『都市』から奪還
喧嘩をしている二人を放っておいて、俺は『都市』へと飛んだ。
子ども達も言っていたが、まるで牢獄だ。冷たい気配しかない。生きた人間は、この中には居ないのだろうか。
見事に窓は無く、一階の出入り口以外、外から中を見る事の出来る場所が無い。
ただ、監視カメラの様な物が多々ある。地上には、数人の兵がウロウロしている。
砂希羅の場所は分かるが、中に入る方法が分からない。俺は暫くその場で考え込む。そして、答えはすんなり出る。
「あれだよな、俺が考えるっていうのが合わないんだ」
砂希羅の気配を感じる辺りの壁に近付く。恐らく、奥行きはあるのだろう。
直ぐそこに砂希羅が居る訳ではない。だが、一番手っ取り早い方法。「リング・フォース」。壁に手を翳しそれを破壊する。
『稜威様!場外からの爆発音が!!』
『何奴だ!?まさかもう奴等が来たのか?』
あ、またヤバイ。連中に気付かれた。って、当たり前か。まあいい。
さて、砂希羅は何処にいる。人が二人並んで入れる位の穴から中に入る。
中は更に重い空気が広がる。そしてやたらと扉が続いている。どうやら一つ部屋を吹き飛ばして、廊下に居るようだ。
「此処に砂希羅が居なくて良かった、最近使ってないから手加減が出来ねえや」
再び砂希羅の気を探るべく集中する。と、直ぐ手前にある扉から、空気に混じり砂希羅の気配が流れてくる。その扉を蹴り飛ばし破壊し中へと入る。
『何者だ!貴様』
「ガートさん?!」
『一族の者か?捕らえる』
砂希羅が驚いて声を上げる。兵は二人揃って腰に括っている刀を抜き、切りかかってくる。
俺は背に背負っている刀を抜き、一刀両断でその兵をたたっ切る。
「どうして貴方が?」
「話は後だな」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている砂希羅。その手は、あの時成がしていたような手枷を嵌められ、磔になっていた。
俺はその鎖を切り、手首を戒めている枷を簡単に外す。廊下から大勢がこちらに向かっているのが分かった。
俺は軽く砂希羅を担ぎ上げ、入って来た穴から外へ出る。
「うわっ!此処何階?!ひゃーっ!!」
砂希羅の雄叫びと共に飛び降りる。高さは知らないが、落ちる訳ではないし、慌てる事も無い。
と、俺は思うが、砂希羅はそうでは無かった様で、直ぐに気を失っていた。
『待て、貴様何者だ!!』
後方より声がした。『都市』の兵が集まり始めていたのだ。幾ら弱いとはいえ、大量に集まると不利だ。
俺は取り合えずそこから離れる事が一番だと思った。故に直ぐに向きを変え、村へと急いだ。
稜威に見つかる前に、飛ばなければならない。
「急げ幼!」
「ですから、何の情報もないのに行き成り突っ込んで無事では済まないでしょうって」
「寝言は寝て言え!さっさとしろ」