やっぱりおおきいおふろはきもちいいなぁ
列車が亜空間転線を経て、創造界最大の駅である神宮総合駅に滑り込む。
駅前に泊まっていたのは、真っ黒なサロンバスだった。車体には中央部にこの国の王家を示す紋章が描かれているだけだった。
「全員ご乗車になりましたか?」
「父さん。」「叔父様!」
遥夢さんと神子さんが同時に叫ぶ。運転手は遥夢さんのお父上だった。
「何してるんですか?!」
「何。腕が鈍らないようにこうして定期的に大型を運転してるんだよ。ちょうど君たちが帰ってくるから迎えも予てね。侍従長に情報を流して貰うのに苦労したよ。」
「相変わらずですね。運転士局は何か文句言わないんですか?」
「娘思いの良いお父様と褒めてくれたさ。流石に誉れ有る仕事を奪ってしまって少し反省してるが、まあ、明日の脚にでも使ってやってくれ。」
ため息をつく遥夢さんたちと腰を抜かすリトエルス&リールフェルト一家。そして何が何だかさっぱり判らない私たちと三者三様である。
「久しぶりに見るなあこのビル群。」
まるで天を支えているかのようにそびえ立つ高層ビル群に涙ぐむリートさん。
「ロムニスに乗ったときはどうなるかと思っていたけどさ、リールちゃん明るくなったし。」
姉の言葉に笑顔を返すリールさん。
バスは一番東側の大通りを抜け遥夢さんのお家であるこの国の王宮に入る。
[お風呂?]
「そうや。ここのお風呂はSVLの風呂より数倍はでかいで。」
真朱彌さんから興奮気味にお風呂に誘われた。
「「でっけー。」」
「よう君たちも来たか。」
聞き覚えのある男性の声。
「居ないと思ったら、酒盛りですか。」
「じじい連中はな。若い者は水盛りだ。」
「水飲んでるのは正規だけだよ。」
混浴ですか。
「ん?ああ大丈夫や。この人達は自分の奥さんに夢中やから。」
「姉御、それ一番姉御が言っちゃダメです。」
私もそう思うという意味で頷いていたら、
「入らないのですか?」
遥夢さんさんに言われてしまった。とりあえず体を洗い、男性陣から離れて湯船に入る。が、
「「We Can Fly。」」
「「当たり前のことを言うんじゃねー。」
波を思いっきりかぶる私たち。
「ちょ、遥夢さん。いきなりなにしはりますん?」
いきなり遥夢さんが彌蘭陀さんの胸を揉み出した。
「これくらいが男性受けが一番良いってなんかの雑誌に書いてあったんですよね~。」
確かに手頃な大きさで、手触りも良さそうな感じの女の私でもそう感じる胸をしている。
姉妹だからだろうか?真朱彌さんは相似で、同じ形で大きめだ。
「いや。そこはダメやって。私、そこ弱いんやから。」
「妻譲りの絶頂術だ。今やってる本人とリン君以外であれに5分と耐えられるのはいない。
それと、リン君の側に長い間居ない方が良いぞ。彼女は炎熱を司る神の側面も持っている。だから、のぼせ兼ねない。後遥夢君も電気や、水を司る神の側面を持つから、その能力の作用で、お湯の温度を上昇させてしまう。
あと、のぼせたら、真朱彌君か彌蘭陀君を呼ぶと良い。神子君を呼ぶのはおすすめしない。酒を飲ませようとするからな。」
「「それはあんただ。」」
御山夫婦に突っ込まれると王族は大体凹む。
[でっけー。]
「ほんと。羽魅先生とどっちがおっきいんだろ。」
遥夢さんさんたちの胸に私たちの視線は集中する。
「あ、そういえば、遥夢さんさんたちって腕に携帯端末をつけてるんですよね?」
「ええ。完全密閉長高度気密構造と、超高品質での金属生命体による。あた。」
「開示可能認定世界以外からの来訪者への高度技術の軽率な開示はいくらハルでも罰則対象じゃ。それ以上は禁止させて貰おう。」
神子さんが少し怒ってる…のかな?
