やっぱりげーむはおもしろい
「あー。うー。…あー誰だ?」
「「正規が壊れた。」」
「違う違う。ふと思いついたことについて考えてたんだよ。主師の女性。ああ、神子とか正壬も含めるけど、その中で一番ゴスロリに合うのって誰だろうって さ。」
唐突に何を思いついているのかと思うが、神子の場合どうでも良いような人の話を聞かなくなる以外はかなりまともになる。どれくらいまともかというと、彌蘭陀や真朱彌と同レベル。つまり、主師の常識陣に入る。ので男性が正規しか居なくなると正規がぼける。ただ、相変わらず大呆けは神子だ。
「でもほんとに誰だろうなあ。」
「黒の場合は、ハル、正壬、うち、涼子、ミラの姉御だし、白の場合は、リンか。」
「私の髪水色だよ。」
涼子の言葉で今思い出しましたという顔をする、神子。
「あのー、そんなに悩むなら着てみれば良いんじゃないんですか?」
こう言うのは、夏海。
「「え。」」
どうやら着るという発想がなかった様子の一行。
「多分、遥夢か正壬か神子だと思う。前髪の形の関係でさ。」
「でもそれだと、黒ですよ。白となるとおそらく、リンじゃないでしょうか?」
雲海の畔のテラスに移動してお茶会を続ける一同。
お茶会を続けつつ、いつの間にかものは試しとでも考えたのだろうか、黒ゴスロリに身を包んだ遥夢が、左手をレイの頭にかざす。
「能力の上昇率はレイさんよりも敦雅さんの方が良いんですよ。でも、上昇可能な能力値の上限が、敦雅さんの720倍以上有るんです。
それと、強制的な引き上げに対する耐性やら、能力使用に関する並列高速演算性能等の差も敦雅さんがまだ目を覚まさない理由なんでしょう。
脳に流れ込んだ大量の情報を処理するために、意識や運動、感覚などと言った、ソフトウェアに相当するものを強制的にシャットダウンし、その分解放された演算領域を割り振る。
それでも足りない 場合、生命維持に必要な神経系を除く神経系にまで演算を割り振る。敦雅さんは今そんな状態なんだと思います。
脳に直接、星守や国守の巫女の力の使い方と意味、意義、そして、異形とは何かを書き込みました。今レイさんには先日の儀で書き込めなかった情報を、意識を保った状態で処理できるレベルにまで、細分化して送り込んでいます。ただ、この方法は、敦雅さんには使えません。敦雅さんの脳が、意識を保った状態で、処理できるレベルにまで細分化しようとすると、復元が不可能になってしまうのです。
そうなると、敦雅さんには、2日前と同じ方法を使わなければなりません。今、リンがそのため大規模データを生成しています。レイさんにも明日、大規模データを送り込みます。」
「リンは、今自分の脳と敦雅さんの脳を接続して、敦雅さんの演算を補助してるはずだよ。そうじゃないと、終わらないから。」
「あの星の星守の家系はみなこの国で修行をしていたんですが、千年に一人ですから残しても仕方ないと感じたんでしょうね。」
遠い目をしてつぶやく遥夢。
「何だろうな、遥夢と言い、神子と言い、どうでも良いやという顔をすること多いよな。」
「「そう?」」
女性陣から一斉に聞き返され焦る正規。
「辰也に聞いてきた。涼子だって。」
「どっちの色で?」
「黒。」
「…きてみれ。」
この一言で正規とリン以外の主師がゴスロリになった。
「確かに似合うね。」
「てかさ、結局思ったんだけど、主師の女性陣てゴスロリ似合う体格と顔つきだよね。」
「まあね。」
そう言うと、虚空に空けた穴から何や黒い塊を取り出すと、レイに軽く投げつける神子。
塊が当たった瞬間レイの服がゴスロリになる。それを見届けると同じ事を3回夏海と馬魅と羽魅に行う神子。
「姉御はどの子が子のみですか?」
「私はなあ、黒やったら神子ちゃんかなぁ。白やったら…正規さん、ちょっと正壬ちゃんになって白ゴス着てもろうてもええか?」
