃんが、そう言って、遥夢さんたちも泊まっていくように促した。
「お言葉に甘えたいところではありますが、人数も多めですし。」
「敦雅とその友達と同じぐらいやないか。マリー陛下と護衛、侍従の方も是非当家に御逗留ください。下級貴族相当になりますが瑞穂の一般家庭を是非ご体験頂きたいのです。」
敦雅の祖母、相手が、超大国の王族であるとわかっていないからか我らが素っ頓狂集団に対しては対等であるが、さすがに英国国王は何度も新聞などで見ているからか丁寧な対応。
「よろしいのですか?」
「かまへんかまへん。どうせ部屋なんてぎょーさん有るんや。たまにはこうやって大勢泊めて使ってやらんと部屋も家もかわいそうやろ?」
「いやうちにいわれても。」
「あんたが一番そう言うの解りそうな気がしたんや。実際そうやろ?」
神子に問いかける敦雅の祖母。
「いや、そうですが…奥さん。」
「名前見つけたけどあわねーなぁって思ったんでしょ。」
涼子の問に頷く神子。
「まあ、そうやろうなあ。網干舞子なんて名前驚いたやろ。」
「あー。こら結構ざっくりいってるなあ。MPDSとかいうののお陰で、痛みは無いみたいやけど、ザックリやってもうてるわ。ミラ、―と―出してくれんか。」
「おねぇ、アクアマリンレーザーつかわへんの?」
「私のあれは病気の治療用や。こうゆうのはミラの方がええ。」
姉妹で軽い言い合いをしているが、
「まあ使うには、そこまで傷を無理矢理でも広げなあかんからなぁ。」
「MPDSとか言うのはもう解除してるみたいですから広げたらそれ相応の激痛でしょうし。」
「大の男が泣き叫んで失神するほどの激痛だからなぁ姉御の靱帯断裂修復治療は。無理矢理傷口広げて、傷口の血取って、そこにアクアマリンレーザーを照射するんさ。」
「「アクアマリンレーザーは、細胞の分裂を促進するとともに、ニューロンに働きかけて、痛覚を鈍らせる働きがある技や。」私の場合は、ガン腫瘍の切除にも使用する。「ほかにも、擦り傷の治療なんかにも使われるけど、神子さんは絶対にそれを見ようとしないなあ。」」
一部ハモりながら神子を見る真朱彌と彌蘭陀。
「だって、破けたところを見ると、切り取りたくなっちゃって、あの毒狗竜の喉元を部位破壊した跡のような状態が一番むかついて、いやで、もやもやして、きらいなんです。」
これには、レイも同意する。
一言で言えば、二人とも集合体恐怖症である。
「ま、いやゆうてもやるもんはやるけどな。」
真朱彌がそう言って、鉗子を使い、レイの肘の上あたりの傷を広げる。
「鈍痛があるけど、少し我慢してな。」
真朱彌さんの言葉に頷き私は鈍い激痛を我慢した。
「あかん。変に繋がりかけとる。これじゃ、アクアマリンレーザー使えへん。」
真朱彌さんのあきらめの言葉にリンさんが私のそばにやってくる。
「真朱彌様、この紙を。」
リンさんが、真朱彌さんに渡した紙を、彌蘭陀さんが私の腕に置き真朱彌さんが、自分の指を切って紙に描かれた模様をなぞる。
「馴れてないと結構きついんやな。」
真朱彌の言葉に頷くリン。
「あ。そういえば、…あれ?リトエルスと、リールフェルトは?」
「あの二人なら淀川に行ったよ。」
「で~、正規はさっきからなにしてんだ?」
「このラムネの蓋がなかなかあかねえんだよ。」
そう言って示された物パッケージを見て吹き出す夫婦漫才
「「正規、それ、ラムネじゃ無いって。たばこたばこ。本物のたばこ。」近寄るんじゃねえ。シッ。シッ。」
「なんで神子さんはそんなにたばこをきらっとるん?」
「たばこの煙のせいで一時期、リアの代行演算が無ければ死んでしまうほど、生命機能が低下したからです。」
そう言う神子さんは、なにやらボトル缶をあおっている。
「何や?それ。」
「蒼天江上流域の水です。姉御も呑みますか?」
「呑む!」
数時間後、リンが厨房にさりげなく立ち、そこにいた者を驚かせた。