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年齢・身長・個人差・・・

「そういえば、三人は年は幾つだい?」


「年?ええと、私が二十一、(なり)が十八、おさなが十五よ、三年ずつ年が違うの」


「十八?十五?」


眩暈がした。どう見ても成は十五〜六にしか見えないし、幼は十位に見える。それが、実年齢はそんなに上なんだ。


ショックだ。これは食糧不足の栄養不足がかなり大きな問題になっている。畑で作る物を増やさなければならない。


「どうかしましたか?」


年を呟き、ぼうっとしている俺に幼が問い掛けてきた。これで十五。俺がぜん達と出会った時と、同じ。俺はもっと成長していたなあ、等と想像していた。


「チビだな」


「はあ?!」


ついつい本音が口をついて出てしまった。それを聞いた幼は見るからに目つきが鋭くなった。


そして成もじろりとこちらを睨む。


「十五かぁ、ガートが僕らの所に来た時、その年だったねえ」


懐かしそうに膳が言う。思う事は同じだった訳だ。そうすると、成と当時の膳が同じ。


この二人を比べるならば、成の方がガタイがいい。膳は小柄な方だし、線も細い。


幼ほどではないが、二人を足して二で割った様な感じだろうか。


「あのねえ、貴方達の頃がどんなだったか知りませんが、今の世の中でどれだけの物を得る事が出来ますか?食料だって高が知れてる、口にすることが出来るだけで幸せなんです、栄養なんて考えられる訳がないでしょう?!」


凄まじい早さで捲くし立てる幼。顔を真っ赤にして怒っている。元々色が白いから、なんともまるでタコのようだ。


成はこれと言って変化がない。あまり気にしていないのだろう。成自体は問題ないからな。


砂希羅さきらは『あらあら』って感じか。要するに、俺が禁句を言ったから、幼が燃えた、って事だな。


「まあまあ、ガートだって幼君とあまり変わらない感じだったよ?髭が凄くて、親父みたいだったけど、髭剃ったら凄い若かった」


「止めろよ大昔の話をするの」


「いいじゃないか、本当の事なんだし、あの当時は可愛かったのにねえ、背だって僕より低かったし、今なんてどうしてこんなに成長しちゃったのかなあって思うくらい伸びちゃって」


「お前が悠長に五百年も寝てるからだろうが、その間に俺の時間は過ぎてる、成長だってするだろう普通」


「でもさあ、伸びすぎだと思わない?ガートは僕とであった時まだ僕より頭の半分は小さかったのに」


膳は三人に同意を求めるように身振り手振りで語る。目の先に開いた手を合わせ「この位」と説明をする。


三人は、呆気に取られている。幼の熱気も何処へやら。昔話に花を咲かせた膳には、誰も意見を述べない。


やれやれだ。昔っからこんなにも喋る奴だったか?石になっていたから、喋れなかった分、今取り返そうとでもしているのだろうか。


その話の相手をさせられる方に言わせてみれば、いい迷惑だ。


「確かにあれからグンと伸びたよ、三十センチくらいは伸びたろうさ、だがな、それがどうした、どうって事ないだろうが、成長は個人差と言う物があるんだよ、いくら歳が上でも、成長までは違うだろ、お前の兄達だって、年の差と身長の差があったろうが」


あまりにも止まらないマシンガントークに業を煮やし、投げやりに膳に言い、はっとする。


そして「あ、地雷か?」等と思ったが口から出てしまった以上はもうどうする事も出来ない。


ただ、膳を見る。目の前には、先程までの表情と違う。いや、正確には表情を見ることも出来ない。


俯いてしまっていた。三人は顔を見合わせる。つい先程膳の口から過去を聞いたばかりで、恐らくあの三人の事を言ったから、と思っていることだろう。


子どもでも、それ位の気を使う事は出来ると言うのに、俺はその辺が足りない。相手を思いやる、と言うか、空気をよむと言うか、難しい事だ。


「あー、いや、なんだ」


言葉を濁す。どう言ったらいいのか分からない。頭をガシガシと掻いて言葉を選ぶ。


幼い三人も冷や冷やとしている。何しろ水を打った様に静かになってしまっているのだ。


「ふふ」


何をどうすべきかと考えていると、押し殺した様な笑いが聞こえた。それは、俺の目の前に居る者。


膳から聞こえた。ふと、また膳を見ると、肩が震えていた。


『泣いてるのか?!』等と動揺したが、「ふふふ」とまた聞こえる。ふふ?って、まさかこいつ、笑ってる?


「膳?」


「・・・っ!あーもう駄目、我慢できない!!」


そういうと膳は腹を抱えて大笑いをし始めた。俺は勿論、幼い三人もきょとんとしている。


そりゃそうだろう。泣く、怒るは分かる。


だが笑うなんて選択肢が、今の状況で出てくるなんて誰も思わない。顔を真っ赤にして笑う膳に、俺もつられて笑ってしまう。


「お前な、心配させんな」


「だって・・ガートが僕の顔色を伺うのが面白くて・・っつい」


「人で遊ぶな」


そう言いつつ、ため息を吐く。良かった。本当に落ち込んでいる訳では無いようだ。


とはいえ、これだって芝居かも知れない。昔も、そういう時があった。今回は、本当に芝居であって欲しい。



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