やっぱりえいぶんはむずかしい
お久しぶりです。自宅サイトからの転載において、現行設定に合わせる作業に手こずって。嘘です。
すっかりこっちの更新が面倒になっていました。
注意
この話は特別編をお読みいただいたことを前提にして話を進めて参ります。
また、この話に出てくる外国語はすべて、web翻訳を用いています。文法に誤りがあるかもしれませんが、作者には修正のしようがありません。
そこのところをご了承下さい。
「すごかったなぁ。」
「ああ。あんなにすごいパーティは初めてだ。」
何か知らないけど突然舞い込んだ、異世界からのパーティの招待状。そのパーティから2日経ち、ここは、私たちの教室じゃなくて、生徒会室。
[私、あのトランプもらってきちゃった。お土産にくださいってお城のメイドさんに言ったら、3セットくれた。通常版と、リアル版と、カジュアル版だって。…あ、リアル版は駄目だ、なかなかに刺激が強い。]
「あー。キングが脳でクイーンが子宮で、ジャックが脊髄の写真のやつですねぇ。」
そんなことを宣いながらのんきにチータラを食べつつ各部門の収支報告書とにらめっこする、リートさん。
[カジュアル版が一般的なやーつで、通常版があのお城で見たやつか。お姉ちゃんとしてもいい経験が出来たんじゃ無い?]
「宮殿内部に作られた専用ホームなんて私たち一般市民からしたら絶対には入れないからなぁ。瑞穂で言えば皇居にMRの皇室専用ホームが置かれているようなものだろう。
ブガルという国は鉄道網が発達しているのだなぁと感じたよ。改めて観光で訪れたいな。」
姉は姉で、手と口を同時に動かし、うずたかく積まれた書類を片付けている。
この高校の生徒会で一番影が薄い役職が副会長だ。本来なら、会長含め生徒会役員に様々な仕事を割り振って行く差配役なのだが、当代の生徒会役員は自分の領分をさっさと終わらせた上で他人の領分にまで手を出そうとする。
それが無いと、ちょうど私の目の前で始まった宴会という名の生徒自治方針修正検討会議。
生徒の代表として、どのような生徒自治を行うかの具体的な方針を日々移り変わる情勢と照らして修正をしていくのだが、なぜか見た感じはジュースとお菓子で盛り上がっているようにしか見えない。そして、統間にぃ以外の生徒会役員は女子なのもあってただの堅いお話しする女子会となっている部分は否定しない。
「レイ、食べる?」
あのおつまみとして売られているかりっかりのイカ天を一枚私に向けて差し出してくれるリートさん。パーティ以来私に対する呼び方に変化有り。
そんなリートさんはただいま絶賛少し男勝りな女子真っ盛りをエンジョイしているし、リールさんも前より話すようになってきた。あのパーティで、2人がお仕えしているという王様にあって、そのときに何か言われたみたい。
「これもたべる?」
リートさんが、かなりきわどい色のカップケーキを差し出してきた。
あめりかんなやーつですね。
「レイ、おまえキングスイングリッシュできるか?」
[いえ。ヤンキーイングリッシュはプログラミング系でですが。]
羽魅先生が駆け込んできた。ネイティブなキングスイングリッシュは聞けても話せないって。
[何があったんですか?]
「ああ。英国のマリー4世陛下がなこの学校を視察に来られたのだが、随伴の通訳が、倒れてしまって、急遽代わりを探しただが見つからなくて、もしかしたらと思ってな。」
[キングスイングリッシュはできますが?]
リールさん以外の視線がリートさんに集中する。
「たいていの言語は可能です。蒼藍語、ライターナ語、キグリス語、瑞穂語に相当する日本語、中国語、ドイツ語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、ラルト語、ヒンドゥー語、スワヒリ語、ユダヤ語、ラテン語と、主要言語はすべて習得しています。」
「よし。いこう。」
「She's your interpreter? Is she going to be OK?(この子が、通訳ですか。大丈夫なのですか?)」
「問題有りません。彼女は瑞穂語のほかに英語、フランス語、ロシア語など15カ国語を操ることができます。」
「Don't worry, I promise you that I will pass on your words, word for word, to my people, and I will pass on your words to my people as well.