「酔っ払ってる。」
「「え?!まさか。」」
「この子は酔っ払ったときは口調そのままにくそまじめな言動になるんだよ。逆にくそ丁寧な口調になって周囲の温度が下がったら、ぶち切れてるから近づくな。」
『マスター、宗国時空省から連絡です。レイ様達の世界を分類レベルAに移行し、藍蒼航法、時空変換。さらにそれに付帯する技術等開示可能レベル50までの開示を許可するそうです。』
リアさんと言うらしい神子さんのNAS。凄い高性能らしい。
『またこれとは関係無いのですが、RPS001001というプログラムセットを内包した実行ファイルを受信しました。』
「実行しろ。」
『よろしいのですか…。畏まりましたRPS001001解凍完了。解析構文シミュレーションを完了。組み込みを開始します。
これにより、-社製のソフトウェアIIC登録コードAIN32563~32963及び-社製のIIC登録コードZCT66283-AXR203~- DCY332の使用しているプログラムセットと干渉してしまいます。この場合RPS001001を優先します。
その際、該当するソフトウェアをアンインストールすることになります。該当ソフトウェアを消去しても、システムに影響はありません。また使用できなくなる機能はありません。』
「どうして?」
『該当ソフトウェアは私を含めこの端末には一切インストールされていないからです。』
あれ?何か私のぼせてきたのかな。
「うきゃ。」
いきなり、彌蘭陀さんが上げた奇声が気付けになった。
「ミラの姉御を見てるといじめたくなるみたいよ~。ハルは。」
「しかし良い酒やな。」
一升瓶を10本もお湯に浮かべて大宴会だなぁ。
「レイさんたちもこれ呑みなよ。ノンアルコールのお酒だよ。」
「味は若者向けになってるだけで、それ以外はノンアルコールくらいしか違いが無いよ。」
「おいしい!」
「ほんまや。うまいなぁ。」
お酒じゃ無いお酒をいただいたけど、呑めないわけじゃ無いけどあんまりおいしくない。
「レイ君の味覚は正直だな。おそらくそれが星守の証の一つだな。
君は遥夢君によって、これから、星の記憶。つまり、アカシックレコードへアクセスするための方法と感覚。
そして、星と一体とし自らの感覚を星の感覚と融合する術を学ぶことになると思う。
だから、今はゆっくりと休むと良い。この世界で何ヶ月もたったとしても帰れば君たちの世界をたった日の翌日。なんてこともざらだ。
今のうちに…おっと話がずれたな神子君、後頼む。」
「ほーい。星守の巫女として既に第一段階の覚醒状態になってるレイ君は五感が鋭敏になってるはず。まあ、触覚は鋭敏と言うよりも優れているという言い方が正しいけどね。
さて、ハル主上が君たちに渡したお酒じゃ無い酒。
要は、酒の味を楽しめるジュースだけど、とある流通段階で不良品が混じったらしい。
どう不良かというと おいしいと言われれば美味しいけど、まあ、あんまりおいしくない。
つまりはそれ。ま、一流シェフでも意見が分かれるような感じだけど、味覚が鋭い人は全員美味しくないほうに行くね。
まあ、いいんだけんさ。美味しかろうが美味しくなかろうが。体に害がなけりゃさ。これのばあいは。」
「せやから、遥夢さんそないに揉まんでもええやないか。ん…って。何処に手やっとるんや。そこは。指入れたらあかんて…。」
「相変わらずかー。」
神子さんの反応に驚く正規さん。
「助けないのか?」
「ミラの姉御にも馴れて貰おうかと思ってさ。それに、いい加減あれ見てうがーってなるのも。ねえ。」
「ねえっていわれても俺にはよくわからないんだがそうゆう物なのか?涼子。」
「私に振らないでよ。私だってこの子の考えてること時々判らないんだから。」
「うちも判らん。」
神子さんがあっけらかんとさも当然で有るかのように言った言葉に対して、正規さんと涼子さんはため息をついて、
「「おまえが言ったら元も子もないだろうが。」」
と綺麗にハモる。
確かに本人が一番言っちゃいけないだろう。
[フー。熱くも無く温くも無く、適度に温度調整されたお湯につかりながら、巨大都市を眺めるって言うのはなかなか出来る経験じゃ無いなぁ。]
「そうだな。ビルの谷間に見えるいくつもの列車たち。これは、実に美しい光景じゃ無いか。」
私たち姉妹が、和んでいると、うなじにとても冷たい物が当たる。
「この星のそれぞれの大陸の聖地とされる場所の水と、我が国の各州の州都となっている惑星から届けられたフレーバーで造られたサイダーです。どうぞ。」
遥夢さんさんに渡されたサイダーは、何故か3Lと書かれていた。
「なんで3L?…美味しい。」
[本当だ。あのお酒のようなジュースよりよっぽど美味い。ところでリートさんたちは?]