遥夢と真朱彌には逆らえない正規。遥夢を見るとわくわくした顔で、正規を見ていた。
ため息をつき、真朱彌の言うとおりにする正規。すると、正壬に飛びつき腕を組む遥夢。
「何をなさっておられるのですか?」
「うりゃ。」
基本リンは、神子が投げたものは、石や刃物など危険なもの以外はよけようとしない。
「白ゴス…ですか。」
「さっきから神子は何投げてるんですか。」
「変換核。」
「あー。なるほどー。」
変換核の説明は以前行ったので省く。
「黒はハルと、姉御達がうち。うちと涼子は主上。リンと夏美君馬魅君、羽魅君は、レイ君。で、辰也が涼子。今回涼子は白しか用意してないけどね。で、白は、ハルと姉御達が正壬。うちとリンは涼子。後はみんなミラの姉御をあげてる。で、辰也に聞いたんだけど、リンだって。てか、ミラの姉御はわかるが、正壬。おまえは赤面してどうする。ハルが気に入った以上これからどんどん着る羽目になるぞ。」
「お嬢様、おやつをお持ちしました。」
そう言って鳴滝が数名のメイドを従えテラスに入ってくる。
「な・ん・で、かき氷なのよ。ここ雲海上よ。標高6万超えてんのよ。いくら暖房術有るからっていっても、どうがんばっても、良いとこ20℃じゃないの。
そんな陽気でかき氷食えって言うの?それよりも何よその容器は。どう見ても軽くリッター超えるわよね。そんなに食べたら3日は頭痛で動けないし5日はお腹下すわ。」
「おかわりー。」
「ちょっと遥夢、聞いてるの?…このこはだいじょうぶか。」
あきれ果てる正壬を尻目に唇を青く染めブルーハワイをたっぷりかけたかき氷を容器に顔を突っ込むようにして食べる遥夢。
その横では半分を平らげて頭を抱えてうずくまるリンが居た。
「「かーわーいいー。」」
神子と、涼子、真朱彌が一斉にうずくまるリンを見て言う。
「ねえ、これ2kg有るんだけど、なんでこの子5杯も平らげてるの?」
「たこ焼き1t平らげるし能力属性もあるからなあ。」
「あのさあ、敦雅嬢はどうなってるの?」
「さ、先ほど、第1次の大容量データ処理が終わり、クーリング中です。つ~っ。」
頭を押さえいすに座り直しながら正壬の問に答えるリン。
[もう、無理。]
そう言ってスプーンを置くレイ。
「ははは。敦雅君が目を覚ましたら、彼女にもこれ当てるかな。その前に一泳ぎさせないとね。」
「レイさんは、星守の巫女として十分すぎる素質と資格と力を手に入れましたからね。覚醒の感覚やそこに至る手続きもしっかり覚えたようですね。敦雅さんも、あと少しです。おそらく2時間ほど雲海に入っていれば、国守の巫女として申し分ない存在でしょう。今日はゆっくりとお休み下さい。」
『まもなく終点神宮総合です。お乗り換えのご案内です…。』
玉京から、電車に乗って私たちは藍蒼に戻ってきた。
「お帰り。ちょうど昨日で、尾束雪子氏の留学予定期間が終わったんだが、これからどうするつもりだい?遥夢君。」
出迎えてくれたのは、遥夢さんの父上。
「…同行願います。正壬、神子、涼子ついてきなさい。リンと真朱彌さんは、レイさんたちを彌蘭陀さんは敦雅さんを第三特区へ。父さん。ご覧の通り、敦雅さんを最低1月は休ませなければなりません。その間に行う覚醒に関する手続きを手伝って下さい。ガルドの展開も順調ですが、少し妊婦の干渉が多すぎます。ですので晶を連れて行きます。リン、蒼天宮につき次第綾女と晶を呼び出して下さい。」
どう歩いたのだろうか、私たちの降り立った神宮総合駅が有る神宮山が霞んで見える位置に居た。遥夢さんの周りに開いた状態の半透明の撒き物がいくつも浮かんでいる。そのうちのいくつかは形を変えながら、リンさんの元へ飛んでいく。
「了解致しました。」
「行きましょう。」
そのあと、私たちは、南にある、巨大な医療都市。藍蒼第三特区にいた