(ご心配なさらなくとも私は陛下のお言葉をしっかりと、一言一句違わずにこちらの方々に伝え、同じように陛下にもこちらの方々の言葉をお伝えすることを堅くお約束いたします。)」
すごい。リートさんは、まるで生まれながらの生粋のロンドンっ子の様に流暢にキングスイングリッシュを操っていた。
「Now, I have a quick errand to run. Mr Nobuhito, I would like to meet the girls of the Imperial Special Task Force.(では、早速用件を一つ。信仁さん、皇国特務機動隊の少女たちに会わせていただきたいのですが。)」
「I have the honour of explaining this on behalf of His Majesty.(僭越ながら、陛下の代わりに、私よりご説明申し上げます。)
The Imperial Special Task Force is an organization under the direct control of His Majesty the Emperor, organized around three female students here at Suzugamori Gakuen High School, with Ms. Otsuka as the captain.
(皇国特務機動隊は、こちらの、尾束先生を隊長として、この鈴ヶ森学園高校のここにいる3人の女生徒を中心に組織された天皇陛下直属の組織です。)
The three members of the Special Task Force who will be involved in the actual work, i.e. the public activities, are Ray, Litwels and Lillefeldt.
(特務機動隊の実動班、つまり、表だった活動に従事するのは、レイ、リトエルス、リールフェルトの3人です)」
アメリカ自治州連邦が力を失い、それを支える形でどんなことに対してもへこたれない瑞穂がこの世界の盟主となった。
今でこそ、世界を率いる瑞穂だけど、ほんの300年前までは、世界の中でもそこそこの地位にしかいなかった。
皇紀2600年代後期になって立て続けに起きた大災害は瑞穂魂に火をつけ100年後には、中華民国から世界第二位のGDP保有国の座を奪い返した。
さらにアメリカを自治州として、瑞穂の領土として組み込んだ後さらに力を増し、大東亜大戦終戦後、御馬鹿2カ国が勝手に実効支配していた,竹島、千島諸島 を奪回。
アジアのトップとしてすり寄ってきた御馬鹿を蹴散らして、非常に民主的な政治を行っている。
英国はかつて7つの海を支配するとまで言われ、かつてアメリカ消滅までは瑞穂とも同盟を組んでいた。
鉄道発祥の地であり、瑞穂に並ぶ高密度運転の鉄道も有名だ。
姉は一度で良いから欧州旅行がしたいと言っている。現在英仏独同盟と瑞穂民国連盟の間には、回教国や旧ソビエト陣営が立ちふさがっている。
だが、瑞穂は、釧路から、アンカレジを経由しニューヨーク、レイキャビク、エディンバラを結びロンドンへ向かう国際高速列車を走らせている。
今回はそのロンドンでのお話。
回りくどくてごめんなさい。
東京駅
瑞穂の鉄道のすべての起点。関東大手私鉄のターミナルを集約し、さらにMRに10年間の臨時ダイヤを押しつけ行われた整理改修工事により、
地上12面22線二階5面10線地下が1階から4階までそれぞれ4面8線有る上に、新幹線だけで南北直通6面10線を擁する名実ともに瑞穂の象徴である。
45番線東海道から東北新幹線へ乗り入れる列車が停車するこのホームに湘南ラインの編成が止まっていた。
古来より、湘南色は瑞穂の鉄道において、重要な路線に投入されることが多かった。
『高雄発博多、飯田、当駅、仙台、札幌、釧路、アンカレジ、シカゴ、ニューヨーク、オタワ、レイキャビク、エディンバラ、ロンドン、パリ経由ベルリン行き 国際新幹線きずな5号まもなく発車します。おいそぎくださーい。』
駅員がアナウンスする。
何故私たちがこのきずな号に乗るのかというと、英国国王マリー4世陛下の要望によって、皇国特務機動隊に緊急の出動命令が下ったためだった。
「お姉ちゃん私たちが乗るのってどこ?」
「14号車。グリーン車だ。え?グリーン車?」
自分で言って驚いてるよ。
私たちが席に着くと列車は滑る様に動き出した。
未だに世界ではこの25両編成の鉄の蛇が600km/h(パーティで200km/h以上が新幹線では?と書いたのはそれが瑞穂皇国の法律上の定義だからです。) を超える速度で、走ることが信じられないらしい。
『本日もMR瑞穂旅客鉄道をご利用頂きまして誠にありがとうございます。この列車は高雄発ベルリン中央行き国際新幹線きずな五号です。
途中停車駅は、大宮、仙台、青森、函館、札幌、旭川、釧路、択捉、セベロクリリスク、アダック、アンカレジ、バンクーバー、シカゴ、ニューヨーク、オタワ、レイキャビク、エディンバラ、リヴァプール、ロンドン、パリ、ストラスブール、フランクフルト、ベルリンの各中央駅もしくは最大駅です。…。』
このあと、たらたらと長たらしい説明だから省略。
とにかく25両編成で25メートルだから626m(幌とか含んで)以上の長大編成の高速列車はベルリンを目指す。
釧路から先は千島諸島、アリューシャン列島を通ってアラスカへ。そこから今度はロッキー山脈の麓を走りカナダを下り、五大湖西岸の大都市を抜け、北米随一 の大都会を経由してまたカナダに入る。
そこから、グリーンランド、アイスランドを経由したら、いよいよ鉄道発祥の土地イギリス。イギリスの誇りフライングスコッツマン号を追い抜かないようにしかし、おいて行かれない絶妙な速度を保って走り続ける。
ロンドンを出たら、今度はTGVの路線。カレーを華麗にスルーして…突っ込んでよ。とにかく花の都パリに着く。そしてドイツ。だけど私たちはロンドンで降りる。」
ロンドン セント・パンクラス駅
列車を降りると女王陛下がいた。
「We look forward to seeing you soon.(お待ちしておりました。)」