「そこで萎縮しとるよ。まあ仕方ないやろ。本当なら自分たちにとって雲の上の存在であるはずの遥夢さんたちがすぐ目の前におるんやし。それにさっきのサイダー、リトエルスさんたちに渡したのはリンさんや。言葉も出ないほど混乱しとるんやろうなあ。」
萎縮してるという言い方よりも緊張して縮こまっているという言い方が良いのかも知れない。
たしかに、私にとって天皇陛下とちゃぶ台を挟んで食事をしているようなものなのだから緊張してしまうのも仕方ないのかも知れない。
[あれ?リンさんの後ろの窓だけ真っ赤だ。]
私が何気なく言った言葉に遥夢さんさんたちは一斉にリンさんの後ろの窓を見つめる。
「…プロジェクターなしで、視認できるほど歪むなんて。」
「どれくらい歪んでいるか判りますか?」
結構慌ててる様子を見ると大変なことが起きてるみたい。
「彼女たちとは関係はありますか?」
「はっきり言って無しですね。皆無です。
恐ろしいまでに白です。
ただ、王相を故郷に派遣すべきかと。
瑠美乃の地鎮に関する力が極端に低下しています。このままではあの神社で封じている物がまたあの半島を覆うでしょう。駅周辺は藍蒼からの気で何の影響もありませんが、神社周辺は壊滅状態になります。」
[何か居るんですか?]
「ええ。瑠美乃半島には蒼藍族がこの星に来る以前から住んでいる先住民族の方々が住んでいます。
そして、その方々の言い伝えによると、遠い昔。まだ蒼藍族 がこの星に来る前の話当時のこの星の文明水準はレイさんたちの世界で言えばレイさんたちの世代から400年ほど前の世代の水準です。
その頃数十年おきに、何とも説明しがたい強力で邪悪な物が、瑠美乃半島一帯を起点とし、このベイリア大陸全体を蹂躙していたそうです。先住民族の力ではとにかく、隠れ耐えるしか出来なかったそうです。
そこに蒼藍族がやってきて、文明レベルを大幅に引き上げました。それと共に先住民族の信仰していた宗教と蒼藍族が持ち込んだ宗教概念を融合させ、その邪悪な物に対抗し、そして封じることが出来るかも知れない対抗手段を作り上げました。
この対抗手段の実戦配備が済むのに合わせたかのように邪悪な物が現れ、全面戦争となり、先住民の70%と蒼藍族の0.1%が死亡するという被害を被りつつも何とか、邪悪な物を封じることが出来ました。
その封印の地に植えられた神木の精が瑠美乃です。彼女の体に幾度となく延命のために入れられたナノマシンが運んだのか、膨大な量の神気を取り込み彼女は完全に神化しました。
そして神化した瑠美乃は邪悪な物の封印を一層強固にしています。
ですが、逆に言えば瑠美乃が弱れば、その封印も弱まり奴が出てきやすくなるという事。
そのためのサブシステムとして、巫女の封印に関する力を与え、その巫女の一族を神主の一族としました。ただ、当代の巫女はレイさんたちの概念で言えば一度死亡した身のため力が歴代の巫女と比べ異質な物になっています。一言で言うと、創造主に連なる者の力を使うことが出来るという物です。
しかし、そのためには何万年かに一度創造主に近しい者の手を借りて儀式を行わねばなりません。ですから正規さんを生まれ故郷たる瑠美乃に行かせるんで す。」