藍蒼の南にある藍蒼第三特区。最高学府の医学郡とその付属病院からなる巨大な医療都市らしい。区内の9割を病院が締めている。入院患者のみならず見舞客や外来患者、職員が快適に過ごせるように作られており、病院の中なのにショッピングモールもある。
全ての施設、階層は、アンビュランスライナーと呼ばれる輸送設備によって繋がれ、入院患者の搬送や、救急救命患者の搬入。入院患者の病棟変更、医療物資の移動やカルテの輸送なども自動化されているそう。
アンビュランスライナーは色によって用途が分けられており、赤が救急。白が、患者の院内搬送。青が、医療物資の輸送。水色がカルテの輸送。ピンクが、見舞客の輸送、黒が霊安室直行便となっていると言う説明を受けながら敦雅がいる病室に入った。
「すまんなあ。私のせいで、戻るのがおくれてもうて。」
[仕方ないよ。それに敦雅を残して戻るなんて私たちはしないよ。それ以前に遥夢さんたちが、私たちの世界に行く暇がなさそうだし。]
「そうか。1年は帰れへんのか。」
[その関係で、時間の整合性がどうのこうので、帰ったときには最低半年、最大1年の時間経過を許容して欲しいって、何だっけな時空管理庁だっけ?]
「時空管制省です。界間時差の整合性を取るためこちらで1年経過したら流石に出発の翌日の到着というわけには行きません。
本来ならば、もっと早くお送りしたいのですが、ご容赦願います。」
「じゃ。1年間の自由活動お楽しみに。」
その後、わたしたちはこちらではやっているオンラインゲームで遊ぶことになった。
[ここが、電脳空間?]
「レイ君達には、ソラ君達の装備を元に武器と防具が構築されてるからね。それから、今回は統一ギルドからの緊急クエストがあって、どうしても入らなきゃならなかったんだけど。」
もう入ってしまったんだから仕方ないという顔の遥夢さんたち
「で、何を狩るんだ?」
「海竜、白海龍、冥海龍、大海竜とその亜種、魚龍種4種の計9種9頭。」
「前回の大規模海嘯の関係か。」
「だろうね。」
武器の手入れをしつつ正壬の姿に変わる正規。
「神子の声のトーンなんか低い気がしますが。」
「姉御に怒られた日はいつもこうだよ。朝とさっきとそれに今も怒られてるから。」
真朱彌に怒られ涙目の神子。
「…。」
「あー。使い物にならないな。今まで気張ってたんだなあ。」
「神子は私が見てるから、みんな行って。」
しかし誰も動こうとしない。
「太刀双剣と、槌って、もんの凄い戦力なんだよ。特に2人のコンビは、巨竜狩猟にはなくてはならないものだから。」
「強く言いすぎたんやろうか?」
「一言で言えば、姉御に怒られたからですね。この子は小さい頃から、母親に叱られ慣れしてるので、たいていの注意は受け入れつつ、けろっとしてます。で も、しかる人が問題で、姉御と、ミラの姉御に怒られるとこうなっちゃうんですよね。こうなるともうどうしようもないです。」
涼子の言葉の後、全員に対し耳をふさぐようジェスチャーをする神子。
「…このやろー。」
思いっきり叫んだ後すっきりしたという顔をして装備を変更する神子。
「雷と水耐性の強い装備。」
「マスター、よろしいでしょうか?」
リンさんにそっくりだけどリンさんとは違う人がそこに居た。
「どうした?リアン。」
「奇滅院、時管省、3Cから、緊急ログアウト命令が発令されました。レイ様と敦雅様以外は出ていただく方が。」
「命令の詳細な原因を聞かせて欲しいねえ。」
全員が頷く。
「先の大海嘯の影響か、わかりかねますが、各フィールドの各エリアの中央部に広いエリアの場合は中央と数カ所に、入り組んだエリアの場合は数カ所に、白い、人間の子供らしき物がたっているという事です。統一ギルドは実装した覚えもなく、また普段扱ったことの無いデータだといっており3Cの調査結果も同様 でした。おそらくは、今回の緊急クエストは、この、謎の人間の子供らしき物体に関係があるものと思われます。」