そう仰って、手を差し伸べてくださった。
ホームにいた人が何かの撮影かと集まってくる。
「How can I help you? Oh. You must be tired after your long journey. Come with me.(どうなさいましたか?ああ。長旅でお疲れでしょう。どうぞこちらへ。)」
陛下の後に付いていく私たち。
駅を出ると所々破壊されたロンドンの街があった。
セント・パンクラス駅を出てバッキンガム宮殿に向かう私たち。
細かい事務的手続きは有事と言うことで省略されたのだろう。私たちはバッキンガム宮殿の応接室に通された。
女王陛下は女王執務室に向かわれたと教えられた。
町中のスピーカーから陛下のお声が流れだした。
『My dear Londoners. And you, my honourable British citizens, who are listening to this broadcast.My thoughts are always with you.
My heart is heavy with grief, with the hot, cold flames of hatred.
Many cities, including London, have been cruelly attacked by a strange creature that has appeared out of nowhere.
(親愛なる我がロンドン市民の皆様。そしてこの放送をお聞きの我が栄えある英国国民の諸君。私の思いは常に皆さんとともにあります。
悲しみに沈み、憎しみに燃える熱く冷たい炎に胸を締め付けられているのです。
突然現れた、異形のものにより無残にも我がロンドンを始め多くの都市が攻撃を受けました。)
Even our elite Royal Army troops were beaten as if by a baby's hand.
We commend the brave warriors who lost their lives in this battle and send our deepest condolences to their families and pray for the souls of the brave men. We wish them all the best, and we hope that God will continue to bless the soldiers who are still alive.
(我らが、ロイヤルアーミーの精鋭部隊でさえもまるで赤子の手をひねる様にやられてしまいました。
この戦いで、勇敢に戦い命を落とした勇気ある戦士をたたえるとともに深い哀悼の意を遺族にお伝えし、勇者の冥福をお祈りいたします。そして、神の加護の元生きている兵士諸君には、さらなる神のご加護があることを切に願ってやみません。)
In order to overcome this situation, I have been visiting allies all over the world, and finally, in Japan, I have found hope. These girls, who can best be described as war maidens, have been found as agents of an organisation which, blessed by the gods of the Land of the Rising Sun, aims to combat those who cannot be dealt with by conventional weapons, and to deal with non-existent beings. According to the Emperor, he is more than capable of fighting that other form.
(この状況を打開すべく私は世界中の同盟国を訪ね歩き、そして、ついに日本の地で、希望を見つけました。まさに戦巫女と呼ぶにふさわしいこの少女達は、日出ずる国の神々より加護を受けた通常兵器では対応出来ない相手との戦闘や、非実在存在との対応を目的とする組織のエージェントとして見いだされました。天皇陛下のお話ではあの異形とも十二分に戦える存在だと言います。)
I have no doubt that these maidens will be the true warrior-priestesses sent by the gods to defeat the abomination that has so rudely attacked and destroyed our beloved British soil and taken the lives of our future warriors.
(私は、必ずやこの巫女たちが神が使わした、真の戦巫女として我らが愛するこの英国の地を無礼にも奇襲し、破壊し、未来有る戦士の命を奪った、憎き異形を討伐してくれるものと信じるとともに、この事態をまるで我が子との様に悲しみ、そして彼女たちを遣わしてくれた瑞穂の天皇、信仁陛下に深い感謝の意を表します。)
And I hereby pledge I will bring victory to this battle, even at the cost of my own life. In the name of the Queen of England, who rules this beautiful country. And in the hope of the ladies and gentlemen of England who believe in me. I hereby declare that I will support the work of these warrior maidens for as long as I live.