簡単にまとめると昔々大暴れしていた者を封じた封印が弱くなって、それを監視してる人たちの力も低下してるから、回復の儀式のために正規さんがその瑠美乃というところに行くことになったらしい。
「せっかく出し星守の巫女に力を引き出すきっかけにもなるだろうからいくかね。全員起立。」
神子さんの言葉で私たちは風呂から上がり服を着て、駅に向かった。
[何かすっごいいやーな気分。]
神社の鳥居をくぐると、なんともいえない嫌ーな空気が漂っている。
鳥居の下には黒髪の巫女さん。成美さんと言って次期神主さんらしい。この神社は代々女系何だそうな。遥夢さん曰く、正規さんの初恋の人で、それを未だに奥さんからからかわれる正規さんかわいそう。
「この神社にまつられているのは創造主と俗に言う祟り神の一種。みしゃくじ様の一種とも言える神だ。その両方が、例の邪悪な者と敵対し封印している。ミシャクジの受肉した姿が瑠美乃というわけだ。」
「エーテルライン歪曲指数危険域まで上昇。対象具現域到達まで残り50分と予想。」
ぼーっと何か考える遥夢さん。
パンッ!
遥夢さんが手をたたくと同時に周囲に立ちこめていた不快な空気が一気に消え去る。
「いまなした?」
「祓いを始めようと禊ぎの柏手を。」
「あーたの柏手の威力は世界を消しかねないほど強力なんですから。……やっぱり消えてら。」
祓いの柏手。神子さんがそうなづけた遥夢さんのこの柏手は今回の対象のような存在を以下に強力であろうと一発で払うほどの威力を持つ。
「世話になった。まさかこれほどまでに力が弱くなるとは自分でも思っていなかった。」
神社の本殿から見て、左手側にある、大きな針葉樹の前に浮かび上がるように私たちと同じぐらいの少女が現れた。
「瑠美乃、何故弱くなった?」
「判るわけが無いだろう。まあ、人間で言う風邪を引いた状態なのだろうな。」
「みんな、風呂に入っていきなさい。」
いきなり成美さんの後ろから神社の神主さんで成美さんの母親である成子さんがやってきての開口一番、風呂発言に脱力する一行。
「そういえば、リトエルスと、リールフェルトは何処に行きましたか?」
「そこで本殿を眺めてるぞ。」
「リトエルス、リールフェルト、これを。」
遥夢さんが差し出したのは金縁に朱と青、緑の円と茶色の丸で象られたバッジだった。
[何のバッジですか?]
「国官正正士の証であるバッジだよ。7官はそのデザインに7つの丸がついて、自分が担当する官庁を象徴する色以外は、白のバッジを持ってるの。たとえば空官長は水色だよ。」
涼子が見せたバッジは遥夢さんが出したバッジの茶色の円の外側に6つの白い円と水色の円が着いていた。
「ちなみに長相は、緑地のおっきな丸に朱の丸三つだよ。リン、見せてあげて。」
「長相は、全ての国官の長だから。あ、リールフェルトは都合が有って、正準士として登録されてるからね。登録時は正準士だけど、宣名可能になる登録から一週間後には正正士になってるから。」
[すいません、セイセイシとかセイジュンシって何ですか?]