「わかった。本当はおまえが抜けると大幅な戦力ダウンだが、調査を願う。」
「ねえ、神子。その調査役、私にやらせて。」
少し考えるそぶりを見せて許可する神子さん。
「推測ではあるものの、意見を述べさせて貰うならば、おそらく人間の子供らしき物体は霊体がデータの形で実体化したものだろう。非常に強い霊体。まあ、涼子クラスなら何とかなると思う…が、本体がどこに居るかわからなければどうにもならない。あいつのことだから、特定のデータだけを選別して広範囲に攻撃することが出来るはずだけど。あいつにこれ渡しとくべきだっただろうか?」
そう言って神子さんが、私たちに見せてくれたのはまるで氷のように透き通った太刀だった。
「劉老師が崑崙山と神宮山の氷鋼の中でも最高品質のものだけを選び抜いて魂鉄につかい、玉鋼と、アグリフェライト合金でコーティングした一言で言えば、暖かい氷で出来た太刀だ。」
神子さんと涼子さんは同じ部類の人なんだと思う。だからあそこまで息が合うんだなあ。
何言ってるかわかんないけど。
「いま、ハルと涼子、リンが持っている刀は、玉京の刀工達が考え得る、全ての素材を持ちうる全ての技術を使い、絶妙なバランスで混ぜ合わせ、まさに神業 と言える絶妙なタイミングで冷却し鍛え、打ち上げた最高の一品で、メンテナンスは、作った当人にしか出来ない。」
『神子、急いで討伐を開始しして。黒竜プログラムと霊の本体が同化してる。あ、あの人間の子供みたいなの本当に人間の子供の霊だった。』
「なんで黒竜プログラムに…あそっか。海竜プログラムは黒竜プログラムのデータベースを一部参照してるから切り離すには参照を停止しなきゃならんのか」
よーく考えたら今男一人しか居ないじゃん。
「どうするんだい御山君?」
「…創造主が産みたる唯一の裁きと定めを司りたる神の力を持ちし我が名もとに、今ここに宣す。我の眼前に在りし、白き人が子の形を成して世に害をなさんと たくらむものを常闇の間へと落とし、永久に飢えたる異形の犬にその体を食われる定めを課すと。我,コーウェリアの名においてこの宣を発動せり。…温いな。 創造主が二の御子たる判定者たりし我が名をもってここに宣し発動競り。の方が良いな。」
「それが御子の答え?」
答える代わりに、雷光をまとい、太刀を地面に突き立てる神子さん。
「あー厨二くせー。やべー。」
笑いながら両腕をさすってる。
「神子の主要能力対応五行は木金水ですよ。神子の時は、火金でしたが。」
[疲れたー。]
私たちの世界では、まだ、ゲーム機の中での出来事だったモンスターハンティング。この世界では、電脳空間と現実空間が絶妙にリンクし、実際にプレイヤー本人がハンターになってプレイが出来るようになっていた。
鉄道が空を飛び、私たちの概念とは船の概念が宇宙船というものまで一緒になった、この世界は非常に科学技術が進んでいるようだ。
[そういえば、ここ虫が居ない。]
そう。この世界に来て軽く感じていた違和感。私たちの世界では、街中にも普通に居た昆虫が、この都市には一匹も居ないのだ。
「遥夢のためだよ。この子は、どうしても通常時はいかなる大きさの節足動物に対しても恐怖反応を示してしまうの。鳴き声だけでもダメ。だから、この星と ルーラには節足動物は一切居ない。」
正壬さんが説明してくれる。かつては、この星にも普通に虫が居た。でも、過去のトラウマから、総合的節足動物恐怖性拒絶症って言う病気に遥夢さんがなって 以来、製作によって、急速にこの星から節足動物が減っていき、ついにはゼロになったんだって。この星にいる動物は連星状態になっている兄弟星のものと全く同じものち確認されていたため、強制的に移動させられた上で残ったものは駆除されたそう。