(そして、ここに誓います。私はこの戦いに自らの命をかけてでも勝利をもたらすことを。この美しき英国を統治する英国女王の名にかけて。そして、私を信じてくれている、英国の紳士淑女の期待にかけて。命ある限り、彼女たち戦巫女の活躍を十二分にサポートするとここに宣言します。)』
逐一リートさんが同時訳してくれるから困る。
何が困るって、かなり期待掛けられているということが困る。
翌日私たちはシティのとある通りに居た。ロンドンっ子が興味深げにこちらを観察している
「リウロ、ポート450に接続。P.G.W-MPDS起動用意。」
リートさんが、NASに命令する。そして現れたのは、リートさんと一体化した1機の人型のロボットだった。
[リートさん、これは?]
「P.G.W-MPDS。使用者の持つ能力、霊力を極限にまで高め、そして、身体能力と精神力を限界まで引き上げ、崩壊しないぎりぎりのラインで維持しつつも使用者への負担を極限まで減らす。
そんな人型万能汎用戦闘兵器P.G.Wの特徴と、使用者を機体の限界まで保護し、使用者の手足であるかのようなレスポンス。
極限まで削減された、材料と、それを補いあまりある強度を実現しながらも作りだされる柳眉なる造形を持つMPDSの長所だけを組み合わせ、そこに、専用化された様々な装備を盛り込んだ、瑞穂皇国軍兵器工廠開発班渾身の作と聞いています。」
私もMPDSを起動しようとデータを入れた軍支給の携帯を取り出して、コマンドを入力する。
しかし反応しない。
[あり?]
「もらったPITは?」
PITというのはポータブルインフォメーションターミナルの略称らしい。
ちなみにリートさんとリールさんが持っているのはV.C.P-VTという名前で、正式名称はヴァーチャルサイバープロジェクタ ヴァルキュリータイプとい うらしい。
[じゃあ改めて。MPDSドライブ。]
お、今度は反応した。
『P.G.Wはデータ化した物体を具現化する関係上、かなりの負荷がかかりますから下手なデバイスでは起動プロセスが動かないことが多いです。』
[「早く言え~。」]
リートさんの言葉に姉妹で突っ込んだ。
[それにしても。]
2人に比べて、機械部分が多い私のロボット。
[はっきり言って気乗りしないな。でも例の異形のものとやらは波動的にかなり悪質だからな。]
「…さてと。いくか。」
きちんと稼働しているか確認してくれていたリールさんも飛び上がる。
陽炎も、スラスタージェットも見えない。
どうやって飛んでいるのだろう。あとで訊いてみよう。
「早く来い、レイ.。」
[飛ぶって言うの?どうやって飛ぶの?]
私の問いに答えられるのは2人しかいないはずなのにその2人が、困った顔をしている。
「飛べないのならわたしが教えてあげようじゃないか。」
どこかで訊いたことある声と言い回し。
「やあ。瑞穂の戦巫女の諸君。笑いによる混沌の貴公子…。」
[斉藤さん!]
あ。こけた。そもそも斉藤さん、何で屋台?