「国官つまり国家官僚の階級みたいなものさね。大別で正士と準士にわかれてる。正正士、正準士、準正士、準準士の4つがあるのよ。正正士は各官庁の長官補レベル。正準士が各省の事務次官レベル。準正士が各省庁の局長レベルで最後に準準士が一般職員レベル。凄い難しい試験に合格しないといけなくて、準準士になるだけでも、受験者の半数が発狂するレベルの難関なんだよ。」
昔中華民国には科挙という物があったらしいがどうやらその何倍もすさまじい物らしい。
「一般教養、一般常識、各種法律、コミュニケーション能力、思想安定性、思想安全度、各種文化理解、電脳耐性、各種専門知識、恒久的知識安定性なんかが主に問われる。」
「全ての世界に住む高等知的生命体の中で最も高度な知能を持つ蒼藍族でさえ受験した半数が発狂し、発狂した7割が廃人化するという、蒼藍星間連邦王国国官総合登用試験。
主師も試しに受けたが俺と涼子は半分も合格できなかった。
そこでのへーっと地面に寝そべってる怪力ド天然と、一升瓶を一瞬で空けていく枠の銀色無表情と、どっかの仏像みたいなポーズしてる銀色民族衣装は全問正解しやがったがな。
摂津姉妹は合格点である満点の8割を見事に取得してる。
だがなあ、普通、1ヶ月かけて行われる試験で総合の満点が5万点て言う試験を全問正解できるか?」
正規さんが私たちに問私たちは首を振る。
「はーい。そこー。のんでからまなーい。」
「主師の中で彌蘭陀さんと正規さんのお酒の強さはどっこいどっこいな感じですからねー。
どちらかと言えば生中5杯分相当彌蘭陀さんの方が強いかなと言う感じですね。」
これにはどれくらいか判る人。つまり、私とお姉ちゃん、馬魅、敦雅以外が笑う。
以前聞いた話だけど蒼藍王国では、10歳で飲酒が可能になるらしい。これは脳が10歳で成熟し、外見は人間と変わらない物の能力的には大人であるという形で認められているためらしい。だが慣習的には15歳未満の飲酒は法的には問 題なくとも世間的にタブーとされているようだ
「おい枠。おまえはなんでそんなに呑むのはえーんだよ。それに其処の銀色と夫婦漫才はさっきから1000番以上しか呑んでねーしよ。」
正規さんは酔うと絡み酒になるらしい。
「これが酔っ払ってるとこをみたことがない。」
涼子さんを見て、つぶやく正規さん。
「それは同意。一桁台の酒が好きだからなー。」
「気にしないで。この子達の飲み物話題=酒の話題だから。これに姉御が混ざると悪化するから。」
「その言い方はないんと違う?私は美味しい酒の情報を少しだけ長い人生経験から教えてあげてるだけ何やし。そりゃ、この会話を楽しんでるって言うのは有るんやけど。
でも。…否定できないとこがかなしいなあ。」
「姉御はー、さっきからー、なんで無言なーんー?」
神子さんの間延びした声に正規は毒気を抜かれかけている。
「いや。御神酒呑んだの久しぶりやからな、これで何か一個イラスト描けへんかなーって。それよりもなんで神子さんと涼子さんはさっきっから、地べたに寝そべってるんや?」
「これは横になってないと意識を保つのが難しいレベルにまで眠気が来てるから。
帰ってくるまでSVLん中じゃずっとシルファのカーネル弄ってたもん。2日連続これで60時間連続起床だよ。
それに、リアになんだっけ?非独立行動駆動体依存型具現化機構だっけ。何かそんな感じの名前のプログラムセットの最適化もやってたからなー。
脳の演算が限界に近いと思うよ。今はV.C.Pの代行演算でかろうじて意識保ってる状態。」
「「なーにやってるんや。無理して起きてまた参謀居ない事態になったらどないする気なんや。眠いんやったらおとなしく寝とき。」何なら私が膝枕してやってもええで。」
神子さんは無反応である。しばらく沈黙が続きやがて涼子の服の裾を引っ張る神子さん。
「あー。この子最近膝枕するとき、私以外を受け付けないんです。姉御なら、無条件で飛びつくと思ったのにな。」
そう言いながら神子さんの頭を自分の腿の上にのせる涼子。神子さんは幸せそうな、穏やかな表情で寝息を立て始める。
「なーんか、悔しいなあ。まあしゃあないか。ところで何でここにレイさんたち連れてきたことが彼女たちの力を引き出すことにつながるんや?」
真朱彌さんの言葉に遥夢さんとリンさん、涼子さんの3人が成美さんを見つめる。
「当代の星守兼国守の巫女です。」
「「「な、何だって~!?」」」
「何ですか。そのどっかの掲示板にありそうな反応は。」
[そういえば、藍蒼って街は大きな街なんですね。]
私たちが今泊まっている藍蒼市は資料によると東西8000km、南北8000kmも有るとても巨大な都市だ。
そこに加え王宮の付属地として扱われている第1特別区が東西200km、南北4000km。
全てが一つの 病院の施設で埋められている、第3特別区が東西8000km、南北2000km。
海洋上に浮かぶ大規模研究学術都市型人工島である第2特別区が東西南北 500km深さ15万4000mに及ぶ。
一つの都市としては藍蒼市は蒼藍王国のみならず、この世界最大の都市としてその名をとどろかせている。
だが、全異世界レベルで見ると藍蒼市レベルの都市はゴロゴロ転がっているわけで藍蒼市よりも大きな都市なんて言うのも存在する。その中でも全世界最大の都市として名高いのが、玉京である。
藍蒼市の総面積4096個分の広さを持つ区画がさらに16,777,216(1677万7216)区画集まり、やっと一つの区画となっ ている。そして、それがさらに281,474,976,710,656(281兆4749億7671万656)区画も集まりやっと玉京の方形部が完成する という規模なのだからいかにその都市面積が巨大かがおわかりいただけよう。
しかもその総面積のうち89%が平均1万mを超える極超高層ビル群に覆われているのだから、総床面積たるや、もう気が遠くなりそうな規模なのだ。
ちなみにどれくらいの総面積かをパソコン付属の電卓で出そうとしないことだ。玉京1区画の面積を出すときに桁があふれる。つまりは19桁を超えるわけだ。いやはや恐ろしい。
[そんなに大きい街だったんですか。]
「君たちの住む星の全ての大陸面積とくらべて29,347,000平方km小さいね。簡単に言うと1周り小さいくらいかな。」
「この瑠美乃市は、元は瑠美乃村って言う、漁業と農業の村だったの。それが、SVL。この国に来るときに乗ってきた列車ね。あれの総合車両基地が建設されることになってどうせなら終点もくっつけりゃ回送の手間と無駄がなくなるって言う安直な考えでここに駅が造られたの。そしたらあれよあれよという間に 人口が増えてって、市制施行して今は藍蒼の衛星都市。」
何か知らないうちに補足情報も教えてくれる。親切なのか単に説明好きなのか判らない人たちだ。
「仕方あらへんよ。神子さんが要点やら、主語抜き会話ばかりするから、その捕捉をずっと行ってきた涼子さんは補足情報をまず紹介してから自分の話を始めるっていう、タイプの会話方法をとってるんやね。そんなもんやから、どうしても自分が主情報の発信をするというのは苦手で必ず誰かの話に乗っかるという形になってしもとる。
まあ、それを神子さんもわかっとるんやろうな。涼子さんが話したがってる空気だけは読むのが以上にうまいんや。」
「神子は空気が読めないんじゃないですよ。姉御。神子は読めないんじゃ無くて読もうとしないんです。
まあそのせいで、何回朝議が滞ったことか。リンが胃痛で入院しかけたこともありました。
っていうのは冗談ですが確かに私が話したがっているという空気だけは必ず読んでくれますよこの子は。」
そう言って、神子さんの頭をなでる涼子さん。
「そういえばさっきから敦雅の声聞かないなあ。敦雅ー。」
「呼んだか?いや、すまんなあ。ここの神主さんに美味しい桑ジャムクッキーの作り方を教えてもらっとったんや。ここの行程でなこういう感じで手間加えると 普通より10分ちょい出来る時間は延びるけど、その分の価値はある美味しいできになるんや。これ私が作ったんやけど良かったら食べてえな。」