「あはははは。そうさ。ジョナサン斉藤さ。屋台はわたしの絶好の隠れ蓑さ。わたしゃ、君たちがいるところならどこへだっていけるのさ。」
「斉藤の旦那ごちそうさま。」
「あら~。田中さん。またうちの最難関メニュー完食しちゃったのか。」
斉藤さんとそんな会話をして、のれんをくぐって出てきたのは私の知り合いの田中さんだった。
田中さんはいつも「田中」と書かれた紙袋か段ボールをかぶっている。素顔を知っているのは、誰もいない。だって、段ボールも紙袋も物理法則とか無視して絶対脱げないんだもん。もし脱げてもその下にはすでに同じものが装着されている。
そんな田中さんは、とても優しい人で、子供が田中さんにいたずらをしても笑ってポケットからお菓子を出して、許してしまうほどだ。私はそれを見て、何故怒らないのか と毎回訪ねてしまう。答えはいつも二転三転してるけどね。
とってもぱりっとしたスーツをいつも着ていてかっこいい人だ。
突然斉藤さんの屋台のそばの地面が盛り上がる。そして、真っ黒な異形の者が出てきた。
私もリートさんも。リールさんもとっさのことに反応ができない。
「旦那、割り箸一本貰うよ。」
「いいよ~。田中さんの大立ち回りだねぇ」
「冗談はよしてくれ。私はそこの戦巫女さんに日頃のお礼がしたいだけさ。」
そういうとまるで大太刀を持っているかのように割り箸で、異形に斬りかかる田中さん。
そのあと何がどうなったのかあまりに速すぎて解らないけど、田中さんの活躍で一体異形が消えた。
そして、私は田中さんに飛び方を教えて貰い、2人から新型装備を貰って、いよいよ街中に現れた異形退治に向かった。
とにかく、異形は黒い以外は何も共通点がなかった。私たちは太刀や、銃を手に、立ち向かった。
「どうだ?良治。」
「今陛下に報告書を送ったところだ。最初にあったときは、まだあどけなさが残っていたというのに。それより丈治、正体はまだ悟られては居ないんだな?」
「ああ。俺たちの正体は陛下とおそばの方々以外はご存じないよ。俺たちは半ば勅命で動いてるからな。」
やあ。今は戦巫女こと崎原くん達が戦っているからね。それにここは崎原くんが説明するには荷が重いと思う。
私の名前はジョナサン斉藤。もちろん本名ではない。田中とは同僚であり、気心の知れた親友同士の深い仲だ。
「…彼女たちの前では斉藤と田中そして変なしゃべり方の男と紙袋をかぶった男ということにしておこう。」
「わかった。」
「それから良治。おまえはここに残って、彼女のサポートを頼む。俺は一回瑞穂に戻って、異形の情報を集められるだけ集める。」
良治はうなずいた後こう私に言ってきた。
「ああ。それと陛下に直接報告したほうがいい。陛下はこの異形に対する対処法をきっとお教えくださるはずだ。」
そう言って異形と戦う崎原君たちを見上げる良治。
はっきり言って、崎原君たちは少しおされぎみだった。
「レイ!何やってんだ。昨日私と作った武器はどうした。」
そんな声が聞こえたから声のほうを向けばそこには崎原君のお姉さんがいた。
どうやら、秘密兵器があるようだ。
しかし崎原君にはそれが届かなかったらしい。
私が、戻ったのは戦いが始まってから2時間がたった時だった。
「レイ君!そのでか物を成層圏まで引っ張り上げてそのまま電離層まで打ち上げるんだ。そうすれば何もしなくても後は勝手に死ぬ!」
何度攻撃してもすぐに元に戻る異形に苦戦していた私たちに田中さんが大きな声で策を教えてくれる。
さっきのお姉ちゃんの声も聞こえていたが、あの武器は、展開するためには一度止まらなければならず、その時に死角ができてしまうので、
展開できなかった。
わたしと、リートさん、リールさんの3人は、ワイヤーを取り出し異形を捕縛。
そのまま音速を超える速度で、成層圏まで上昇した。
成層圏と中間圏の境目で急停止した私はそのままロープを持つ手を緩めた。
リートさんとリールさんはさらに加速し、電離層に到達できるように慣性をかけた。私と二人の高度差は1km。
打ち上げた後、真っ黒な異形の体が電離層でぼろぼろと崩れ、終いにはきらきらと光の粒になっていくのを見届けた後、同じようにほかの異形も片付けた。
「俺はふと思ったよ。なんで直接あの子達に教えなかったんだろうってな。」
「それはそうさ。この前のパーティではあの子は陛下の前では足ががたがたになるほど緊張してたらしいから。」
私たちが降りてきたとき斉藤さんと田中さんが手を振って迎えてくれた。
「よくやったねぇ。」
そう言って斉藤さんがその大きく温かな手で私たちの頭をなでてくれる。
斉藤さんが離れると、ロンドン市民が私たちの周りに集まってきた。
「よくやってくれましたね。」
[…え?]
「ふふふ。実は私も日本語が話せるのです。」
私たちは驚きの叫びを上げた。
「何でもいって下さい。私たちにできることなら何でもお礼をしましょう。」
「じゃあ、まずお姉ちゃんのお願いから聞いて下さい。」
陛下は頷くと、姉の望みを訊きに姉のところに向かった。
数分後大急ぎで陛下が戻ってきた。
「君のお姉さんは無欲なのですか?」
「へ?」
「鉄道乗り回しができればそれで良いと言っているんですが。」
「ああ。姉は、生粋の鉄道ファンですから。」
その後おのおのの希望を言った後、斉藤さんたちの希望も聞いて貰おうと思ったらいつの間にか居なくなってしまっていた。
数日後、私たちは瑞穂に帰国した。