敦雅が作ったというクッキーはとっても美味しかった。敦雅はお菓子作りの才能がありそうだ。
「あの木はなんなんやろ?」
「…ああ鬼胡瓜の木だよ。ここは何故か知らないけど瓜系の野菜が巨大に育つんだ。ちょうど昨日収穫したんだよ。そういえば、成美から一本真朱彌さんって子に味見して欲しいって言われてたんだけど、あんたが真朱彌ちゃんかい。この神社名産の鬼胡瓜思う存分味わってくれよ。」
神主服…狩衣姿の40歳前後とおぼしき女性が、男勝りな口調で、田舎のお屋敷の大黒柱ぐらいの太さの巨大胡瓜を脇に一本ずつ軽々と持ってきた。
「この前食べた鬼無し胡瓜みたいな感じかなあ。…なんて言えばええんやろ。一言で言うと濃縮された胡瓜の旨味があふれ出てくるって言うのかな。こんなに大きいのにまんべんなく瑞々しくてそれで嫌な青臭さが無い。初めてや。」
「気に入ったかい?気に入ったなら、君たちの家に君たちが欲しい分送りたいと成美が行っていたよ。」
「そ、それは嬉しいんやけど。部屋とか廊下に入るやろか?」
「大丈夫さ。亜空間転送を使うからね。」
「な、なんやこれ。」
「「この前長野で有った某ワンジャンル即売会の戦利品のうち姉御から希望を聞いていた物+おまけです。」」
御山夫婦の応えにため息をつく真朱彌さん。
「それにしてもいっぱい有るなぁ。お姉、これ何個か後で私にも貸してえな。」
「ミラの姉御の分もあるでよー。」
そんな神子さんの言葉に顔を輝かせた彌蘭陀さんだったが直後げんなりした表情になる。まあ、蜜柑箱が20箱も目の前に積まれれば誰でもげんなりする。ましてや女性ならなおさらだ。
「なんでこんなに大量に有るんや。」
「それでも戦利品の0.0001%相当にも満たないですからね。」
「この子、お○関連だけで戦利品の半数を買い込んだんだもの。」
「「は~?!そこまでくるとさすがに病的やろ。」」
摂津姉妹の突っ込みも神子さんには余り意味を成していないようだった
「これはそのときの記録。」
「ふ~ん…かーわーいー。何やこの子反則やろ。何や家族連れできとったんか。何で写真撮るときに教えてくれへんかったんやー。」
「だって姉御そのとき、学区長会議と学部長会議の連続でその後保護者懇談とか言って、パークヒルズホテルの展望レストランで食事してたじゃないですか。
居酒屋でいつもの知り合いのサークルで呑むから姉御も誘ったのに電話に出ないで。」
神子さんが事情説明に合わせてぶーたれる
「私は、電話よりも文字での会話の方が好きなんや。聞き間違いも起きひんし。」
「V.C.Pの音声通信はインカムゴーグルに会話内容が表示されますよ。」
「そうやったんか。」
驚く真朱彌さんであった。
「まあ、明後日だっけ?に藍蒼であるこのイベントの大規模版のコスプレ会場にも来るそうなので姉御も行きましょう。れいさんたちもね。」
「神子さん、それ明日。」
「まじでか。うわー買う物決まってないよー。」
いきなり誘われたけど何のイベントなんだろう。
「レイさんたちには事前に情報をお教えしとかないといけませんね。これです。」
遥夢さんさんが見せてくれた物にはなにやら巫女さんのような物が描かれていた。
「僕たちもコスプレの参加をするんです。」
「何か楽しそう。ねえ例、私たちもコスプレしない?」
「簡単にゆうたらあかんで、馬魅。遥夢さんはんたちが一体何のコスプレをするのかわからへんし、第一私ら全然それ知らんやん。」
「うにゅー!」
いきなり柔らかそうな感じの響を持つ言葉が聞こえたのでそちらを見ると、なにやら右手にでっかい棒をはめた女性が立っていた。
「神子、いきなりお○のコス着てどうしたの。」
「…変換開始から5秒か。まずまずだね。今のうちに自分の変換タイム測っといた方が良いよ。変換に時間かかったら、更衣室をそれだけ長く占有しちゃうから。」
「「「「なるほど。」」」」
ハモるのが好きらしい。
即売会にはこの街から行くことになったし、私たちの参加は強制らしかった。




